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フクロウの街 18

2016-10-01 11:18:02 | ヒューマン
靖子は食事を一緒にする事に何の違和感もなく、ごく自然に行動した自分に驚く位だった。
懐かしいとか、知っていたという感情に近い嬉しさなのだが、もちろん初対面で過去に巡り会った記憶はない。
「緒方さん、私の部屋は広すぎて、そこしか空いてなかったもので、それで部屋で食事をしませんか、決して危ない事はありませんから」
「そうですね・・その方が落ち着けるかしら」
「よかった、早速食事の支度を頼んできます」
村井は急ぎ部屋に戻り、靖子も薄化粧をして身仕度を整えた。
40分程して靖子が村井の部屋を訪ねてみると、用意は全て済んで村井は古い映画を観ていた。
「どうぞこちらへ」
「お邪魔します、広いですね」
「そうなんですよ、だから一人だと落ち着かなくて、来て頂いてとても感謝しています」
「そんな、私も嬉しく思いますけど・・村井さん、以前何処でお会いしたことありませんか?」
「ないですけど、でも不思議ですね、私も初対面の気がしなくて、つい馴れ馴れしく接してしまって」
「やはりそうでしたか、村井さんは東京生まれなんですか」
「はい、新宿区でした」
「あら、私は中落合に住んでいましたわ」
「そうですか、私は大学時代まで大久保にいました」
「近いですね、大久保は父が仕事で通っていたのを覚えています」
「現在は行かれていないのですか」
「だいぶ以前に両親共亡くなりました」
「それはどうも・・」
「村井さんのご家族は?」
「今は娘と二人です」
「じゃあ仲良しなんでしょうね」
「いや、この頃は難しくなってきました」
靖子は事情を聞いていると、余計身内の様な気になってきた。
1時間程食事を一緒にして部屋に戻ったが、落ち着かなかった。
翌日靖子は帰る前に村井と会い、お互いの連絡先を確認した。
今後会わなければならない時がくると、直感が働いたからなのだ。

山路はこの頃、靖子の考えの変化に困惑していた。




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