万葉短歌-悠山人編

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万葉短歌4361 桜花4036

2022年05月16日 | 万葉短歌

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万葉短歌4361 桜花4036

桜花 今盛りなり 難波の海
おしてる宮に きこしめすなへ  大伴家持

4036     万葉短歌4361 ShuJ487 2022-0516-man4361

□さくらばな いまさかりなり なにはのうみ
  おしてるみやに きこしめすなへ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第69首。前歌(4360、長歌)題詞に、「陳私拙懐(ひそかなるせっくゎいを)一首 并短歌」、その短歌二首の第1首。
【訓注】桜花(さくらばな)。おしてる宮(おしてるみや=於之弖流宮)[「照り輝くばかり壮麗な難波の宮…」。集中15か所のほぼすべての<おしてる>訓が、<なには>訓に掛かる]。きこしめすなへ(伎許之売須奈倍)[「<きこしめす>は長歌の<きこしをす>に
同じ。<きこしをす>は古語で、<きこしめす>は普通の形という。ともに最高級の敬語。<なへ>は、二つの事が同時に並行して行なわれる意を示す助詞。<に合へ>の約」]。


万葉短歌4359 筑紫辺に4035

2022年05月15日 | 万葉短歌

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万葉短歌4359 筑紫辺に4035

筑紫辺に 舳向かる船の いつしかも
仕へまつりて 国に舳向かも  若麻続部羊

4035     万葉短歌4359 ShuJ472 2022-0515-man4359

□つくしへに へむかるふねの いつしかも
  つかへまつりて くににへむかも
○若麻続部羊(わかをみべの ひつじ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第67首。左注に、「右一首長柄郡(ながらのこほりの)〔(千葉県長生郡北部)〕上丁若麻続部羊」。第二左注に、「二月九日上総国(かみつふさのくにの)防人部領使(さきもりの ことりづかひ)少目(せうさくゎん)従七位下茨田連(まむたのむらじ)沙弥麻呂(さみまろ)進(たてまつる)歌数十九首 但拙劣歌者不取載之」〔(<十三首>を載せる)〕、その第13首。
【訓注】筑紫(つくし=都久之)。舳向かる(へむかる=敝牟加流)[「<向かる>は<向ける>の東国形」]。船(ふね=布祢)。向かも(むかも=牟可毛)[「<向かむ>の東国形」]。


万葉短歌4358 大君の4034

2022年05月14日 | 万葉短歌

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万葉短歌4358 大君の4034

大君の 命畏み 出で来れば
我の取り付きて 言ひし子なはも  物部竜

4034     万葉短歌4358 ShuJ472 2022-0514-man4358

□おほきみの みことかしこみ いでくれば
  わのとりつきて いひしこなはも
○物部竜(もものべの たつ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第66首。左注に、「右一首種淮郡〔(すゑのこほりの=周淮郡。<千葉県君津市を中心に木更津市の南部、富津市の北部を含めた一帯>)〕上丁物部竜」。4359歌第二左注<十三首>の第12首。
【訓注】大君(おほきみ=於保伎美)。我の(わの=和努)[「<我(わ)に>の訛りか」]。子な(こな=古奈)[「<子ら>の意。…<子>はここは妻…」]。


万葉短歌4357 葦垣の4033

2022年05月13日 | 万葉短歌

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万葉短歌4357 葦垣の4033

葦垣の 隈処に立ちて 我妹子が
袖もしほほに 泣きしぞ思はゆ  刑部千国

4033     万葉短歌4357 ShuJ472 2022-0513-man4357

□あしかきの くまとにたちて わぎもこが
  そでもしほほに なきしぞもはゆ
○刑部千国(おさかべの ちくに)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第65首。左注に、「右一首市原郡(いちはらのこほりの)〔(千葉県市原市の一部)〕上丁刑部直(あたひ)千国」。4359歌第二左注<十三首>の第11首。
【訓注】隈処(くまと=久麻刀)。我妹子(わぎもこ=和芸毛古)。袖もしほほに(そでもしほほに=蘇弖母志保々尓)。[「<しほほに>はぐっしょりと濡れるさま…。<しほしほに>の約で、…集中この例のみ」]。泣きしぞ思はゆ[「<思はゆる>〔でないのは〕・・・東国的用法・・・」]。


万葉短歌4356 我が母の4032

2022年05月12日 | 万葉短歌

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万葉短歌4356 我が母の4032

我が母の 袖もち撫でて 我がからに
泣きし心を 忘らえのかも  物部乎刀良

4032     万葉短歌4356 ShuJ472 2022-0512-man4356

□わがははの そでもちなでて わがからに
  なきしこころを わすらえのかも
○物部乎刀良(もののべの をとら)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第64首。左注に、「右一首山辺郡(やまのへのこほりの)上丁物部乎刀良」。4359歌第二左注<十三首>の第10首。
【訓注】我が母(わがはは=和我波々)。からに(可良尓)[「原因が些細なわりに結果が重大なことを言い表わす語法」。02-0157如此耳故尓(かくのみからに)、04-0624咲之柄尓(ゑまししからに)、など]。忘らえのかも(わすらえのかも=和須良延努可毛)[「<忘らえぬかも>の訛り」]。


