憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

踊り娘・・・1

2022-12-21 14:20:13 | 踊り娘
剣の舞を踊るサーシャの足がおちてゆくそのポジションを見つめ続けた男はやがて、イワノフの手をシッカリと、握り締めた。 ***出番を控えている姉であるターニャの元にサーシャの事実をつたえにいくことは、つらいことでもある。だが、キエフの大物舞踏家が、サーシャを預からせてくれという。姉妹でありながら、ターニャはこんな、地方の劇場まがいの酒場の舞台から、抜け出ることも出来ないにくらべ、妹の舞踏の技術は世界 . . . 本文を読む

踊り娘・・・2

2022-12-21 14:19:57 | 踊り娘
「サーシャが?」ターニャの顔が複雑にゆがんだ。妹の才能が本物であることは姉としてうれしい。だが、同じ踊り娘として、歯牙にもかけられない自分をいっそうにしらされる。 「サーシャには、まだ、はなしてないが、君がサーシャの保護者である以上、まず、君の同意が必要だと思う」サーシャをキエフにいかせる。それは、サーシャが一流のプリマドンナになれるチャンス。「サーシャの気持ちしだいです」答えてから、ターニャは . . . 本文を読む

踊り娘・・・3

2022-12-21 14:19:40 | 踊り娘
舞台をはねて二人のアパートに帰ってくるまで、並んで歩きながらターニャの足取りが重い。「姉さん?どうしたの?」やはり、ソロマドンナ降格が応えているのだろうと、サーシャは言葉を選ぶ。「あたしは・・・アフタータイムの踊り手でも、別にかまわないんじゃないかとおもうんだけどね」悲しそうにうつむいたターニャにかまわずサーシャの言葉が続く。「姉さんはアフタータイムの踊り娘をばかにしてるし、観客を馬鹿にしてるんだ . . . 本文を読む

踊り娘・・・4

2022-12-21 14:19:24 | 踊り娘
それにしても、「イワノフさんも何を思ってそんな大物のところに・・・」ポジションが正確だからって、そんなことくらいで驚かれてたら、ポリジョイサーカスの綱渡りなんか、正確なポジションが当たり前。命がいくつあってもたりやしないだろう?そんなことを考えたら特に驚くことでもない。 「イワノフさんの目は確かよ。コンドラテンコはあなたをキエフのプリンシバル育成所に入所させたいと、もうしこんできたのよ」 プリ . . . 本文を読む

踊り娘・・・5

2022-12-21 14:19:08 | 踊り娘
「姉さんに踊りしかなかったら、イワノフさんのプロポーズを考える事もなかったと思う。眼中にも無いって、大慌てで断っていたと思う。でも、姉さんの中でこれ以上ソロマドンナを維持できない自分だと分かったとき、結婚を考える姉さんになっていたと思う。そして、相手がイワノフさんだから・・・。姉さんの踊りがソロじゃ通じないと評価した相手だから、姉さんは踊りをとるか、結婚を取るか・・・迷っている。踊りを取りたいのは . . . 本文を読む

踊り娘・・・6

2022-12-21 14:18:53 | 踊り娘
「だから・・・さっきも言ったように・・・イワノフさんは姉さんのことを愛してるんだろうって思った・・から」「ばかね。それは、なぜ、イワノフさんがプロポーズをしたかってことでしょ?あたしが聞いてるのはなぜ、あたしが云というと思ったかって事・・・」「ああ・・・」確かに尋ねられたことへの、返答にはなって無かった。「う~~~ん」ナゼだろう?なぜ、ターニャが云というと思ったんだろう?「だよね。父親かと思うくら . . . 本文を読む

踊り娘・・・7

2022-12-21 14:18:36 | 踊り娘
あの日。サーシャのキエフ行きをお願いしにいって、そして、アフターで踊るとイワノフに告げた。「それは、すなわち、僕と結婚しないという意味だろうか?」求婚を断っておいてまだ、イワノフの元で働かせてくれというのは、いかにも、あつかましいと判っていた。判っていたがそれでも、ターニャにも考えがあった。もし、他の劇場に移ったら、収入面も減るが、客もへると思った。ソロマドンナとしてのターニャを知っている客が、ア . . . 本文を読む

