冒頭に過激な表現が有ります。苦手な方はスルーして下さい。 . . . 本文を読む
織絵は昨年の秋に陽道に殺されていた。織絵を我物にしようとした陽道が織絵を無理やり押さえ込んだ。その手から逃れようとする織絵と陽道の葛藤がしばらく続き、あと、ぐぎと音がすると織絵の首の骨が折れた。舌を噛もうとする織絵の顔を押さえつけ止めようとしたのがいけなかった。陽道はまっ青になった。同時に織絵をその腕に抱くと大声を上げ咽び泣いた。無体な事をしようとしていたのであるが陽道は織絵に心底、惚れていた。惚 . . . 本文を読む
「織絵・・・?」「首の骨を繋ぐのは面倒に。今度殺す時はもっと、別のやり方にしてくれるのかの」「織絵?」やはり織絵では無い。が、織絵なのである。「はよう」鬼女が情交を求むる声がしてくる。「織絵はもっと淑やかだ」「良いではないか。人前ではうまくやるに・・・ほれ・・はよう」「お前。どこでそんな術を覚えた?」「良いに・・・ほれ・・・」裾を肌蹴ると先の陽道の姦通で織絵のほとから破瓜の血が滲み出していた。「ほ . . . 本文を読む
「織絵」荒神の障りがあるといっては織絵の家に足繁く通った陽道である。己で念誦をかけておいて織絵が臥せ込んだ所に駆け込んで「荒神の障りじゃ」と、念誦を解くのである。あっというまに娘が元通りの顔色になってしまうと家人がひどく喜んだ。そうやっておいて家人が礼を差出すにも「いえ。私が気がついて、勝手にやった事ですから」と、殊勝気に断わる。が、それでも向こうは無理にでも渡してくる。不承不承それを受取ると「が . . . 本文を読む
「織絵。静かにせい」「ぁ・・ぁ・・」「ててご見つかろうに」「ぁ、ぁぁ・・・」織絵の家。織絵の居室の中で織絵を抱く事さえ叶うようになると陽道も流石に辛抱が出来ない。「織絵。明日は、なんぞ理由を作るにわしの所に来い。のっ」「あ・・・ああ」別の言い方に着物のことを八口ともいう。何処からでも好きな様に手を差し込んで織絵を嬲れるのはいいが、陽道の方は鉄斎が気になって己の物のうさを晴らせぬのである。着物を絡げ . . . 本文を読む
陽道の元を訪れた織絵の顔が暗い。陽道が引寄せる腕を押しのけられると陽道も訝しげに、織絵を見た。「どうした?」「・・・・」「障りか?」月の物のせいで触れられるのを嫌がったかと思ったのである。「ならば・・良い・・・」「・・・・」胸に記するものがある。陽道がそれを言おうとすると「孕んでしもうた」織絵が先に切り出した。「まずいの・・・・」鉄斎に言い分けが立たぬ。己の進退がとうとう窮まる。「掻き出すかの」孕 . . . 本文を読む
波陀羅が策略にかけようと決めた鬼は邪鬼丸こと、新羅の婿殿である。波陀羅は、もともとは普通の女鬼であった。波陀羅が織絵の身体の中に住みつくような術を覚える事になった、そもそもが邪鬼丸への復讐にあった。この波陀羅の初めての男が邪鬼丸であった。好きな様に嘘吹き、通い摘めた挙げく波陀羅を我が物にするとものの三月もせぬ内に飽きた。己の物への侮辱と、邪険に扱われた末、邪鬼丸に去られた悲しみとで波陀羅は二歳泣き . . . 本文を読む
あくどい男であるが、一人の女をどうにも出来ぬらしく抱いた女子、抱いた女子にその思いをぶつけるが如く女の名を呼ぶ。(織絵・・織絵・・織絵・・・)男が他の女子の名を呼んでいるのさえ気がつかないほど抱かれた女子も執拗な高い快感にほだされて何度も何度も後を引く長い声を上げていた。どのような持ち物があれほど女子を無我夢中にさせてしまうのか、それ程の男が織絵を物に出来ない。不思議な心持と生唾の出てくるような男 . . . 本文を読む
