ぶらつくらずべりい

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茂吉の理論

2022-02-01 16:56:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
ひたいそぎ動物園にわれは来たり人のいのちをおそれて来たり(斎藤茂吉)

「ひたいそぎ」とは只事ではない。

何かとてつもなく恐ろしいことがあった。

それは「人のいのち」

ただ一度の命。等しくただ一度。

「動物園」を選んだ理由は何か。

人では無い命に触れたかったのではないか。

一人の人間の中にある、恐ろしいと守らなければならないという感情。

生まれるのは混乱。

混乱は理論ではない。

理論でな無いものが「動物園」を選ばせた。

しかし、選ばせたものは無意識の意識。

人間は孤独。





ガーゼ

2022-02-01 09:59:00 | クンストカンマー(美術収集室)短歌
あまりに浄らかな細長い布を渡されてなまなましい傷を包みたくなる(齋藤史

人の心理は不可解だ。

ただの細長い布なら、このような心理にはならないだろう。

「あまりに浄らか」だからこそ、汚してしまいたくなるのだろう。

傷を包む。

いちまいのガーゼのごとき風たちてつつまれやすし傷待つ胸は(小池光)

「傷待つ」、待っている。傷付けられ傷付くのを。

「いちまいのガーゼのごとき風」がたったから。
まだ傷付いていない胸は包まれやすい。

複雑な心理だ。

無垢な心を詠んだニ首。

無垢なままではいられない人間の孤独。