水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

短編小説集(42) 人材あります![3]

2013年12月29日 00時00分00秒 | #小説

交通ルールが改正され、運転中の電話は罰則の対象となったから、それ以降、━ ただいま、電話に出ることができません。発信音のあと、ご用件をお話し下さい ━ の機能にしてあるのだが、かかった瞬間は振動するからギクッ! と戸倉をさせた。戸倉はそれが嫌だったが、総員一人の稼業では致し方ない。で、フゥ~っという溜息が出た。交通ルールが改正され、運転中の電話は罰則の対象となったから、それ以降、━ ただいま、電話に出ることができません。発信音のあと、ご用件をお話し下さい ━ の機能にしてあるのだが、かかった瞬間は振動するからギクッ! と戸倉をさせた。戸倉はそれが嫌だったが、総員一人の稼業では致し方ない。で、フゥ~っという溜息が出た。
 戸倉の計算では一ヶ月の生活費は十数万もあれば十分、事足りた。ただ、人材屋に係る諸経費を数万は予備費として取っておかなければならないから、二十万は稼がねばならない計算になる。まあ、稼ぎの少ない月もあり、今までの蓄えを取り崩すもあった。ただ、60を過ぎ、早期に年金をもらう手続きをしたから、その分の十万以上はさっ引くことが出来るようになり、随分と楽になっていた。足らないのは諸経費分だけとなり、かなり今までの取り崩し額を償還することが可能になったのだ。そうなると、勢いで元気も出る。人はゆとりが生まれないと生活が荒(すさ)むとは、戸倉が得た教訓だった。
 店の宣伝もしなければ客がつかない。宣伝には広告掲載と直接、車をゆっくりと運転しながら、事前に録音した音声のデモテープを回すという二つの方法があった。それ以外でも、ネットで無料のブログ、Twitter、Facebookを開設し、店の宣伝をした。ただ、総員1名、店員1名の店では依頼が重複し、そのスケジュールのやりくりに頭を悩ませる事態も起きた。その都度、戸倉は客の機嫌を損なわないように苦心した。


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