ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

詩、彼女は何に驚いたのか。

2010-06-23 08:16:08 | 
今日、彼女を見た。もうこの世にいないはずの。
僕はたまたま、仕事まで時間があったので買い物も兼ねて職場の辺りを散歩していたら、前から見覚えのある紫の軽自動車が来るのが見えた。
運転席を見てみると、口に手を当てて驚いた顔で僕を見ている彼女がいた。
僕は少しだけ驚いた。
車は僕の横を通り過ぎた。
僕は振り返ったけれど行ってしまった。
彼女は髪型を変えていたみたいだ。
けれど、相変わらず彼女だった。
あれから数時間が過ぎたけれどメールが来ない。
なぜだろう。
いつもならもうとっくにメールをくれているはずなのに。
晩御飯を食べてるのか、それともいつものように友達と長電話してるのか。
もしかして怒っているのかも知れない。
声が聞きたい。
痛切にそう思った。


サイレントピアノ 斎藤典子

2010-06-22 04:49:56 | クンストカンマー(美術収集室)
川の水退いてまなかに歪なる石あらはれて陽に曝されてをり

この風景を見ている作者はどのような状況なのだろう。多分、一人で何をするでなく物思いに耽り川の流れを見ている。すると、流れが変わり形のよくない石が見えた。それはまるで隠しておきたい部分が晒されているように感じたのだろう。「退く」は「どく」だろう。その語感がいい。

サイレントピアノ 斎藤典子

2010-06-21 05:54:24 | クンストカンマー(美術収集室)
柔らかき言葉を産まむ黐の木のこののちの千年をわれらは知らず

黐(もち)の木は赤い実が成り公害に強いため公園によく植えられている。その強さ故に千年も生きるだろう。しかし、我等は何百年も生きられない。だからこそ、柔らかい言葉を残すべきなのだろう。言葉は人を変える力がある。