憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

白い朝に・・37  ー此処までー

2022-09-09 20:13:41 | 白い朝に・・・(執筆中)
瞳子の「基の傷」がどこにあるか、探す。と、いうことは逆に、言えば、瞳子が『基の傷』を奥深くに隠しこんだという事でもある。私は昨日の瞳子を思い返していた。基の傷にふれる存在である父親を父親と認識しない事で、基の傷にふれずにすむことになったのならば・・。昨日の瞳子の教授ヘの態度。教授の存在が目にうつらなくなったかのような瞳子。これは?教授を父親と認識しない。と、いうより教授を認識しない。え?それは?基 . . . 本文を読む

白い朝に・・36

2022-09-09 20:09:09 | 白い朝に・・・(執筆中)
私は車を発進させると、クリニックに急いだ。 クリニックの駐車場に車をすべりこませた私の目に、女医の姿が移りこんできた。開院まえの清掃や準備などで、診察室に看護士がたちいるためだろうとも、思えた。車を止めると、女医は運転席側に歩み寄ってきて、窓ガラスが開かないうちから、喋り出した。「おはようございます。昨日の資料はもう、よんでくださいましたか」いきなりの切り口上だった。私も瞳子の回復に必死になって . . . 本文を読む

白い朝に・・35

2022-09-09 20:03:55 | 白い朝に・・・(執筆中)
バスの本数はあるけど、それはそれで、たいへんだと思うと、今まで、疑問に思わなかったことが急に気になった。「教授、そういえば、瞳子は車の免許、とってませんよね」「うん。車の運転は怖いって、免許をとろうとしないから、無理じいはしなかったんだ。 必要になれば、嫌でもとるだろうと思ったし、君との結納の後にも、免許はあったほうが良いとすすめたんだよ。 でも、うんといわなかった。 まあ、バス路線もしっか . . . 本文を読む

白い朝に・・34

2022-09-09 19:59:18 | 白い朝に・・・(執筆中)
翌朝、私が起きたときには瞳子はもう、ふとんの中にいなかった。かわりに台所から物音がきこえ、夫人のはずんだ声が聞こえた。私はパジャマのまま、台所に歩んでいった。「じゃあ、玉子焼きとお肉のソテーとほうれん草の胡麻和え、しゃけを一切れ」どうやら、お弁当をこしらえようと、瞳子はおきていったのだ。私の感激がいかなるものか。そして、夫人の声が弾むわけも解かる。お弁当をこしらえてもらえるなんていう単純な喜びじゃ . . . 本文を読む

白い朝に・・33

2022-09-09 19:58:50 | 白い朝に・・・(執筆中)
「家族」という閉ざされた扉の奥で、このような虐待行為が行なわれているのです。 しかし、それでも、子どもたちは生きていかなければならないのです。 どんなにひどい家族であっても、子どもたちはそこで生きていかなければならないのです。 その環境の中で、なんとかして生きて行く方法を考えなければならないのです。 そして、その生きて行くための方法のひとつが、「心を凍らせる」ということです。 心が何も感じ . . . 本文を読む

白い朝に・・32

2022-09-09 17:15:06 | 白い朝に・・・(執筆中)
教授とともに、教授宅に戻ると、昨日とうってかわって、瞳子がすがってくる相手が私に代わっていた。「おかえり。おかえり」嬉しくてたまらない繰り返しを聞きながら、私はそっと瞳子の頭をなでた。「うん・・」じわりと瞳子の目の端に涙がにじむ。それは、昨日の帰宅時、瞳子の教授への行動がどういう意味合いをもつものか、私に悟らせた。瞳子は父親を恐れている。 恐れているからこそ、気に触るような行動や恐れている事が教 . . . 本文を読む

白い朝に・・31

2022-09-09 17:08:09 | 白い朝に・・・(執筆中)
女医の見解はまだあった。「柚木先生の治療によって、篠崎さんは、自分がしでかしていることが、たいへんなことだときがつくまで、回復していったのだと思います。 柚木先生の口からは、篠崎さんが虐待をおこなった事実は聞かされてはいません。 篠崎さんも話すに話せなかったのだと思いますが、これが、逆にPTSDを発症させていると考えられるのです。 何らかの事件の被害者や目撃者ばかりが、PTSDになるとは、限 . . . 本文を読む

