信濃毎日新聞より転載
40年超の原発 再稼働は容認できない
何のための運転延長認可なのか。原発の安全性を確保する「40年ルール」を形骸化させる決定だ。
原子力規制委員会がきのう、関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の運転延長を認可した。2基は運転開始から40年を超えた老朽原発である。
東京電力福島第1原発の事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を寿命面から原則40年に定めた。最長20年の運転延長はあくまで特例だったはずだ。
運転を延長するには、新規制基準の適合性審査に加え、老朽化対策に特化した審査に合格する必要がある。関西電力は1、2号機の安全対策に計2千億円以上を投じる計画だという。規制委の田中俊一委員長は「お金をかければ技術的な点は克服できる」との考えを示している。
そこまでのコストをかけても、設備が比較的新しい原発より安全性が高まる保障はない。
例えばケーブルの防火性能だ。
1、2号機に使われている全長1300キロの電気ケーブルは、1980(昭和55)年以降の原発に比べ、火災防護性能に劣る。関電は6割を燃えにくい素材に交換し、4割を防火シートで包む対策を提示して、規制委は了承した。
再稼働が申請されている原発は両基を含め21基ある。規制委が原発の安全性確保に万全を期すのなら、老朽原発の運転延長を容認すべきではない。
新基準施行時点で40年が近づいていた高浜1、2号機は、特例で延長認可を受ける期限が今年7月7日まで猶予されていた。規制委が両基の審査を先行したのは、期限を考慮したにすぎない。関電は再稼働で月に90億円程度の収益改善が期待できるという。電力会社の経営を安全性確保より優先したとしたら許されない。
政府は昨年、老朽原発の運転継続を前提に、2030年の電源構成比率を原発20〜22%と決めている。規制委の今回の認可で、老朽原発の運転延長を目指す動きが加速する可能性がある。
脱原発を求める世論は根強い。「40年ルール」を厳密に運用すれば、法定寿命を迎えた原発が自然に廃炉になるはずだった。原子炉等規制法を改正した当時の民主党政権は、原発について意見を聞く会や討論型世論調査を実施して、2030年代原発ゼロを目指す方針を決めている。
安倍晋三政権は方針転換に当たって、国民の声をどう反映させたのか。厳しく問わねばならない。
(6月21日)
40年超の原発 再稼働は容認できない
何のための運転延長認可なのか。原発の安全性を確保する「40年ルール」を形骸化させる決定だ。
原子力規制委員会がきのう、関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の運転延長を認可した。2基は運転開始から40年を超えた老朽原発である。
東京電力福島第1原発の事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を寿命面から原則40年に定めた。最長20年の運転延長はあくまで特例だったはずだ。
運転を延長するには、新規制基準の適合性審査に加え、老朽化対策に特化した審査に合格する必要がある。関西電力は1、2号機の安全対策に計2千億円以上を投じる計画だという。規制委の田中俊一委員長は「お金をかければ技術的な点は克服できる」との考えを示している。
そこまでのコストをかけても、設備が比較的新しい原発より安全性が高まる保障はない。
例えばケーブルの防火性能だ。
1、2号機に使われている全長1300キロの電気ケーブルは、1980(昭和55)年以降の原発に比べ、火災防護性能に劣る。関電は6割を燃えにくい素材に交換し、4割を防火シートで包む対策を提示して、規制委は了承した。
再稼働が申請されている原発は両基を含め21基ある。規制委が原発の安全性確保に万全を期すのなら、老朽原発の運転延長を容認すべきではない。
新基準施行時点で40年が近づいていた高浜1、2号機は、特例で延長認可を受ける期限が今年7月7日まで猶予されていた。規制委が両基の審査を先行したのは、期限を考慮したにすぎない。関電は再稼働で月に90億円程度の収益改善が期待できるという。電力会社の経営を安全性確保より優先したとしたら許されない。
政府は昨年、老朽原発の運転継続を前提に、2030年の電源構成比率を原発20〜22%と決めている。規制委の今回の認可で、老朽原発の運転延長を目指す動きが加速する可能性がある。
脱原発を求める世論は根強い。「40年ルール」を厳密に運用すれば、法定寿命を迎えた原発が自然に廃炉になるはずだった。原子炉等規制法を改正した当時の民主党政権は、原発について意見を聞く会や討論型世論調査を実施して、2030年代原発ゼロを目指す方針を決めている。
安倍晋三政権は方針転換に当たって、国民の声をどう反映させたのか。厳しく問わねばならない。
(6月21日)
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