「3年っていうだろ・・」
やってきたハロルドはボーマンの顔をみるなりそういう。
ボーマンはじろりとにらみすえると本音のままを口に出す。
「俺はおまえが嫌いなんだ。
なにが、一番、嫌いかっていったら、そういうジンクスを引っ張り出してきて
そいつのせいにするってとこだ。
ていのいい、言い訳で自分を慰めてるような男はくずだ」
「おいおい、ひさしぶりにたずねてきたっていうのに、いきなりそれか . . . 本文を読む
『はああ?』
ボーマンはボーマンで、「呆れた思い」がまんま口からとびださないようにすることと、
顔色を変えないでおくのに必死だったったうえに、胸の中は煮えたぎっている。
我ながらポーカーフェイスをよくつくれるとも、
ぶんなぐってしまいそうな手をおさえるのも上出来だとも、おもいながら、
ボーマンはリサの胸中を思っていた。
「で、それ、もう、リサに話したのかよ?」
「いや・・」
ハロル . . . 本文を読む
ーなにが、可愛いケイトだよ。
ようは、ケイトって女のレベルがひくいだけじゃねえかよ。
お前で慰められるような、程度・・ってことじゃねえかよ。
え?
リサが一人でやっていける?
馬鹿いうな。
だったら、おまえなんかと結婚するかよ。
リサだって、おまえに頼りたいし、あまえたいにきまってるじゃねえかよ。
なのに、おまえのほうがリサにあまえちまってる。
だから、リサは気丈に自分をこらえて . . . 本文を読む
「どちらさま?」
どうも、相手の顔が見えないのはやりにくいもんだけど、
ボーマンはホーンに向かって
「俺だよ」
って、言ってしまってから気がついた。
判るわけねえなってさ。
あわてて、ボーマンだってつけたそうとおもったら、ホーンの向こうのリサが
ボーマンの声をおぼえていたらしい。
「ボーマン?」
確認するためか、小走りに玄関にむかう音がきこえ、
まもなしにドアが開いた。
「よ . . . 本文を読む
「問題はそこさ。
俺はその言葉どおりの意味にしか、考えてなかった。
だけどな、ハロルドが言ってる意味は違う。
お前はハロルドが居なくても、一人になっても
ハロルドを思いながら生きていかれる女だって意味さ。
多分な、今の女はハロルドがいなくなったら、
ほかの男をさがす。
だけど、お前はほうっておいても、ハロルドを思ってる。
ほかの男にとられるかもしれない。
ほかの男にひかれるかもし . . . 本文を読む
「なんだよな・・俺がおまえをかまってやれたらいいなって
俺はおもってる。
だけどな、俺にはニーネがいるから・・
だから・・どうにもしてやれないけど、
俺だって充分おまえをかまいたい男のひとりなんだぜ」
場合によっては、不謹慎なくどき文句かもしれない。
だけど、
リサはボーマンの言葉に光をみた。
それは、「俺だって充分おまえをかまいたい男のひとりなんだぜ」
って、ところでなく、
. . . 本文を読む
夕食をたべおえて、もう、いい頃だなと
ボーマンは店の鍵を落とす。
まあ、こんな遅くに調剤を頼みに来る客なんてこないのだけど、
それでも、ボーマンは8時までは店をあけておく。
8時閉店をまちかねるかのように、
電話がはいってきた。
案の定、ハロルドだ。
「俺だけどさ・・」
「なんだよ?」
逢ってもなかなか本題をいいださないやつだけど、
電話でも同じだ。
「今から・・いっていいか . . . 本文を読む
「なんだって?もっと、おおきな声でしゃべれよ。
まあ、おまえら、長かったから、愁嘆場になりゃしねえかと
心配してたんだけどさ。
ちっと、あっけなさすぎたけどさ、
まあ、良かったよな。
なあ、ハロルド。
これで、ケイトも納得してくれるんじゃねえかな?
早く帰って、ご機嫌なおしてもらえよ・・」
ボーマンのくったくないエールは今のハロルドには
あまりにも、痛かった。
「ボーマン・・・ . . . 本文を読む
「のぼせ上がっていたって、頭、が~~んってなぐられた気がしたよ。
目の前、まっくらになって、俺、どうしようって・・
どこにいけばいいんだって・・
たった今から、もうケイトのとこにいるわけにいかない・・
寝るところもない・・
ホテル暮らしなんかした日にゃ、金がいくらあってもたりない。
で、俺はずるいと思ったよ。
でも、ケイトにいわれて、俺も目がさめた。
リサのところにかえるべきだよな . . . 本文を読む
おそらく、リサのところへいったんだろう。
玄関先でリサに頭をさげ、それこそ土下座をしてでも
わびているかもしれない。
そのハロルドを、リサがどうするか、
もう、その先はリサの問題でしかない。
リサに書類を届けに行った日。
最後にリサはボーマンの胸の中で思いっきり泣いた。
そして、泣き終えるとボーマンに告げたっけ。
「私、ハロルドに自分の理想を求めていたと思う。
こうあってほしいハ . . . 本文を読む
「ごめんな・・」
この胸の痛みはリサの痛み。
ボーマン・・俺・・こんな痛みを平気でリサにかけてたんだよな・・。
「ごめん・・な・・リサ・・」
あふれてくる涙を拭おうとした時だった。
リサが怒り出した。
「どうしたの?お前しかいないって、それだけの気持ち?
絆がなくなっちゃったら、拾いなおしてこようっておもわないの?
それだけの女?」
「あ・・」
ハロルドだって、馬鹿じゃない。
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