白い朝に・・30

2022-09-09 16:59:39 | 白い朝に・・・(執筆中)
「貴方がおっしゃっていたように、「基の傷」が、なんであるかは、催眠療法でひきだしてこないと本当のことは解からないのです。 ただ、私は往診にいった時に、瞳子さんの様子から、これは、虐待が弾きがねになってると感じたのです。 それは、私がこの20年精神科にかかわって、色んな事例をみてきた医者の勘でしかなかったのですが、 篠崎さんの顔をみて、通院の事実とか思い出して、いっそう「ありえること」だと、思 . . . 本文を読む

白い朝に・・29

2022-09-09 16:41:30 | 白い朝に・・・(執筆中)
ーそんなことはありえない。おまえは妄想にとり憑かれているんだ。女医が何かを気づかせようとしていると思いこんだから、変なことを考え出したんだ。それに、今だって見ろ。おまえ、おかしいじゃないか?俺は誰だ?おまえの別人格だろ?おまえは気がつかぬうちに音叉現象にやられて、俺を浮上させてるんだー自分を客観視しようとするために、時に自分を対象に会話することはありえる。私は一瞬自分が狂った錯覚に陥っていた。だが . . . 本文を読む

白い朝に・・28

2022-09-09 16:32:47 | 白い朝に・・・(執筆中)
「え?」同意しないだろうと思っていながら、同意書を出した。いや?逆か?同意しないから、あえて、同意書を渡した?ところが、案に相違して、教授の了承の証拠となるものが目の前に提示された。同意しないはずの教授が同意している。女医は同意を突き崩す論理を考えた。こういうことだろうか?だが?何故?何故、そこまでして、治療を避けるのか?いや、それ以前・・・・。『何故・・同意してくれなかったのでしょう』再び私の頭 . . . 本文を読む

白い朝に・・27

2022-09-09 16:23:07 | 白い朝に・・・(執筆中)
小さな設問コーナーがあり、鬱病は薬では完治しないと聞きましたが本当ですか?と、問われていた。 私は薬で治る病気もあるし、薬だけじゃ治らない病気もあるだろうと、思いながら回答を読み進んでいった。 回答は通り一遍のもので、ちょっと調子が良くなってきたと思っても、 自分の判断で薬をやめたり、減らしたりすると、ダイエットと同じで薬をやめると却って、 リバウンド作用がおきるので必ず医者に相談すること . . . 本文を読む

白い朝に・・26

2022-09-09 13:55:16 | 白い朝に・・・(執筆中)
ドアを開けると瞳子が私にむしゃぶりついてきた。「もう一度、お仕事に行きますよ」帰宅ではないことを告げ、夫人を呼んだ。「どうなさいました?」早い時間の来訪を夫人はいぶかしく問い直してきた。「クリニックに行ってきました。瞳子の治療に催眠療法があると解かって、 クリニックから同意書を貰ってきたのですが、教授が同意してくれません」夫人は私にもぶりつく瞳子を見つめていた。瞳子の様子が夫人の思いを揺さぶって . . . 本文を読む

白い朝に・・25

2022-09-09 13:46:24 | 白い朝に・・・(執筆中)
「あなたはかなり精神力の強い人だと判断しました。 ですが、この事実を確かめたときにあなたに話すかどうかは、私に一任してもらえませんか?」 女医の提言は女医の譲歩と誠意であるのだが、私は女医の言葉の裏側を読み取ってしまう。 「それは、私が知るにつらいことだということですか?」 私の顔を見つめながら女医は私をたしなめるように、話し出した。 「人が狂気に陥るとき、必ず根っこに大きなきっかけ、い . . . 本文を読む

白い朝に・・24

2022-09-09 13:40:21 | 白い朝に・・・(執筆中)
「まず、信頼関係が成り立ってそこから、本人の意識を、自分への客観視にふりさすことが出来るようになってくるのですが、 これは、お父様にもお話しましたが、瞳子さんの場合、それをなりたたせることが非常に困難なのです」 私は大きく首を振ったと自分でも気がついた。 「何故ですか?何故、困難なのですか?瞳子は現状、私にいろいろ話し始めています。 それは共有理解をもとうということでしょう? それはつま . . . 本文を読む

白い朝に・・23

2022-09-09 11:35:20 | 白い朝に・・・(執筆中)
「貴方は昨日、初めて瞳子さんの状態を知らされたとおっしゃっていましたよね。 確か、私が往診に出向いたのは2週間以前前のことだとおもうのですが、 婚約者である貴方にご家族が事実を知らせようとしなかったのは・・・」 瞳子の状況では婚約破棄もありえる。 女医はありえる話を想定して私にたずねようとしていることが私には見えた。 本当は家族が婚約破棄を申し出ているのに、あなたがそれを承諾していないの . . . 本文を読む