ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け35年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

【拡散歓迎】2021年「変更申請=不承認」を沖縄県と共にめざそう!(20201228)

2021年01月19日 | 他紙執筆原稿
◎以下の文は「沖縄の怒りと共に」第114号(うちなんちゅの怒りとともに!三多摩市民の会発行)に寄稿したものです。今号では巻頭に置かれています。また今号のサブタイトルを「『設計変更=不承認』をつらぬこう/勝つ方法はあきらめないこと」としてくださいました。感謝です。(ヤマヒデ)

Ⅰ:コロナ禍で沖縄リアリティが強まった一年
 今回は沖縄防衛局による「変更申請」と、この問題を巡る私なりの問題点を書く。その前にコロナ禍で沖縄リアリティが強まった一年だったことを書き留める。私が沖縄に住み始め、7年が経つ。コロナ禍の今年(2020年)私が、沖縄外にでたのは、正月と、10月の善通寺・境港(8日間)、そして12月の石木・佐賀・諫早(3日間)だけだった。また辺野古テント村も休止状態或いは半休止状態が続き、県外の皆さんとお会いすることもほぼなくなった。
 こうなると嫌でも沖縄で生きていることを自覚せざるをえなくなった。まだまだだが、沖縄でのつき合いを大切にしない限り、生きていけない。私は6月に骨折したこともあり、心底そう思った1年となった。その反面、この国の動向に、より一層注目してきた。

Ⅱ:この国による「変更申請」について
①:沖縄防衛局が出してきた「変更申請」とは?
 私も9月に沖縄県に意見書を書いた。地元住民であることに留意し、観察者であることを自覚して書いた。このため、1500頁と言われていた資料をHPから開いてみた。なんと本文は20頁足らず。まるで詐欺。「1500頁」に気圧されて多くの人が本文を読んでいないのだ。
 本文のタイトルは「埋立地用途変更・設計概要変更 承認申請書」(沖縄防衛局長田中利則/令和2年(引用者註:2020年)4月21日付け)。二つの変更だ。摩訶不思議なことに、聞き慣れない「用途変更」が強調され、肝心な設計概要変更の論拠が一字も記されていない正に怪文書だ。
 用途変更とは何か。公有水面埋立法に基づく用途変更。辺野古川河口に予定されていた「普天間飛行場代替施設建設のための造成用地」を国が勝手(沖縄県の承認を得ず)に辺野古側から埋立工事を始めたため、勝手に辺野古崎付近にこの造成用地を造ったので、今更不要になった。「削除」の2字で終るものを2頁も要し、設計概要の変更の中でも繰り返しこの変更(「削除」)を記している。
 肝心な「設計概要の変更」では、変更に至った論拠が全く示されていない。「変更するに至った経緯」として「埋立承認後に実施した土質調査の結果を踏まえた地盤改良の追加に伴い、設計について再検討し、合理化した」これだけだ。施工方法や施工順序、使用資材の変更などはあるが、「地盤改良の追加」の論拠を何も示さず、全て添付図書でという構成だ。
 私は北上田毅さんの「【解説】辺野古・変更申請書の内容と問題点」を読み、論拠が殆ど示されていないことを知った。だが半信半疑だった。それもあって自分で上記の文を読んだのだ。ゼロだったので絶句。この国は、沖縄県はつべこべ言わずに従えと言っているに等しいのだ。「お前は何様なのだ!! 沖縄を嘗め腐りやがって!!!」と私は思うのだ。
 こんな申請書だから沖縄県は、まともに審査したくてもできない。沖縄防衛局に12月末に改めて不明な点242の質問を出したのだった。

②居直った申請の影で見えてきたこと
 しかし今回の申請書で重要な点が露呈してきた。この設計変更に米軍が関与しているということだ。水陸両用装甲車やLCAC(エアクッション艇)が使う「斜路」の変更にこうある。「埋立承認後に米軍から斜路の向き等について要望があったことを踏まえ、設計について再検討した」と。この一項目だが、極めて重要だ。なぜならば、米軍が米軍基地の設計に関与することは当然だ。当の米軍の大前提は、この基地建設が如何ほどに使えるのか、使えないものになるかの検証だろう。この問題をクリアできずに米軍は、防衛省から頂戴しても、ありがた迷惑を被るに違いない。否、米軍はそんなことを認めまい。だから、どの程度に使えるかで、様々な条件・ペナルティを防衛省に課してくるはずだ。無論、普天間基地の返還はありえまい。  
 私たちは「普天間代替施設」なる言葉に欺されてはならない。代替できない代物だからだ。ここでは大型機の離発着は不可能だ。不同沈下(不均一の沈下)が起こる。滑走路の先端部の沈下は3cm以内(米軍の基準)を遵守できるのか。大地震どころか震度1で崩壊との指摘もある。そんな運用上危なっかしい基地を米軍が使うだろうか。仮に使うとしても限定的だろう。

