憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

井戸の柊次郎・壱 1 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:37:09 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
どちらも譲らないまま、澄明いや、ひのえと白銅に決済はゆだねられた。白銅の父、雅は白銅を養子に出すという。鼎の事に恩義を感じているせいでもあるが、正眼のところには後がない。餓鬼に落ちて助かった事なぞ皆無である。諦めていた娘が帰ってきたのである。一人の娘の人生が救われたのである。この事を思えば後のない正眼に白銅を差し出す事は物事の礼節であろう。が、ありがたいと喜ぶはずの正眼は、がんとして首を縦に振ろう . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 2 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:36:50 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
あつらえ向きの一軒の空き家の前に白銅とひのえはたたずんでいた。近所のものに尋ねて家主を請えば、すぐ近くの在所と知り二人は家主の家を訪ねた。「ああ。ようございますよ」二人の家の中を見せて欲しい、良ければ借り入れたいという申し出に家主はこころよく承諾すると「つい、この間にも掃除に入った所だし、綺麗なものですよ。何鍵なんぞかけてない。入ってみてよく見てから決めなさればよい。だが、二人で住みなさるにはひろ . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 3 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:35:47 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
明けて三月。雛の日をむかえ白烏帽子のひのえを迎え入れる新居に膳は運び込まれ、白銅は落ち着きなくうろうろと歩き回っている。産土神社では、やがて、やってくる花嫁と花婿の儀式のためのしたくを神主は調え終えていた。なれたことである。白銅の落ち着かぬに比べ神主はゆくりと腰を落とすと出された梅の花茶をすすっている。とうとう待ちくたびれたのか白銅は産土神社の前で花嫁を待ち始めていた。「ひとりかの?」白銅の後ろに . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 4 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:35:30 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
新居にて朝をむかえると近所の口さがないおかみ連中が入れ替わり立ち代りとやってくる。手ぶらでは様子伺いがあからさますぎるので、おかみ達は畑で作った野菜を手に持ってくる。くちうらは同じで「何かと物入りでありましょう。うちの畑で取れた野菜ですがどうぞ」と、朝から何度同じ言葉をきかされたことであろう。くどはあっという間に野菜置き場になり其れが小さな山を作っていた。野菜なぞを持ってくるのはきっかけが欲しいだ . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 5 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:35:14 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
「陰陽ごとをなされると?」男が尋ねてきた。「はい」居間に男を通し、白銅をよぶと、ひのえは茶を入れて、男と話し始めた白銅の傍らに座った。男は陰陽師であるという事を聞き及んだついでにひのえもまた陰陽師であると言う事もきかされていたようで、女子が話しに介在する様子に訝しげな顔を見せなかった。「澄明さんですよね?」名前もきかされているようである。「白峰大神をしずめられた。あの澄明さんですよね?」「あ・・は . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 6 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:34:52 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
白銅の問いに男、いや、柊二郎の顔色がさっと、変わった。「何か、いわれはありませなんだか」「あの井戸に?」「何かがひそんでおります」柊二郎は頭をだかえこんだ。「あの・・・井戸は」柊二郎は唐突に話し始めた。「昔、色に狂うた先祖がおりましてな。それが、私と同じ「柊二郎」といったそうなのですが」 先祖の柊二郎はその名が表すとおり次男坊であった。が、長男の病死で家督を継いだ。やってきたばかりであった亡兄の . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 7 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:34:35 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
