伊藤 千尋さんFBより
昨日は日本記者クラブで開かれた記者会見に行きました。北欧5か国の駐日大使が一堂に会して、それぞれのお国の特色を紹介するユニークな企画です。
フィンランド大使は子どもたちに自由な時間を保証した結果、学力が世界一になったことを誇りました。アイスランド大使は、日本の技術を採用して地熱発電の大国となり、それをフィリピンなど途上国支援に活かしていることを語りました。...
目立ったのがデンマーク大使です。お笑い芸人のようなくだけた調子ながら格調高く「わが国では女性がリードすることで社会が変わり、世界で最も幸せな国になりました」と切り出しました。
男女に平等なチャンスを与え、女性のキャリア維持のため市町村が保育園を完璧に用意することを法制化し、産後も復職できる制度上の保証をするなど女性のためのインフラ整備をしっかりするなど男女平等を前提に社会が構成されているといいます
彼は実にカラフルなサッカーボールを取りだしました。「1.貧困撲滅」「16.平和・正義」など17の国連の目標がマークとともに描かれています。その中に「5.男女平等」もあります。デンマークはこれを他国に先駆けて達成したのだと誇るのです。
「このボール、欲しい方、いますか?」と彼が言ったので、僕はすかさず手を挙げました。こうしたときについ遠慮するのが日本人の体質ですが、海外ではこんなとき全員がサッと手を挙げるものです。話を終えて着席する直前、彼は僕をめがけて演台からサッカーボールをポンと投げてくれました。実にうれしいクリスマス・プレゼントです。
デンマーク大使は日本記者クラブあてに色紙を書きました。デンマーク語で「旅することは、生きること」と書いたのです。これって、僕の人生のモットーそのものです。
その足で、横浜港の大桟橋に向かいました。船で世界一周するNGOピースボートの忘年会が船上で開かれるのに参加したのです。ピースボートこそ「旅することは、生きること」を地で行くような人々の集まりです。
もちろん、このサッカーボールを会場に持参しました。ピースボートは世界各地に寄港したさいに現地の人々と交流し子どもたちとサッカーもしていますが、そのさいにピースボートのロゴを入れたこのようなボールを作って使ってみてはどうかと提案したのです。
忘年会に集まったのは、航海中に乗客に講演をする「水先案内人」を務める40人とピースボートのスタッフです。鎌田慧、豊田直巳、桃井和馬、ジョン・ミッチェル氏ら「水先案内人」、ノッピー、千ちゃん、モリヨウ、新井君、ゴンちゃん、直君、モエ、メリーさん、都、夏ちゃん、ゆうこっちらスタッフと久しぶりの邂逅を楽しみつつ、明日また世界一周に出航する準備に追われる船のレストランでワインと日本酒を手に乾杯しました。
セクシーなドレス姿の女性が奏でるピアノにうっとりしましたが、振り返った顔を見ると船上で歌の企画をいっしょにやってくれたチャキでした。ピースボートの女性スタッフはデンマークの社会さながら実に豊かな能力を秘めているのです。
その一人、サルサの美和子が宴の最後でピースボートの目的を熱く語りました。そのさいに画面に出されたのが、このサッカーボールに描かれた国連の17の目標のロゴでした。画面のすぐ横のテーブルに置かれたボールを見ながら、ワインと焼酎と日本酒を交互に煽りつつ、僕は至福の思いに浸っていました。久しぶりに飲んだので酔うかと思ったら、港の夜風がさましてくれました。
概要
持続可能な開発目標(SDGs)に関する初のグローバル報告書は、2030年に向けた私たちの集団的な取り組みの出発点として、世界の現状を把握するものです。報告書では、いくつかの深刻なギャップと課題を明らかにするための事例として、グローバル指標枠組みの中から、データが入手できる主な指標について分析を加えています。国連統計委員会が2016年3月に合意したSDG指標の一覧は、手法やデータ入手可能性の向上に合わせて精緻化、改善されることになっています。
どのような旅にも、始まりと終わりがあります。旅の行程を描き、その途中に重要な節目を設けるためには、信頼できる詳細なデータが適時に利用できなければなりません。このグローバル指標に関するデータ要件は、SDGsそれ自体とほぼ同じく、過去に類を見ないものであるため、すべての国にとって重大な課題となります。とはいえ、各国の統計能力構築を通じ、これら要件を満たすことは、現状を把握し、前途を見極め、私たちの集団的なビジョンを現実に近づけるうえで不可欠な一歩です。
目標1:あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
目標1は、今後15年間に、極度の貧困を含め、あらゆる形態の貧困に終止符を打つことを求めています。最貧層、最も脆弱な立場にある人々を含め、世界各地の人々が、基本的な生活水準と社会的保護の恩恵を受けられるようにすべきです。・・・・
目標2:飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する
