
新年度予算案 衆院本会議で可決 国会での修正は29年ぶり NHK 2025年3月4日 21時06分
新年度予算案は、少数与党の自民・公明両党と日本維新の会の合意などを踏まえた修正のうえ、衆議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決されました。政府の当初予算案が国会で修正されるのは29年ぶりです。
新年度予算案は4日の衆議院予算委員会で締めくくりの質疑のあと採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決されました。
委員会では、教育無償化の具体策をはじめ維新の会との合意などを踏まえた自民・公明両党の修正案も可決されました。
そして、一部が修正された予算案は、衆議院本会議に緊急上程されました。
討論で、日本維新の会の岩谷幹事長は「与党・政府との間で真摯(しんし)な協議を重ねた結果、子育てや人への投資の拡充、社会保険料を下げる改革について合意するに至り、関連する修正が加えられた。すべてに賛成ではないが、国民の暮らしを守り、次世代と日本の未来のため、責任ある野党として予算案に賛成する」と強調しました。
一方、立憲民主党の本庄知史氏は「『年収103万円の壁』の複雑怪奇な引き上げと就学支援金の所得制限撤廃という極めて小粒の修正にとどまっている。これまで1円たりとも変えられなかった政府予算案を、29年ぶりの国会修正に持ち込んだことは一定の成果だが、修正を経てもなお賛成できる代物ではない」と指摘しました。
そして採決が行われた結果、予算案は自民・公明両党と維新の会などの賛成多数で可決されて参議院に送られました。
立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、共産党などは反対しました。
予算案は「年収103万円の壁」の見直しで所得税の課税最低限を160万円に引き上げることで税収が減ることから、一般会計の総額が政府案から3400億円余り減額され、およそ115兆2000億円となります。
政府の当初予算案が国会審議で修正されるのは橋本内閣以来29年ぶり、国会での減額の修正は鳩山一郎内閣以来70年ぶりとなります。
予算案は5日と6日の2日間、参議院予算委員会で石破総理大臣とすべての閣僚に出席を求めて質疑が行われます。
参議院では与党が過半数を確保していて、自民・公明両党は少数与党のもと年度内の成立に全力をあげることにしています。
石破首相 維新 前原共同代表に謝意伝える
石破総理大臣は、新年度予算案が衆議院本会議で可決されたあと、各会派の控え室などを回ってあいさつしました。
日本維新の会の部屋では、石破総理大臣が「ご面倒をおかけしました。いろいろお世話になりました」と謝意を伝えると、前原共同代表は「29年ぶりの修正なので重みを持って賛成した。これがスタートなので引き続きよろしくお願いします」と応じていました。
また、自民党の控え室を訪れ、党の執行部や国会対策を担当する議員から拍手で出迎えを受けました。そして、笑顔で写真撮影に応じたあと、議員と握手を交わし「本当に疲れた。ありがとうございました」などと話していました。
《各党反応》
自民 森山幹事長「政策提言真摯に受け止めしっかり修正した」
自民党の森山幹事長は記者団に対し「少数与党として予算審議を続けてきたが、それぞれの会派の政策提言を真摯に受け止めて、修正できるところはしっかり修正した。正直なところ安どしている。予算案を参議院に送付できたのは安住委員長はじめ各会派の理事や委員の理解があったからだ」と述べました。
公明 斉藤代表「与党結束して年度内成立に向け努力したい」
公明党の斉藤代表は記者団に対し「少数与党という状況の中、予算案が衆議院を通過したことは大変喜ばしい。国民生活を守るために必要不可欠な項目が用意され、新年度からの執行が非常に重要なので、与党で結束して年度内の成立に向け努力したい。野党とも協議を誠実に積み重ねながら国会を運営していきたい」と述べました。また、安住予算委員長の委員会運営について「高く評価したい。野党ならば抵抗していくらでも審議を引き延ばせる立場にありながら、しっかり議論を進める姿勢があった」と述べました。
維新 前原共同代表「政策実現これからがスタート」
日本維新の会の前原共同代表は記者団に対し「今回は少数与党の中でわれわれの政策実現と引き換えに大局的な判断をした。教育無償化を『骨太の方針』に書き込み、早急に社会保険料を下げる協議体を動かすなど、政策実現を実のあるものにしていくことを頑張りたい。これからがスタートの思いだ」と述べました。