―判りました。明日でてゆきます―由女はうなづいた。柊二郎のことである。一旦身体をあわせた以上は、気が済むまで久をだきつくすだろう。もはや、なってしまった事を元に戻す事は出来ない。それよりも下手に柊二郎の狂気を煽ってしまうことがおそろしい。獣姦をやりのけているのも由女はしっている。雌鶏をなぶっていた柊二郎が声をもらした。―よい・・ようしまりよるわ―くえという押しつぶされた声は雌鶏を締めたせいであろう . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 8 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:34:16 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
「柊二郎が水を汲むのを見計らって由女は井戸に柊二郎をつきおとしたのです」と、今の柊二郎は井戸にまつわる話を終えた。「柊二郎の存念が祟っているということか」白銅の推察にひのえは頷いた。「久という娘さんへの情念を果たしきれずに死んだ」「だとすると、男と言う者はしまつにおけぬ困ったものよな」白銅が言うのは白峰の事でもあり、また自分のことでもある。「とにかく。夜半にまいりましょう」柊二郎に送り出されるとひ . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 9 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:34:01 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
「もう、しばしで丑三つどきになりましょう」「うむ」もうしばし、二人は端座する。夜半の鐘が丑三つ時をしらせはじめた。「逢魔刻です」ひのえが小さく呟く声が静まりかわりに耳をふさぎたくなる声が隣室から漏れ出してきていた。「嗚呼」声が漏れてくる部屋の襖をわずかばかり開いてのぞきこんでみた。夜具はめくり上げられ娘の白い太ももがあらわになっている。その太ももを両手で抱きこむようにして娘の開かれた足の間に男根を . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 10 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:33:45 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
二人は思案する。柊二郎には、なんといえばよい。それもある。だが、実体のない物が精をはきだすことまでやってのけた。あまつさえ精も確かな実在であった。あの生臭いにおいがまだ部屋のなかにある。「この臭いも常人にはわからないものなのでしょうね?」「そうであろう・・の」「でも・・どうします」「調伏が効く相手ではなさそうだの」「はなしあえましょうか?」「う・・む」無理であろう。あのときの薄ら笑いには、お前らで . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 11 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:33:27 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
二日もせぬうちにおかみ連の中の一人が聞きつけた噂話をたしかめにやってきた。戸口に突っ立ったまま「やはり、あんたは澄明さんなんだね?」と、尋ねた。「そうだよね。で、あの屋敷にいったんだよね?」夜遅くの二人の行動をどこで、しったのであろうか?柊二郎の娘の元にやってくる物の怪のことまでしっているということであろうか。「なにか?」と、尋ね返すひのえを見ながら、口幅ったいのはいやなのであるが、と「いやね。何 . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 12 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:33:13 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
ひのえは白銅をさがし居間に戻った。祭壇の祭られた部屋の清めに行ったのか白銅はいなかった。それならばとひのえは榊をとりにいった。「なんだ。もう、帰ったのか?」縁から降り立った白銅が既に榊の側により枝をえらんでいた。「はい。其れよりも妙な事をききました」ひのえの顔色を見て取った白銅の顔がひきしまったものになった。ひのえはおかみに聞かされた話を白銅に話した。「すると・・娘さんはすでに・・」どちらの柊二郎 . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 13 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:32:55 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
わが身を奪われ、暗い井戸の底に住み続けながら柊二郎は娘の身をあんじていたのである。「私に成り代わった井戸の柊二郎は早速存念をはらそうとばかりに・・・・」まだいたいけない比佐を押さえつけ陵辱をくりかえしてきたのである。この三年の間に生身の大人の男が少女を蹂躙しつくしたのである。信じられない恐怖が比佐をつつんだ。其の恐怖を与える男が父親であるばかりに寄る辺を求めるしかなく比佐は父親の要求にしたがってき . . . 本文を読む

井戸の柊次郎・壱 終 白蛇抄第8話

2022-08-28 17:32:39 | 井戸の柊次郎・壱  白蛇抄第8話
「ひのえ。塞ぎしかなかろう?」そうなのだ。井戸の柊二郎を塞ぎでさにわするしかない。「それに、いずれ、なることであろう?」白銅が浮かぶ事をひのえに暗示した。「そうですね」遅かれ早かれ、井戸の柊二郎を成仏させなければならない。が、井戸を出てきては比佐を抱く柊二郎では、成仏への法は開けない。「どのみち、塞ぐしかなかろう」ひのえが頷くのを見た柊二郎は「あの?塞ぎ・・とは?どうすることです?」「井戸の柊二郎 . . . 本文を読む