個展終了翌日の日曜日は織りの実習「布を織る」でした。
今期3人の方も無事織り終えることができました。
受講者のみなさんももちろんですが、私もこの瞬間ホッとします。
設計通りの方、設計図を見ながら多少の変更を加えて織った方、メジャーは最初だけで、あとはほとんど即興で織った方、三人三様の布になりました。
真綿から自分でつむいだ白い糸と、工房にある色糸を自由に選んでいただきデザインを考えてもらいますが、真綿の太い糸の表情、面白さを見てもらうことが大きな目的です。
織り上げた布は私の方で湯通しをして糊を抜き、塾最終回にみなさんにアイロン仕上げをしてもらい切り離します。
この時3寸ほどの手紬布として完成します。
湯通しはヒタヒタぐらいのお湯の中でまず糊(布海苔、生麩)をふやかすために軽く押してしばらく置きます(あまり長くすると糊が逆に戻ってしまいます)。その後、水を替えて2度すすぎます。軽く脱水し干します。
紬は水の中で、木綿やウール、麻などのように糸そのものが縮むことはほとんどないのですが、糸にウェーブがあり伸縮性があります。
湯通し後はスチームアイロンでほぼ元のサイズにします。
ゴワゴワした硬い紬ではなく、ふっくらした柔らかな紬になります。
よく染めの着物を"やわらかもの"といい、織りは"かたもの"と言われますが、私の頭の中では紬は柔らかいものです。(^^ゞ
いえ、本来の紬は、というべきかもしれませんが。。
硬い紬があったとするなら、強い糊が落とされてないか、細い糸を使い、織り密度が高く、糸の撚りも強いものです。
密度の高いものはいくら着ても、いくら洗っても柔らかくはなりません。
本来の紬は着るほどに、洗うほどに柔らかく体に馴染み、着やすいものです。
それでいて適度な張り感もあり、まとわりついてくるような感じはありません。
よく見もしない、よく分からないうちに、着物の知識(!?)として、染め物は柔らかく、紬は硬いというようま固定観念を持たないことが大切です。
硬そうで柔らかいのが本来の紬、柔らかそうでいて、密度高く、硬く織られているのが染生地というものだと思います。
タテ、ヨコのテンションを強く織ったものは硬く、収縮も強いです。
また、そうかと言ってゆるゆるのものは布として自立しません。
程よいテンションで糸を巻き、織ることが紬では大事です。
昔のいいものは、染め生地もしなやかでふっくらしているのは糸に無理がかかってなかったからでしょう。
布を見れば、あるいは布にに触れれば、織りでも染でも生地質、着心地の良さなどはわかります。感覚のいい人は瞬時にそれを判断できます。
先入観でものを見るのではなく、素直な感覚を意識して磨いていきたいものです。
中野みどりHP