万葉短歌4355 外にのみ4031

2022年05月11日 | 万葉短歌

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万葉短歌4355 外にのみ4031

外にのみ 見てや渡らも 難波潟
雲居に見ゆる 島ならなくに  丈部山代

4031     万葉短歌4355 ShuJ472 2022-0511-man4355

□よそにのみ みてやわたらも なにはがた
  くもゐにみゆる しまならなくに
○丈部山代(はせつかべの やましろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第63首。左注に、「右一首武射郡上丁丈部山代」。4359歌第二左注<十三首>の第9首。
【訓注】外(よそ=余曽)。渡らも(わたらも=和多良毛)[「<渡らむ」の東国形」]。難波潟(なにはがた=奈尓波我多)。雲居(くもゐ=久毛為)。


万葉短歌4354 立ち鴨の4030

2022年05月10日 | 万葉短歌

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万葉短歌4354 立ち鴨の4030

立ち鴨の 立ちの騒きに 相見てし
妹が心は 忘れせぬかも  丈部与呂麻呂

4030     万葉短歌4354 ShuJ472 2022-0510-man4354

□たちこもの たちのさわきに あひみてし
  いもがこころは わすれせぬかも
○丈部与呂麻呂(はせつかべの よろまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第62首。左注に、「右一首長狭郡(ながさのこほりの)〔(千葉県鴨川市、安房郡の東北部。ただしこの原稿執筆時現在、安房郡は鋸南町だけで、他は南房総市)〕上丁丈部与呂麻呂」。4359歌第二左注<十三首>の第8首。
【訓注】立ち鴨(たちこも=多知許毛)[「<立つ鴨(かも)>」の訛り]。立ち(〔第2句〕たち=多知)[「防人として出で立つこと」]。


万葉短歌4353 家風は4029

2022年05月09日 | 万葉短歌

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万葉短歌4353 家風は4029

家風は 日に日に吹けど 我妹子が
家言持ぢて 来る人もなし  丸子大歳

4029     万葉短歌4353 ShuJ472 2022-0509-man4353

□いへかぜは ひにひにふけど わぎもこが
  いへごともぢて くるひともなし
○丸子大歳(まろこの おほとし)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第61首。左注に、「右一首朝夷郡(あさひなのこほりの)上丁丸子連(むらじ)大歳」。4359歌第二左注<十三首>の第7首。
【訓注】家風(いへかぜ=伊倍加是)[「故郷のある、東の方から吹いてくる風。集中この例のみ」]。家言持ぢて(いへごともぢて=伊倍其登母遅弖)[「<家言>は家の消息を告げる便り。…<持ぢて>…は一種の訛り…」]。


万葉短歌4352 道の辺の4028

2022年05月08日 | 万葉短歌

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万葉短歌4352 道の辺の4028

道の辺の 茨の末に 延ほ豆の
からまる君を はかれか行かむ  丈部鳥

4028     万葉短歌4352 ShuJ471 2022-0508-man4352

□みちのへの うまらのうれに はほまめの
 からまるきみを はかれかゆかむ
○丈部鳥(つかさべの とり)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第60首。左注に、「右一首天羽郡(あまはのこほりの〔(千葉県富津市の大部分)〕)上丁丈部鳥」。4359歌第二左注<十三首>の第6首。
【訓注】茨(うまら=宇万良)[「<茨(いばら)の古形>」]。延ほ(はほ=波保)[「<延ふ>の連体形の東国形」]。はかれか(波可礼加)[「<はかる>は<はなる>の訛りで、<別る>と同義か」]。


万葉短歌4351 旅衣4027

2022年05月07日 | 万葉短歌

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万葉短歌4351 旅衣4027

旅衣 八重着重ねて 寐寝れども
なほ肌寒し 妹にしあらねば  玉作部国忍

4027     万葉短歌4351 ShuJ471 2022-0507-man4351

□たびころも やへきかさねて いのれども
 なほはださむし いもにしあらねば
○玉作部国忍(たまつくりべの くにおし)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第59首。左注に、「右一首望陁郡(まぐたのこほりの)〔(千葉県君津市と木更津市の一部)〕上丁(じゃうちゃう)玉作部国忍」。4359歌第二左注<十三首>の第5首。
【訓注】旅衣(たびころも=多妣己呂母)[「集中ここだけ」]。寐寝れども(いのれども=伊努礼等母)[「<寐寝(いぬ)れども>の訛り」]。