立民 野田代表「高額療養費制度 戦い続ける」
立憲民主党の野田代表は記者団に「予算委員会の『省庁別審査』を踏まえて、わが党の修正案も提案していたが、委員会で否決され残念だ。予算案の修正の中で求めていた『高額療養費制度』の自己負担の上限引き上げの凍結については、引き続き粘り強く、その実現を目指して戦い続けていきたい」と述べました。
国民 玉木代表「物価高騰対策として不十分な予算案だ」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し「物価高騰対策として不十分な予算案だ。『年収103万円の壁』の見直しについては、一定程度、所得税の課税最低限が引き上げられるが、現役世代、とりわけ中間層に対する支援としては非常に弱い。参議院での議論も非常に大事だと思うので、手取りを増やす経済政策を引き続き求めていきたい」と述べました。
共産 田村委員長「“冷たい予算案”が衆議院を通過」
共産党の田村委員長は記者団に対し「党として組み替え動議も提出して徹底的な論戦をして予算案に反対したが、切実な暮らしの要求が置き去りにされた『冷たい予算案』が衆議院を通過した。自民党政治のどこがゆがんでいるのかという 問題に切り込むことこそいま求められており、参議院の審議でも政治の何を変えることが必要かを示していく」と述べました。
れいわ 山本代表「国民を完全に切り捨てたゴミみたいな予算案」
れいわ新選組の山本代表は記者会見で「日本をさらなる不況に引きずり込む予算案になっている。物価が高くて暮らせない人々を救済することがほぼ含まれておらず、中小企業が倒産しているのを救うための施策も入っていない。自分たちに近いところだけにお金をばらまき、この国の景気を回復させることにはびた一文出さない。国民を完全に切り捨てたゴミみたいな予算案だ」と述べました。
【動画】政治部 並木幸一記者の解説
(動画は2分36秒。データ放送ではご覧になれません)
Q.少数与党で予算審議含めた国会の風景は変わったか?
並木記者
「はい。大きく変わったと思います。与野党で協議を重ねながら合意を形成して決定していく形になりました。野党の予算委員長のもとで省庁ごとに専門的な質疑を行う『省庁別審査』も初めて行われました。与党は、野党と個別に政策協議も行って、政権の姿勢そのものとも言える予算案の修正に至りました。与野党双方からは、これが、国会本来の姿なのかもしれないという声も聞かれました。ただ、野党側からみますと、多数を持っていながら連携して与党に政策転換を迫るというよりも、各党がそれぞれ実現したい政策を前面に出していた印象は否めないと思います」
Q.石破総理は今後政権運営どう進めるのか?
並木記者
「参議院では、与党が多数を占めていますので、まずは、年度内成立に全力をあげることになりますが、懸案がないわけではありません。衆議院では、これから政府が提出した法案の審議が始まりますが、これも、野党の協力がなければ成立しません。ですので、政府・与党としては、法案ごとに協力を取り付けていくことが必要になるわけです。また、政治とカネの問題に端を発した企業・団体献金の扱いについて、今月末までに結論を出すことを与野党で申し合わせていますが、見通しは立っていません。与野党各党が、東京都議選や参議院選挙を意識する中で石破総理にとっては、綱渡りの政権運営が続くことになります」
専門家「野党と個別交渉 毎年やるのは非常に難しい」
中央大学の中北浩爾教授はNHKのインタビューに応じ、自民・公明両党の対応について「野党と個別交渉をやって、結果的に日本維新の会を取り込んだが、非常に苦しく、先が見えない不透明な形で進んできたと言える。与党がこれを毎年、毎年やっていくのは非常に難しいと思う」と述べました。
そのうえで「少数与党の政権では、さまざまな意見が予算や政策として実現する可能性があり、望ましい部分はあるが、部分的な連合で法案や予算案を通していくと短期的な判断が優先され、中長期的な判断は後回しになる」と指摘しました。
一方で「短期的に言えば、手取りが増えたり、高校の授業料が無償化になったりという方向性は国民にとってメリットがあるかもしれないが、財源が十分示されないまま議論が進む傾向にあり、財政規律を損なう形を取ってしまう」と述べました。
また、立憲民主党の安住予算委員長の運営については「全体としては公平な委員会運営を心がけていた。政権を目指す政党として、下手に予算審議を長引かせることは避け、責任ある態度を打ち出したいという立憲民主党の姿勢が安住委員長の仕切りにつながったのではないかと思うが、なかなか国民には伝わっていない」と指摘しました。
