ゆびというさびしきものをしまいおく革手袋のなかの薄明 (杉崎恒夫)
「革手袋」とは「ゆびというさびしきものをしまいおく」ためのものだと言う。
その中の薄明かりを詠む。
「さびしき」から「薄明」を繋ぐ線。
薄明は少しの希望だと思う。
「革手袋」から感じる寂寥感もいい。
ゆびが寂しい理由はいくつか思い浮かぶが、指が寂しくない時間は誰かに触れている時間だろう。
短詩形で「さびしい」と感情をそのまま言うことは冒険だ。
言わずに感じてもらうことがある種の成果だから。
けれどこの一首は「さびしい」と言わなければならなかった。
「薄明」とは日の出前、日没後の薄明かりの状態。