万葉短歌4350 庭中の4026

2022年05月06日 | 万葉短歌

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万葉短歌4350 庭中の4026

庭中の 阿須波の神に 小柴さし
我れは斎はむ 帰り来までに  若麻続部諸人

4026     万葉短歌4350 ShuJ471 2022-0506-man4350

□にはなかの あすはのかみに こしばさし
 あれはいははむ かへりくまでに
○若麻続部諸人(わかをみべの もろひと)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第58首。左注に、「右一首帳丁(ちゃうのちゃう)若麻続部諸人」。4359歌第二左注<十三首>の第4首。
【訓注】阿須波の神(あすはのかみ=阿須波乃可美)[「…穀物の神大年神(おおとしのかみ)の子…農業神。ここは屋敷神…」]。我れ(あれ=阿例)。
【異説】「我れ」を一人称複数(家族)、「諸人」に父・母・妻などの文字が欠落、などとする異説がある、と依拠本注。


万葉短歌4349 百隈の4025

2022年05月05日 | 万葉短歌

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万葉短歌4349 百隈の4025

百隈の 道は来にしを またさらに 
八十島過ぎて 別れか行かむ  刑部三野

4025     万葉短歌4349 ShuJ471 2022-0505-man4349

□ももくまの みちはきにしを またさらに
 やそしますぎて わかれかゆかむ
○刑部三野(おさかべの みの)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第57首。左注に、「右一首助丁(じょちゃう)刑部直(あたひ)三野」。4359歌第二左注<十三首>の第3首。
【訓注】百隈(ももくま=毛母久麻)[「<隈>は、人目に立たず奥まった恐ろしい場所。ここは道の曲がり角」。01-0017(長歌)道隈(みちのくま)、02-0115道之阿回尓(みちのくまみに)、など]。道(みち=美知)[「上総から難波まで」]。別れか行かむ(わかれかゆかむ=和加例加由可牟)[「<か>は疑問」]。


万葉短歌4348 たらちねの4024

2022年05月04日 | 万葉短歌

2022-0504-man4348
万葉短歌4348 たらちねの4024

たらちねの 母を別れて まこと我れ 
旅の仮廬に 安く寝むかも  日下部三中

4024     万葉短歌4348 ShuJ471 2022-0504-man4348

□たらちねの ははをわかれて まことわれ
 たびのかりほに やすくねむかも
○日下部三中(くさかべの みなか)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第56首。左注に、「右一首国造丁日下部使主三中歌」。4359歌第二左注<十三首>の第2首。
【訓注】たらちねの(多良知祢乃)。母を別れて(ははをわかれて=波々乎和加例弖)[「<別る>は<に>格をとることもあるけれども(19-4247)、今のように<を>格をとるのが習い」。<をわかれ>の用例はほかに、03-0481(長歌)白妙之 手本矣別(しろたへの たもとをわかれ)、15-3594久夜之久妹乎 和可礼伎尓家利(くやしくいもを わかれきにけり)、の2か所]。


万葉短歌4347 家にして4023

2022年05月03日 | 万葉短歌

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万葉短歌4347 家にして4023

家にして 恋ひつつあらずは 汝が佩ける 
大刀になりても 斎ひてしかも  日下部三中父

4023     万葉短歌4347 ShuJ471 2022-0503-man4347

□いへにして こひつつあらずは ながはける
 たちになりても いはひてしかも
○日下部三中父(くさかべの みなかがちち)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第55首。左注に、「右一首国造丁(くにのみやつこの ちゃう)日下部使主(くさかべのおみ)三中之父歌」。4359歌第二左注<十三首>の第1首。ここからは、上総国(かみつふさのくに。安房を含めた千葉県南部一帯)防人歌。
【訓注】汝が佩ける(ながはける=奈我波気流)。大刀(たち=多知)。斎ひ(いはひ=伊波非)。


万葉短歌4346 父母が4022

2022年05月02日 | 万葉短歌

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万葉短歌4346 父母が4022

父母が 頭掻き撫で 幸くあれて
言ひし言葉ぜ 忘れかねつる  丈部稲麻呂

4022     万葉短歌4346 ShuJ459 2022-0502-man4346

□ちちははが かしらかきなで さくあれて
 いひしけとばぜ わすれかねつる
○丈部稲麻呂(はせつかべの いなまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第54首。4346歌第二左注<十首>の第10首。左注に、「右一首丈部稲麻呂」。第二左注に、「二月七日駿河国防人部領使(さきもりの ことりづかひ)守従五位下布勢朝臣人主(ふせのあそみ ひとぬし)実進(まことにたてまつるは)九日歌数廿首 但拙劣歌者不取載之」〔<十首>を載せる〕
【訓注】父母(ちちはは=知々波々)。[以下、すべて訛り。順に、さきくあれと・ことばぞ]幸くあれて(さくあれて=佐久安例弖)・言葉ぜ(けとばぜ=気等婆是)。