注目
◇新年度予算案 政府案からの変更点と修正後のフレーム
「年収103万円の壁」の見直しによる所得税の減収を受けた歳入の減少や、公立高校の無償化などにかかる費用による歳出の増加により、歳入・歳出両面に影響が出たことに対応し政府案から修正されました。
【歳入】
与野党間の協議を通じて、「年収の壁」の見直しで所得税の課税最低限を政府案の123万円から160万円に引き上げることなどによって税収が6210億円減るとしています。
一方で基金からの返納金などによって税外収入を2793億円増やして一時的に財源を確保するとともに、国債の発行を19億円減らすなどの調整を行う結果、歳入全体の減少幅は3437億円となります。
【歳出】
与野党間の協議を通じて
▽公立高校の実質的な無償化などに必要となる1064億円のほか
▽「高額療養費制度」の負担上限額の引き上げをめぐり長期的に治療を続ける患者については自己負担を据え置くとした修正に伴い55億円を積み増しました。
▽地方交付税交付金は所得税の減収に連動して2056億円減りますが、地方財政には影響が出ないよう措置を取るとしています。
▽政府案では1兆円としていた予備費のうち、2500億円の計上を見送ります。
【修正後のフレーム】
この結果、修正後の予算案では、一般会計の総額は政府案の115兆5415億円から3437億円減り、115兆1978億円となります。減額されるものの、当初予算案としては初めて115兆円を超え、過去最大です。
《歳入》
▽「年収の壁」引き上げに伴う減収を反映した税収は77兆8190億円(-6210億)になると見込んでいます。堅調な企業業績などを背景に過去最大となります。
▽不足する財源をまかなうため国債は新たに28兆6471億円(-19億)発行する計画です。
《歳出》
▽高齢化の影響で社会保障費が38兆2833億円(+55億)
▽防衛力の抜本的な強化に伴い防衛関係費が8兆6691億円(±0)
いずれも過去最大となっています。
▽地方交付税交付金は18兆8728億円(ー2056億)
▽国債の償還や利払いにあてる国債費は28兆2179億円(±0)
▽予備費は7500億円(-2500億)となります。
石破総理大臣は4日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「いろいろな野党の主張も取り入れながら、時間も中身も熟議の国会にふさわしいものになった。試行錯誤、暗中模索のようなところがあったが、国民に納得してもらえるよう参議院の審議にさらに謙虚に真摯に取り組みたい。その結果として早期の成立となるよう一生懸命努めたい」と述べました。
また、野党の要望を取り入れた予算案の修正が財政規律の緩みにつながらないか問われたのに対し「指摘はあるとは思うが予算案の見直しを望む国民もいる。修正がそのまま財政規律の緩みにつながるということではなく、懸念があればこそ歳入、歳出の見直しにさらに努力しなければならない。政府としてよく配意していきたい」と述べました。
法案所管の村上総務相が退席 議事が一時停止
4日の衆議院本会議では、修正された新年度予算案が可決されたあと、午後4時半ごろから地方税法の改正案の審議が行われました。
立憲民主党の松尾明弘議員による討論が始まったところで、法案を所管する村上総務大臣が閣僚席から離れていることに気付いた議員らが声をあげ、議事が一時止まりました。衆議院の事務総長から事情を聴いた額賀衆議院議長が「総務大臣はやむをえない事情で退席しているのでしばらくお待ちください」と説明しました。
その後、議場に戻った村上大臣は議長から促されて発言し「大変、失礼した。英語で言うと『ネイチャー・コールズ・ミー』だったものでお許しください。どうしても我慢できなかったので失礼した」などと述べました。
村上大臣の発言を受けて、額賀議長が「議事を再開する。こういうことが再び起こることがないよう、よく事務方と相談し、粗相のないようにしたい」と述べ、およそ7分後に議事が再開されました。
衆議院議院運営委員会は本会議のあと、急きょ理事会を開きました。そして、衆議院の事務総長から当時の状況について説明を受けました。
それによりますと、村上大臣は、トイレに行くため衆議院の事務局に申し出て、その内容が、額賀議長と浜田議院運営委員長に伝えられ、閣僚席を離れたということです。
理事会では、立憲民主党から「なぜ法案を所管する大臣が不在の中で、議事を進めようとしたのか」などという指摘が出されました。そして、今後、所管する法案を審議する本会議中に、閣僚がトイレに行く際の議事の取り扱いを協議することになりました。
