恵美子。年齢は19になろうか。うすらわらいをうかべるような、口元と焦点のあわない瞳は精神障害者特有のものだろう。
俺達はなにもできない何の意志表示もしない恵美子の笑いをうかべたような口元から、恵美子を笑子と呼んでいた。
笑子がこの施設に預けられる事に成ったのは笑子が13になる秋の頃だった。
その春に施設に勤務しだした俺達が笑子の専属になったのは、笑子の抱える環境と症状によった . . . 本文を読む
「つかぬ事をたずねますが、そちらでお雇いになった介護員は男性・・」園長はそこで、いったん言葉をきって、とまどいながら、続けた。「男性?だった・・・の、ですか?」父親は恵美子になにかあるのかと、いぶかったようだが、深くは追求せずに「そうです」と、答えたあとに、小さな言い訳をつけたした。「彼女に妙な心配をかけたくなかったのです」恵美子を介護してもらうためとはいえ、一つ屋根の下にしょっちゅう、他の女性の . . . 本文を読む
此処に来たときに所長は俺達に介護精神の基本をひとつ、訓示してくれていた。
それは、米国に渡ったある女子介護員の話からだった。
恵美子の父親のように専属で介護員をやとうということは、よくあることで、ベビーシッターなども、その顕著な例である。仕事をこなしてゆく人間の家庭内事情を労働により、補佐、援助し、賃金を得る。こういう仕組みがうまく出来上がっているから、渡米した女子介護員もまもなく、仕事にあり . . . 本文を読む
女性への恐怖心を取り払わなければ、笑子はおかしな状況であるといえる。なぜなら、女性を恐れる笑子も女性でしかないのだ。
笑子の中で自分を女性であると、認識し始めることがあったとしたら、笑子の精神は自己崩壊をおこさないとも限らない。
とは、いうものの、笑子が精神的に成長するということはまず、ありえることではないが・・。
が、逆に女性を恐れるあまり笑子が女性であるという自覚を排除しようとすることは . . . 本文を読む
笑子は16になっていた。俺たちはこの3年間、笑子の介護をしつづけてきていた。介護というものは単に人間の生命維持のための補助でない。肢体を自分の意思でうごかすことができない、笑子の筋肉を萎縮させないためにマッサージを行う。もう一度、繰り返すが、これは、筋肉を萎縮させないためだけのもので、笑子の肢体の自由が回復するものではない。結局、笑子の症状は平行線を描き続け13歳でここに来たときと何も変わってない . . . 本文を読む
江崎と交代して、俺は自分のアパートに帰るために車を走らせていた。
途中、コンビニによると、出来合いの弁当を物色し1冊、週刊誌をかいこんだ。
車に乗ってエンジンをかけたとき俺は自分の中にある疑問に新たな疑問を感じている自分をはっきりと自覚した。
簡単にエンジンキーを差込み、ぐっとひねる。
こんな簡単な動作でも笑子には、むつかしいことだ。
と、なると、笑子のあの行動が欲求行動であるとするなら . . . 本文を読む
ドアの前に立ったとき、俺の耳にいつもとは違う笑子の異様な声がきこえてきていた。獣の咆哮にもにているが、ひどく、鼻にかかった声。まるで、春の猫のさかり声だ。この時点で俺は江崎が笑子に何をしているか、見当がついていた。ただ、それがどこまでのものか・・・。江崎の行為はセックスボランテイァの域をだっしいているものか。逆を言えば、笑子の肉体がどこまで、性を希求しているものなのか。野卑な俗語で言えばABC。単 . . . 本文を読む
笑子の腕がにゅっと天井に向けて突き出されると筋肉は一瞬の躍動をささえることを放棄する。ひらひらと笑子の腕がベッドにまいおちると、先の獣の呻き声とともに、笑子の両腕は天井を目指す。繰り返される空中への浮遊は水のないプールでの平泳ぎのイメージトレーニングにも似ている。だが、それは江崎に与えられる鋭い刺激にあえぐ笑子の抑揚のデモンストレーションでしかない。江崎は笑子の鋭い場所をなでさすり続けている。そう . . . 本文を読む