踊り娘・・・8

2022-12-21 14:18:21 | 踊り娘
気が付かないまま、むきになるターニャが妙に純粋にみえて、彼女は口調を和らげた。「あたしは・・はじめから、アフターにはいったの。実入りがいいからね。あたしは、17の時に子供をうんで、どうしようもなくなって、母親に預けたの。子供の父親とは、籍もいれないまま、子供も認知されないまま・・・。母親に子供を預け、養育費を送るためにね。パトロン・・はね・・・。この仕事はいつまでもつづけていけないでしょ?そのため . . . 本文を読む

踊り娘・・・9

2022-12-21 14:18:05 | 踊り娘
引き返す術がなくなったのは、サーシャへの仕送りがからんだせいでもある。 キエフで・・・どれだけ、金がいるか・・・。 アフターの同僚が子供のために・・裸で踊った。ターニャだって出来ないわけは無い。まがいものの踊りでも、その手で稼いだ金でサーシャはいつかプロになる。踊りたい。その心を底に埋め隠すとサーシャを希望の星にかえ、・・・・。 そして、いつか・・・・。私も・・・。誰かの手に落ちる。この先、 . . . 本文を読む

踊り娘・・10

2022-12-21 14:17:51 | 踊り娘
イワノフと二人きりで真正面きって、会うのは、アフターに入ると宣言して以来だ。イワノフの求婚を断ったせいもある。イワノフももう、ターニャを引きとめようともせず、ターニャの申請通り、次の日からアフターの振り付け師がついた。 向かい合わせの席でイワノフが「アフターでのデビューは予想以上に大反響だよ」と、ターニャをたたえた。そうなのだろうか?実際問題、ターニャには、大きな手ごたえを感じない。むしろ、舞台 . . . 本文を読む

踊り娘・・11

2022-12-21 14:17:35 | 踊り娘
「まず、君に言っておかなければいけないことがある。パトロンは強制じゃない。アフターを張る踊り娘の特権ともいえる権利であって、義務じゃない。断るも受けるも踊り娘の自由である。これは、君がアフターに入ると言った時に心得ていてくれと僕は念を押したはずだ」イワノフの言葉にターニャが反駁する。「でも・・・実際、こんな風に資料まで渡されたらパトロンを持てといわれてるのと同じことだわ」「それは、君の覚悟が浅いっ . . . 本文を読む

踊り娘・・12

2022-12-21 14:17:20 | 踊り娘
控え室の前に立ったターニャは首をかしげた。もう、誰かきてる。ドアの隙間から漏れる光といくばくか、荒い息。誰だろう?なんだろう?ターニャは扉をノックすると「入るわよ」と、中の誰かに声をかけながら、扉を開いた。 「あっ・・カタリナ?」控え室の中央の狭いスペースでカタリナは振り付けのおさらいをしていた。荒い息はカタリナの喉からはっせられたものに相違なかった。「あら?」ターニャに気がつくと、カタリナは . . . 本文を読む

踊り娘・・13

2022-12-21 14:17:06 | 踊り娘
「それ・・は、どういう事?」「そうだね。まず、恵まれてるってこと。うまくいえる自信はないんだけどね。まず、あなたは、どうにしてでも、ん~~~。例えば、身を売ってでも、どうにしてでも、踊り続けたいって、そんな事しなきゃ舞台にたてない。そんな目にあってないよね。ぽっと、入った劇場でいきなり、ソロをはって、アフターに入ったって十把一絡げのラインダンスから登っていくのが普通のところをこれまた、いきなり。ソ . . . 本文を読む

踊り娘・・14

2022-12-21 14:16:52 | 踊り娘
急かすだけのことはある。カタリナが今日の出し物のトップ。 カタリナをみおくって、舞台の袖にたった、ターニャはカタリナの踊りに釘付けになった。 演目はオリジナル。ストーリーがある。街角に立つ娼婦。それが、カタリナ。曝け出した胸を誇りストリートを闊歩する紳士をこまねく。だけど、だれ独り、カタリナの誘いにのってこない。あれやこれやの術を使いしなをつくり、胸を揺すりカモン・カモンと指をうごめかす。それ . . . 本文を読む

踊り娘・・15

2022-12-21 14:16:37 | 踊り娘
舞台がはねたというのに、帰宅の足取りが重い。少し前までなら、サーシャと並んで帰る時刻は充実感につつまれていた。家に帰るという事は、ひいては、明日への準備。また、半裸身でおどるために身体を休めるだけ。食事・・・をとって、風呂に入り、それから・・・。なにもする事が無くなっている。とりとめないお喋り。サーシャに癒されていたくつろぎの時間も今は無い。物思いが流れるままにとぼとぼと歩くターニャの目に映る町並 . . . 本文を読む