新年度予算案は、少数与党の自民・公明両党と日本維新の会の合意などを踏まえた修正のうえ、衆議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決されました。政府の当初予算案が国会で修正されるのは29年ぶりです。
新年度予算案は4日の衆議院予算委員会で締めくくりの質疑のあと採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決されました。
委員会では、教育無償化の具体策をはじめ維新の会との合意などを踏まえた自民・公明両党の修正案も可決されました。
そして、一部が修正された予算案は、衆議院本会議に緊急上程されました。
討論で、日本維新の会の岩谷幹事長は「与党・政府との間で真摯(しんし)な協議を重ねた結果、子育てや人への投資の拡充、社会保険料を下げる改革について合意するに至り、関連する修正が加えられた。すべてに賛成ではないが、国民の暮らしを守り、次世代と日本の未来のため、責任ある野党として予算案に賛成する」と強調しました。
一方、立憲民主党の本庄知史氏は「『年収103万円の壁』の複雑怪奇な引き上げと就学支援金の所得制限撤廃という極めて小粒の修正にとどまっている。これまで1円たりとも変えられなかった政府予算案を、29年ぶりの国会修正に持ち込んだことは一定の成果だが、修正を経てもなお賛成できる代物ではない」と指摘しました。
そして採決が行われた結果、予算案は自民・公明両党と維新の会などの賛成多数で可決されて参議院に送られました。
立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、共産党などは反対しました。
予算案は「年収103万円の壁」の見直しで所得税の課税最低限を160万円に引き上げることで税収が減ることから、一般会計の総額が政府案から3400億円余り減額され、およそ115兆2000億円となります。
政府の当初予算案が国会審議で修正されるのは橋本内閣以来29年ぶり、国会での減額の修正は鳩山一郎内閣以来70年ぶりとなります。
予算案は5日と6日の2日間、参議院予算委員会で石破総理大臣とすべての閣僚に出席を求めて質疑が行われます。
参議院では与党が過半数を確保していて、自民・公明両党は少数与党のもと年度内の成立に全力をあげることにしています。
石破首相 維新 前原共同代表に謝意伝える
石破総理大臣は、新年度予算案が衆議院本会議で可決されたあと、各会派の控え室などを回ってあいさつしました。
日本維新の会の部屋では、石破総理大臣が「ご面倒をおかけしました。いろいろお世話になりました」と謝意を伝えると、前原共同代表は「29年ぶりの修正なので重みを持って賛成した。これがスタートなので引き続きよろしくお願いします」と応じていました。
また、自民党の控え室を訪れ、党の執行部や国会対策を担当する議員から拍手で出迎えを受けました。そして、笑顔で写真撮影に応じたあと、議員と握手を交わし「本当に疲れた。ありがとうございました」などと話していました。
《各党反応》
自民 森山幹事長「政策提言真摯に受け止めしっかり修正した」
自民党の森山幹事長は記者団に対し「少数与党として予算審議を続けてきたが、それぞれの会派の政策提言を真摯に受け止めて、修正できるところはしっかり修正した。正直なところ安どしている。予算案を参議院に送付できたのは安住委員長はじめ各会派の理事や委員の理解があったからだ」と述べました。
公明 斉藤代表「与党結束して年度内成立に向け努力したい」
公明党の斉藤代表は記者団に対し「少数与党という状況の中、予算案が衆議院を通過したことは大変喜ばしい。国民生活を守るために必要不可欠な項目が用意され、新年度からの執行が非常に重要なので、与党で結束して年度内の成立に向け努力したい。野党とも協議を誠実に積み重ねながら国会を運営していきたい」と述べました。また、安住予算委員長の委員会運営について「高く評価したい。野党ならば抵抗していくらでも審議を引き延ばせる立場にありながら、しっかり議論を進める姿勢があった」と述べました。
維新 前原共同代表「政策実現これからがスタート」
日本維新の会の前原共同代表は記者団に対し「今回は少数与党の中でわれわれの政策実現と引き換えに大局的な判断をした。教育無償化を『骨太の方針』に書き込み、早急に社会保険料を下げる協議体を動かすなど、政策実現を実のあるものにしていくことを頑張りたい。これからがスタートの思いだ」と述べました。