目標2は2030年までに、飢餓とあらゆる形態の栄養不良に終止符を打ち、持続可能な食料生産を達成することをねらいとしています。根底にあるのは、誰もが栄養のある食料を十分に手にできるべきだという考え方ですが、そのためには、持続可能な農業を幅広く推進し、農業生産性を2倍に高め、投資を増額するとともに、食料市場を適切に機能させることが必要となります。・・・・
目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
目標3には、リプロダクティブ・ヘルスと母子保健を増進し、主要な感染症の流行に終止符を打ち、非感染性疾患と環境要因による疾患を減らし、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成し、すべての人に安全で手ごろな価格の有効な医薬品とワクチンへのアクセスを確保することにより、あらゆる年齢のすべての人々の健康と福祉を確保するというねらいがあります。・・・・
目標4:すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
目標4は、基本的な能力とより高次の能力の習得、技術・職業教育と訓練、高等教育へのアクセスの拡大と公平化、生涯訓練、 および、十分な役割を果たし、社会に貢献するために必要な知識、能力、価値観に焦点を絞るものです。・・・・
目標5:ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
目標5のねらいは、女性と女児がその潜在能力を十分に発揮できるよう、そのエンパワーメントを図ることにありますが、そのためには、有害な慣行を含め、女性と女児に対するあらゆる形態の差別と暴力をなくさねばなりません。女性と女児が、性と生殖に関する健康やリプロダクティブ・ライツを手に入れるためのあらゆる機会を与えられ、その無給労働に対する正当な認識を獲得し、生産資源を十分に利用し、かつ、政治、経済、公的生活に男性と平等に参加できるようにすることが、この目的の趣旨といえます。・・・・・
目標6:すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する
目標6は飲料水、衛生施設、衛生状態の領域を越え、水源の質と持続可能性にも取り組むものとなっています。この目標の達成は、人間と地球の生存に欠かせませんが、そのためには、水と衛生の管理改善のための国際協力を拡大し、地域社会の支援を取り付けることが必要となります。・・・・
目標7:すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する
目標7は、国際協力の強化や、クリーンエネルギーに関するインフラと技術の拡大などを通じ、エネルギーへのアクセス拡大と、再生可能エネルギーの使用増大を推進しようとするものです。・・・・
目標8:すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する
継続的、包摂的かつ持続可能な経済成長は、グローバルな繁栄の前提条件です。目標8は、すべての人々に生産的な完全雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を提供しつつ、強制労働や人身取引、児童労働を根絶することをねらいとしています。
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目標9:レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る
目標9は、インフラ整備と産業化、イノベーションに焦点を置くものです。この目標は、国際的、国内的な金融、技術支援、研究とイノベーション、情報通信技術へのアクセス拡大を通じて達成することができます。・・・・
目標10:国内および国家間の不平等を是正する
目標10は、国内および国家間の所得の不平等だけでなく、性別、年齢、障害、人種、階級、民族、宗教、機会に基づく不平等の是正も求めています。また、安全で秩序ある正規の移住の確保を目指すとともに、グローバルな政策決定と開発援助における開発途上国の発言力に関連する問題にも取り組むものとなっています。・・・・
目標11:都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする
目標11のねらいは、コミュニティーの絆と個人の安全を強化しつつ、イノベーションや雇用を刺激する形で、都市その他の人間居住地の再生と計画を図ることにあります。・・・・
目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
目標12には、環境に害を及ぼす物質の管理に関する具体的な政策や国際協定などの措置を通じ、持続可能な消費と生産のパターンを推進するねらいがあります。・・・・