Ⅲ:名護市長の意見書なるものの問題点
 沖縄県は12月上旬、名護市長に意見書を求めた。渡具知武豊市長は素早い対応を見せた。「辺野古川河口部の造成用地の変更は問題ない」との短い意見書だった。確かにこの限りで言えば問題ないかにみえる。しかし住民の暮しに直結していることが無視されており、12月21日の市議会で否決されたのだ。
 そもそも辺古川河口部を造成用地にする当初案は、大浦湾側から埋立工事に取りかかる計画だった。それが承認申請(2013年12月27日)を受けた後のボーリング調査等で、トンデモナイ軟弱地盤が発覚した。これで大浦湾側からの工事は頓挫した。沖縄防衛局は急遽、沖縄県との協議を経ずに辺野古側から工事を強行。2018年12月14日から埋立工事に着手したのだ。
 渡具知名護市長がこうした経緯を知らないわけもなく、これを「問題ない」というならば、国による違法な(手続きを踏まない)工事を容認することになる。さらに軟弱地盤による土壌の改良工事や工法の「合理化」は、極めて危うい建造物を黙認することになる。住民の福祉の増進を図る市長の資質が根本から問われているのだ。これは基地建設に賛成か反対かの立場を超えた問題だ。大地震、津波、台風の被害の激化・風水害などなどが増幅するかもしれないのだ。
 その上、岸壁ができれば、ドック型揚陸艦や弾薬輸送艦、給油艦も停まる。丘の上の弾薬庫と岸壁の危険物が相乗しないと誰が保障できる。渡具知武豊市長は自分だけの安泰を考えてはならないはずだ。彼は名護市長なのだ。
 軟弱地盤の改良工事とは、海底に7万1千本を超える砂杭を打ち込む。海底には多数の生物が住んでいる。これらを破滅させていくのだ。この結果、海底の中の酸素が失われ、水質は一気に悪化していくだろう。チリビシのアオサンゴをはじめ周辺の珊瑚礁の海をも壊滅させるだろう。こうなれば景観ばかりか、自然環境の多くが失われる。事はジュゴンや珊瑚礁ばかりにとどまらない。
 12月21日の名護市議会で、アオサンゴと長島の洞窟の調査と天然記念物指定を求める決議が可決された。私たち名護市民は、もっともっと自らの身近な自然環境に関心を向け、誇りに思う活動を行うべきだろう。無論、新たな構造物がもたらしかねない危険性について、もっと鋭敏になるべきだろう。普天間基地が日々起こしている問題を宜野湾市民から学ぶことも多数あるのではないか。

Ⅳ:沖縄県と共に歩み出すために
 沖縄県は、沖縄防衛局が出してきた承認申請書を認めないだろう。そうなれば、国は沖縄県を被告とした訴えを起こしてくるだろう。現在の司法状況を鑑みれば、国の主張が優先されていくだろう。闇雲に造成を促進する判決が私たちを待っている。これでは如何ともしがたいのだ。
 どうしたらいいのだろう。その前に、日本政府は何故に「辺野古しかない」と、バカのひとつ覚えを繰り返すのか? ①巨大な利権があるからだろう。それだけか? ②戦後米日関係の中での転換点、96年4月17日の「安保再定義」で確認された米日同盟の約束が96年12月のSACO合意に結実する。これが「普天間基地返還―辺野古移設」だったから。米国に忠誠を尽くす日本政府。③2010年の防衛計画大綱で「琉球諸島防衛」を掲げ、与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島にレーダー基地、ミサイル基地を置き、対中国との先鋒を担うから。④もっとも軟弱地盤などのお陰で、完成したとしても10数年後。お陰で、関連軍事施設の新設・再編は益々全国に拡がる。
このままにしていたら、戦場になるのは沖縄だけじゃない。原発があるところに一撃されたら、終わりだ。2、3カ所やられたら、日本国中、逃げ場は塞がれる。
 この変更申請を止められなければ、最早歯止めを失うだろう。軍事力で儲かるのはごく一部だけ。人々が着実に暮らし続けられる政治を私たちが作りあげていくしかない。沖縄で新基地建設を止めることと、日本で着実に暮らし続けられる政治をつくり出すことは、縦糸と横糸を紡ぐようなものなのだ。もっと分かりやすく言えば、表地と裏地の関係と言ってもいいだろう。
 ここまで書けば、私たちがやるべきこと、皆さんがやるべき事が、見えてくるだろう。私たちの暮らしには平和(不戦)が不可欠なのだ。(2020年12月28日)




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