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フクロウの街 9

2016-04-13 12:29:39 | ヒューマン


「何かやりにくい事でもあるのですか?」
「いえ、問題は特にないんです、山路さんには本当に良くして頂いて助かっています」
「いや僕もまだ入ったばかりでうまく教えられず、申し訳ない思いです」
「そんなことありませんわ、とてもお上手です」
彼女の視線がまっすぐ向かってくると、山路は何も抵抗できない気分になってくる。
「実は所長から出張の話があったのですが」
「出張ですか、どちらに?」
「台湾と中国もあると言ってましたけど」
「海外ですか」
「私、英語ができるので」
「そうですか、通訳の仕事かな」
「秘書兼通訳だそうです」
「それは結構な事ではないですか」
「それはそうなんですけれど」
「何か問題でもあるのですか?」
「いえ、特に・・なんて言うか、いいお話しだと思うのですが、何かすっきりしないんです」
「信用しきれないのですか」
「そうかも知れません」
「緒方さん、それなら断った方がいいですよ、実は私も納得していないので、二股かけているんです」
「そうなんですか、あぁ話してよかった、ほっとしました」
と言った緒方靖子と目が合った時、山路はずっと以前彼女に会った気がした。
すぐに帰る気配もなく、飲みに誘うとあっさり了解したので、銀座まで繰り出す為タクシーに乗った。
コリドー街近くの落ち着いた居酒屋を知っていたので入ったが、混んでいて腰がぴったりつく位の狭い場所に座らされた。
山路はあまり飲めないが、彼女は全く顔色を変えずに飲んでいる。
「緒方さんはおひとりなんですか?」
「靖子でいいですよ、ええずっと独身なんです」
「靖子さんなら引く手あまたでしょう」
「私、結婚に向かないの」


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