―― 邪鬼! ―――その姿を見つけたのが伽羅である。
昨日の事であった。新羅が怒鳴りながら伽羅の住処に入り来るとあちらこちらを探し回る。邪鬼丸を探しているのである。『新羅・・・・』ここに隠れておらぬと判ると新羅は伽羅をといつめる。「邪鬼を何処にかくした」「来ておらぬ」「嘘を言え」邪鬼丸の事だ。又、人間の女子の所に行っておるのだと、伽羅は思ったが新羅の腹の膨らみにそれを堪えた。新羅はそれを知らない . . . 本文を読む
鬼の退治がすむと畳に平伏し頭を擦り付ける陽道の姿があった。「気が付くのが遅う御座いました。何もかも、陽道の手落ちで御座います」と、言われれば鉄斎も責める気になってしまうというものである。「何の為に着いておってくれおった。孕み落しも出来ぬ程になりて、それでのうても鬼に嬲られた娘の所にどう、婿を取ればよい。世間様にどう・・・」図らずも鉄斎の口から陽道の思惑とする所が言い出されると「この陽道が先に織絵さ . . . 本文を読む
十余年が過ぎた。鉄斎の妻は心労が祟ったのか一樹が生まれ二人目の子である比佐乃が生まれると間もなしにこの世を去っている。鉄斎も齢に勝てず伏せこみ勝ちになると身代を娘婿に譲った。何もかもが二人の勝手になり、子も福々と育っている。絵に描いたような幸せに浸りこんでいる波陀羅の胸の中に瑣末な思いが生じて来たのもこの頃であった。(この波陀羅こそが織絵であろう?陽道の妻はこの波陀羅であろう?)幾年の日々を陽道と . . . 本文を読む
「おんばしゃ。おんばまぁ。ぐだら。そわか・・・・」「波陀羅」呼ばれた声に血も凍るような思いで波陀羅は呼ばれた声に振り向いた。
「ぁ・・・独鈷ではないか」「えらい事をしてしもうたの」同門の兄弟子になる独鈷が何故ここに現れたのか不思議な面差しで見るに、独鈷が「なに。なみづち様にお前が弱り果てていると言われての」「あ。なみづち様は我をずうと見遣ってくれおったのか?」「当り前だろう」波陀羅はこの時はまだ . . . 本文を読む
頃合も丁度良い。長男である一樹が十五の時、取りとめない落ち度を陽道は叱りあげた。「ならぬ事をしおって・・・仕置きじゃ」諌まらぬ様子で一樹を睨みすえる陽道の前にへたりと座りこんで一樹は頭を下げていた。芬芬とした陽道が一樹の後ろに回った。背中に振り下ろされる棒の痛みに堪えるため一樹はじっとしていた。その一樹の腰辺りに陽道の手が延びて来ると一樹の袴がとかれ引き摺り下ろされた。尻への兆着は十五にもなれば流 . . . 本文を読む
ふと目覚めた波陀羅の横に陽道がいない。向こうの部屋からは耳を塞ぎたくなる声が漏れている。その声の持ち主が誰であるかは波陀羅もすでに気がついている。それよりも、陽道と波陀羅しか知らないはずのマントラがその声に重なるのである。恐ろしい予感に胸を塞がれ波陀羅は声の聞こえるほうに歩んでいった。祈る様な気持ちでそっと襖をすらして、僅かばかりの隙間から中を覗き込んだ。『あ』何という事であろう。歪むような顔で陽 . . . 本文を読む
棲家を覗き込む波陀羅に気がついたのは新羅の方だった。「こんな、遅うになんじゃ?誰じゃ?」新羅はかがり火から木を持ち込むとその灯りで波陀羅を照らし出しながら歩み寄ってきた。「新羅!波陀羅じゃ・・・」そう名乗られると新羅も思い出すものがある。微かな記憶がある。昔、軍治山にそのような名の女鬼がおったような気がする。何処に行ったかその行方を暗ましてから皆も忘れ果てていた事であった。「何・・かな?」その女鬼 . . . 本文を読む