江崎のその言葉は、もう、何度かこういう行為を笑子に与えているということを物語っていた。そして、なによりも、笑子の反応。男の物を飲み込んだ笑子の局所は「女」として、充分に開花している。1度や2度の交接で笑子がここまであえぐだろうか?「笑ちゃん・・いいね?・・いいね・・いいね・・」江崎の声がうわずりだし、笑子へ与える振幅が早くなってくる。「笑ちゃん・・いっちゃえ・・ほら・・」江崎の声と与えられる動きに . . . 本文を読む
「なんだって?」徳山・・が?徳山までもが・・・?二人して笑子を犯していたというのに・・・、俺は何も気がつかず・・。笑子に対して清廉潔白をもって処していた・・。守るべき筋もない笑子の操であるが・・、それも、すでに貫通をうけ、男の物によがる女でしかなくなっていたとも知らず?あるいは、俺一人、つんぼ桟敷・・・。「徳山・・は・・」俺は何を聞こうとしていたのだろう・・。徳山が自分で笑子を犯し始めたのか?それ . . . 本文を読む
通常・・。病院などに長期入院している患者にとって何よりも楽しみなのは、食事だろう。
笑子に性を教え込みさえしなければ笑子はひずんだ欲望処理の餌食にされることはなかった。そして、三度の食事を楽しみにするだけの憐れな消化器官を具有する物体として、男の欲望にもまれもしなかった代わりに食事を与えられ、厄介な生き物として事務的にあるいは、機械的に満腹感を渡される。
これは・・、惨めじゃないか?
わずか . . . 本文を読む
俺の胸の中で、この時は確かに『ココを辞める』そう決めていたはずだった。
此処は7月に賞与が支給される。それをもらったら、俺は此処を辞めよう。そう決めて・・・何事も無かったように職場に入った。さいわいなことに、俺はメインで笑子の世話をする立場じゃない。江崎が公休の時の代打になるわけだが、それも、徳山と分割される。だが・・・・。やはり、順番というものは回ってきて・・・俺の宿直当番と江崎の公休が重なっ . . . 本文を読む
同じことの繰り返し 同じことの繰り返し 同じことの繰り返し・・・
ボランテイアの仮面をかぶって笑子を蹂躙しつくす俺はいつのまにかその主導を見失っていた。笑子に性の歓喜を渡してやるだけのはずが笑子の肉に溺れ俺は今日も笑子をまさぐる。「ちょっとだけだぞ」笑子の精神年齢を例えれば3歳児のそれと同じだろう。陰部の清拭を終えるとぐうと果肉をつまみ、突出した陰核に指を沿える。笑子の瞳が潤み甘い咆哮と . . . 本文を読む
7月いっぱいで、此処をやめる。そう決めたからこそ、俺はいっそう、笑子をかまいたかった。俺が居なくなっても、徳山と江崎が笑子の楽しみを継続させてゆくだろうから、俺の必要性など、どこにも見当たらず事実は、俺の欲望を満足させているだけに過ぎない。
ただ、俺は俺の中で自分だけは徳山や江崎とは、笑子への対峙感情が違っていると自負していた。
奴らは笑子を呈のいいはけ口にしている。比べ、俺は少なくとも笑子に . . . 本文を読む
笑子を抱くこともあと、何度あるだろうか?
患者達が寝静まった廊下をさかのぼり、笑子の部屋にたどり着く。
宿直の当番が俺たち3人の誰かだとどうやってわかるのか?あるいは、この時間まで焦がれる欲情に眠れぬまま、俺たちの誰かが来るのを待ち続けているのか・・・。
笑子の部屋の電気をつけると笑子が笑子のごとくに、微笑んでいる。
それも、あと、何度あることだろう。
俺の後釜に入るだろう男もいずれ、笑 . . . 本文を読む