荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『レインツリーの国』 三宅喜重

2015-11-25 17:23:31 | 映画
 まさか有川浩の映画化を、同じ年の秋に2本も見ることになるとは思わなかった。
 近未来もの、軍事もののエンタメという点では『図書館戦争 THE LAST MISSION』のほうが有川の表側というイメージだが、『阪急電車』『県庁おもてなし課』そして今回の『レインツリーの国』と、トリビアル路線も関西テレビのディレクター三宅喜重によって着実に映画化されている。私は前2作は未見。
 『レインツリーの国』はジャニーズ Kis-My-Ft2の玉森裕太が主演している。ヒロイン役の西内まりや、恋敵の森カンナをはじめ、玉森以外のキャスト陣がいかにも弱いが、Kis-My-Ft2ファンの心理を斟酌した結果かと推測できる。事実、興行ランキングで1位を快走しているのだから、この地味なキャスティングで正解なのである。
 ある女の子のブログを見て感動した男の子が、ブログ主に感想メールを出して、それからメル友みたいになる。いつしかやり取りはLINEとおぼしきツールに変わり、「既読」となっているのに何日も返事がないとか、そんな事象が物語の重要な要素となるのだ。ブログの文章、メールやLINEの文字変換がスクリーンの下位置にライブでテロップ化され、画面の各カットは、パソコン、iPad、スマホによる文章のやり取りのほんの「合間」で起きる事柄──この男女にもちゃんとリアルな生活はありますよ、ということを示すアリバイカット──を拾い集めているすぎない。
 私たち映画ファンは、この事態に対して「これは映画じゃない!」と噛みつくだろう。そして、そのことも製作サイドはお見通しで、「映画ってなんですか?」「その『映画』っていうの、要らないんですよ」とドヤ顔というやつで返答してくるだろう。もう、これは堂々巡りのシニシズムである。


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