目標13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
気候変動は開発にとって最大の脅威であり、その広範な未曽有の影響は、最貧層と最も脆弱な立場にある人々に不当に重くのしかかっています。気候変動とその影響に対処するだけでなく、気候関連の危険や自然災害に対応できるレジリエンスを構築するためにも、緊急の対策が必要です・・・・
目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
この目標は、海洋・沿岸生態系の保全と持続可能な利用を推進し、海洋汚染を予防するとともに、海洋資源の持続可能な利用によって小島嶼開発途上国とLDCsの経済的利益を増大させようとするものです。・・・・
目標15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
目標15は、持続可能な形で森林を管理し、劣化した土地を回復し、砂漠化対策を成功させ、自然の生息地の劣化を食い止め、生物多様性の損失に終止符を打つことに注力するものです。これらの取り組みをすべて組み合わせれば、森林その他の生態系に直接依存する人々の生計を守り、生物多様性を豊かにし、これら天然資源の恩恵を将来の世代に与えることに役立つことでしょう。・・・・
目標16:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
目標16は、人権の尊重、法の支配、あらゆるレベルでのグッド・ガバナンス(良い統治)、および、透明かつ効果的で責任ある制度に基づく平和で包括的な社会を目指しています。依然として長引く暴力や武力紛争に直面する国が多いほか、脆弱な制度によってほとんど支援が受けられず、司法や情報にもアクセスできず、その他の基本的自由も享受できない人々があまりにも多くなっています。・・・・
目標17:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
2030アジェンダは、グローバル・パートナーシップの活性化と強化により、各国政府、市民社会、民間セクター、国連システムその他の主体から、利用可能な資源を動員することを求めています。LDCs、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国をはじめとする開発途上国に対する支援の増大は、すべての人々にとって公平な前進の基盤となります。・・・・
誰も置き去りにしないために
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」発足の際、加盟国は、個人の尊厳を基盤とすること、および、すべての国と人々、社会各層について、アジェンダの目標とターゲットを達成すべきことを認識しました。また、最後尾にいる人々にまず手を差し伸べるよう努めることとしました。この点で言葉を実行に移すことは容易ではありません。なぜなら、詳細なデータを見ると、開発の恩恵が公平に分配されていると言うには程遠い状況にあるからです。
- 2015年の全世界の若年失業率(15歳から24歳の年齢層)は15%と、成人失業率(4.6%)の3倍を超えています。
- 2015年の時点で、全世界の最富裕世帯20%は最貧世帯20%に比べて、熟練医療従事者の診療を受けられる可能性が2倍以上高くなっています(89%に対し43%)。
- 最貧層世帯の子どもは、最富裕層世帯の子どもよりも発育不全に陥る確率が2倍以上高くなっています。
- 都市住民のほぼ80%は水道水を利用できますが、農村部ではこの割合が3分の1にとどまっています。
- LDCs、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国は2014年から2016年にかけ、いずれも開発途上地域全体をはるかに上回る栄養不良率を報告しています(それぞれ13.6ポイント、9.8ポイント、5.1ポイントの差)。
誰も置き去りにしないことは、2030アジェンダの根本的原則です。しかし、最も脆弱な立場にある人々を含め、具体的な人口集団を取り扱うデータや指標がなければ、SDGsでなされた約束を完全に果たすことはできません。データソース統合の改善を通じたものを含め、データの入手可能性と利用を改善するためのグローバルな取り組みは、すでに始まってはいるものの、まだ多くの作業が残っています。グローバルな統計関係者は、現在のニーズを満たすとともに、将来の世代に対する私たちの約束を果たすため、この作業のやり方を転換、近代化するための準備を整えています。
呉紅波(ウ・ホンボ)
経済社会問題担当 国連事務次長
※詳細はこちらを ↓http://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/