立民 野田代表「高額療養費制度 戦い続ける」
立憲民主党の野田代表は記者団に「予算委員会の『省庁別審査』を踏まえて、わが党の修正案も提案していたが、委員会で否決され残念だ。予算案の修正の中で求めていた『高額療養費制度』の自己負担の上限引き上げの凍結については、引き続き粘り強く、その実現を目指して戦い続けていきたい」と述べました。
国民 玉木代表「物価高騰対策として不十分な予算案だ」
国民民主党の玉木代表は記者団に対し「物価高騰対策として不十分な予算案だ。『年収103万円の壁』の見直しについては、一定程度、所得税の課税最低限が引き上げられるが、現役世代、とりわけ中間層に対する支援としては非常に弱い。参議院での議論も非常に大事だと思うので、手取りを増やす経済政策を引き続き求めていきたい」と述べました。
共産 田村委員長「“冷たい予算案”が衆議院を通過」
共産党の田村委員長は記者団に対し「党として組み替え動議も提出して徹底的な論戦をして予算案に反対したが、切実な暮らしの要求が置き去りにされた『冷たい予算案』が衆議院を通過した。自民党政治のどこがゆがんでいるのかという 問題に切り込むことこそいま求められており、参議院の審議でも政治の何を変えることが必要かを示していく」と述べました。
れいわ 山本代表「国民を完全に切り捨てたゴミみたいな予算案」
れいわ新選組の山本代表は記者会見で「日本をさらなる不況に引きずり込む予算案になっている。物価が高くて暮らせない人々を救済することがほぼ含まれておらず、中小企業が倒産しているのを救うための施策も入っていない。自分たちに近いところだけにお金をばらまき、この国の景気を回復させることにはびた一文出さない。国民を完全に切り捨てたゴミみたいな予算案だ」と述べました。
【動画】政治部 並木幸一記者の解説
(動画は2分36秒。データ放送ではご覧になれません)
Q.少数与党で予算審議含めた国会の風景は変わったか?
並木記者
「はい。大きく変わったと思います。与野党で協議を重ねながら合意を形成して決定していく形になりました。野党の予算委員長のもとで省庁ごとに専門的な質疑を行う『省庁別審査』も初めて行われました。与党は、野党と個別に政策協議も行って、政権の姿勢そのものとも言える予算案の修正に至りました。与野党双方からは、これが、国会本来の姿なのかもしれないという声も聞かれました。ただ、野党側からみますと、多数を持っていながら連携して与党に政策転換を迫るというよりも、各党がそれぞれ実現したい政策を前面に出していた印象は否めないと思います」
Q.石破総理は今後政権運営どう進めるのか?
並木記者
「参議院では、与党が多数を占めていますので、まずは、年度内成立に全力をあげることになりますが、懸案がないわけではありません。衆議院では、これから政府が提出した法案の審議が始まりますが、これも、野党の協力がなければ成立しません。ですので、政府・与党としては、法案ごとに協力を取り付けていくことが必要になるわけです。また、政治とカネの問題に端を発した企業・団体献金の扱いについて、今月末までに結論を出すことを与野党で申し合わせていますが、見通しは立っていません。与野党各党が、東京都議選や参議院選挙を意識する中で石破総理にとっては、綱渡りの政権運営が続くことになります」
専門家「野党と個別交渉 毎年やるのは非常に難しい」
中央大学の中北浩爾教授はNHKのインタビューに応じ、自民・公明両党の対応について「野党と個別交渉をやって、結果的に日本維新の会を取り込んだが、非常に苦しく、先が見えない不透明な形で進んできたと言える。与党がこれを毎年、毎年やっていくのは非常に難しいと思う」と述べました。
そのうえで「少数与党の政権では、さまざまな意見が予算や政策として実現する可能性があり、望ましい部分はあるが、部分的な連合で法案や予算案を通していくと短期的な判断が優先され、中長期的な判断は後回しになる」と指摘しました。
一方で「短期的に言えば、手取りが増えたり、高校の授業料が無償化になったりという方向性は国民にとってメリットがあるかもしれないが、財源が十分示されないまま議論が進む傾向にあり、財政規律を損なう形を取ってしまう」と述べました。
また、立憲民主党の安住予算委員長の運営については「全体としては公平な委員会運営を心がけていた。政権を目指す政党として、下手に予算審議を長引かせることは避け、責任ある態度を打ち出したいという立憲民主党の姿勢が安住委員長の仕切りにつながったのではないかと思うが、なかなか国民には伝わっていない」と指摘しました。
注目
