代役アンドロイド 水本爽涼
(第5回)
その姿を見ながら、これくらい軽いのが食いたかったんだ…と、保は頭に描いたドンピシャのイメージに驚かされた。ただ、まだ言葉の抑揚とか感情移入のなさが機械的といえば機械的だった。その辺りの微調整を考えれば、完成したとはいえ、まだ課題は残っている。加えて皮膚の質感や沙耶に似せる外観の修正も必要だった。変態じゃないから、そこまで精巧に作る必要もないように思えたが、ここまで完成すれば保にも、岸田2号、いや、沙耶に対して愛着が湧きつつあった。
サンドイッチを食べ終え、ふたたび数時間、パソコンと格闘した挙句、保は、ようやく全てのプログラムを完成させた。いつの間にか窓の外には夕闇が迫っていた。
「修正するから一端、オフるよ」
『ワカリマシタ、ゴシュジンサマ』
もうこの、ご主人様呼ばわりも最後だな。次回はタ・モ・ツか…と思いながらニヤリとし、保は沙耶の主電源をオフにした。そして、メモリー回路のICチップを、ゆっくりと引き出す。あとは、このチップへ新しいプログラムをインストールするだけだ。保の胸は高鳴った。
どれだけの時間が経過しただろうか・・。保はベッドで熟睡していた。
『保! 起きないと、研究室、遅刻するわよっ!』
「んっ?! ああ…。… …んっ?!!」
昨夜、最後の作動点検をし、再起動することなくそのまま眠ってしまったのだ。