水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (97)嘘(うそ)

2019年09月23日 00時00分00秒 | #小説

 嘘(うそ)も方便(ほうべん)と、よく言う。だがそれは、どうしても真実を話せない事情があった場合であり、嘘をなるべくつかない方がいいに決まっている。悪い嘘が本当になり、助からなくなる場合もあるからだ。だいいち、嘘ばかりついていると、信用されなくなる。ただ、歌のように、♪折れたぁ~煙草(たばこ)のぉ吸殻でぇ~♪ 嘘が分かれば大いに助かるのだが、そこまでは、分からない。^^
 とある事件の容疑者が、嘘発見器を前にして座らされ、数々の質問をされている。
「あなたは、○○の家へ行きましたね?」
「いいえ…」
 瞬間、発見器の針が激しく揺れた。
「あなたは、○○の部屋へ入りましたね?」
「いいえ…」
 瞬間、発見器の針が、ふたたび激しく揺れた。
「あなたは、○○の部屋のトイレへ入りましたね?」
「はい、入りましたっ! 限界でしたから…」
「…」
 取り調べている試験官は思わず絶句したが、やがて、冷静な声でまた続けた。
「質問には、[いいえ]で答えるように…」
「嘘は、嫌(いや)ですっ!」
 容疑者は否定し、はっきりと言い切った。瞬間、試験官は、この男は犯人じゃないな…と思った。事実、この直感は正しかった。再捜査が行われ、真犯人が捕らえられたのは、その数日後のことである。
 このように、嘘はつかない方が助かることになる。^^

                                


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