◇新年度予算案 政府案からの変更点と修正後のフレーム
「年収103万円の壁」の見直しによる所得税の減収を受けた歳入の減少や、公立高校の無償化などにかかる費用による歳出の増加により、歳入・歳出両面に影響が出たことに対応し政府案から修正されました。
【歳入】
与野党間の協議を通じて、「年収の壁」の見直しで所得税の課税最低限を政府案の123万円から160万円に引き上げることなどによって税収が6210億円減るとしています。
一方で基金からの返納金などによって税外収入を2793億円増やして一時的に財源を確保するとともに、国債の発行を19億円減らすなどの調整を行う結果、歳入全体の減少幅は3437億円となります。
【歳出】
与野党間の協議を通じて
▽公立高校の実質的な無償化などに必要となる1064億円のほか
▽「高額療養費制度」の負担上限額の引き上げをめぐり長期的に治療を続ける患者については自己負担を据え置くとした修正に伴い55億円を積み増しました。
▽地方交付税交付金は所得税の減収に連動して2056億円減りますが、地方財政には影響が出ないよう措置を取るとしています。
▽政府案では1兆円としていた予備費のうち、2500億円の計上を見送ります。
【修正後のフレーム】
この結果、修正後の予算案では、一般会計の総額は政府案の115兆5415億円から3437億円減り、115兆1978億円となります。減額されるものの、当初予算案としては初めて115兆円を超え、過去最大です。
《歳入》
▽「年収の壁」引き上げに伴う減収を反映した税収は77兆8190億円(-6210億)になると見込んでいます。堅調な企業業績などを背景に過去最大となります。
▽不足する財源をまかなうため国債は新たに28兆6471億円(-19億)発行する計画です。
《歳出》
▽高齢化の影響で社会保障費が38兆2833億円(+55億)
▽防衛力の抜本的な強化に伴い防衛関係費が8兆6691億円(±0)
いずれも過去最大となっています。
▽地方交付税交付金は18兆8728億円(ー2056億)
▽国債の償還や利払いにあてる国債費は28兆2179億円(±0)
▽予備費は7500億円(-2500億)となります。
石破総理大臣は4日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「いろいろな野党の主張も取り入れながら、時間も中身も熟議の国会にふさわしいものになった。試行錯誤、暗中模索のようなところがあったが、国民に納得してもらえるよう参議院の審議にさらに謙虚に真摯に取り組みたい。その結果として早期の成立となるよう一生懸命努めたい」と述べました。
また、野党の要望を取り入れた予算案の修正が財政規律の緩みにつながらないか問われたのに対し「指摘はあるとは思うが予算案の見直しを望む国民もいる。修正がそのまま財政規律の緩みにつながるということではなく、懸念があればこそ歳入、歳出の見直しにさらに努力しなければならない。政府としてよく配意していきたい」と述べました。
法案所管の村上総務相が退席 議事が一時停止
4日の衆議院本会議では、修正された新年度予算案が可決されたあと、午後4時半ごろから地方税法の改正案の審議が行われました。
立憲民主党の松尾明弘議員による討論が始まったところで、法案を所管する村上総務大臣が閣僚席から離れていることに気付いた議員らが声をあげ、議事が一時止まりました。衆議院の事務総長から事情を聴いた額賀衆議院議長が「総務大臣はやむをえない事情で退席しているのでしばらくお待ちください」と説明しました。
その後、議場に戻った村上大臣は議長から促されて発言し「大変、失礼した。英語で言うと『ネイチャー・コールズ・ミー』だったものでお許しください。どうしても我慢できなかったので失礼した」などと述べました。
村上大臣の発言を受けて、額賀議長が「議事を再開する。こういうことが再び起こることがないよう、よく事務方と相談し、粗相のないようにしたい」と述べ、およそ7分後に議事が再開されました。
衆議院議院運営委員会は本会議のあと、急きょ理事会を開きました。そして、衆議院の事務総長から当時の状況について説明を受けました。
それによりますと、村上大臣は、トイレに行くため衆議院の事務局に申し出て、その内容が、額賀議長と浜田議院運営委員長に伝えられ、閣僚席を離れたということです。
理事会では、立憲民主党から「なぜ法案を所管する大臣が不在の中で、議事を進めようとしたのか」などという指摘が出されました。そして、今後、所管する法案を審議する本会議中に、閣僚がトイレに行く際の議事の取り扱いを協議することになりました。