水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (99)物

2019年09月25日 00時00分00秒 | #小説

 物が豊富(ほうふ)に揃(そろ)い、何でもあるっ! と威張ったところで、助かるとは限らない。^^ 要は、その物の価値を知り、使い熟(こな)して成功裏(せいこうり)に導(みちび)けるか? にかかっている訳だ。例えば、スポーツの名選手が必ずしも名監督ではないといったようなものだ。チームの各選手の長所を知り、適正に配置や交代をさせ、あるいは策を授けられるか・・にかかっているのである。単なる物は何も言わないし、使えば『はいはい! さよですかっ!』と使われるが、人の場合は生きた物だから、なかなか扱いが難しいだろう。まあそこが、使い熟す監督 冥利(みょうり)につきる点なのかも知れない。
 とある家の日曜の早朝である。
「何よっ! こんな早くからっ! 五月蝿(うるさ)くて寝られやしないわっ! まだ四時半よっ!」
 ガタ、ビシッ! ガガガァ~~!! と雑音を出され、否応(いやおう)なしに起こされた妻は、ご機嫌斜めで主人に文句を言った。
「いや、すまんすまん! 起こすつもりじゃなかったんだが、今日中に作ってしまおうと思ってな…」
「次の日曜もあるんだから、少しずつ楽しんで作りゃいいじゃない」
「ああ、そらまあ、そうなんだが…。ははは…そこが、それ…」
 妻の言い分が正しいからか、主人は語尾(ごび)を濁(にご)した。
「それにしても、音の出し過ぎじゃないっ!」
「ああ、まあな…。思ってた物にならないから、ちょっと道具を使い過ぎたっ! ははは…」
「ははは…じゃないわよっ! ったくっ! いい加減にしてよっ!!」
「はい…」
 主人の反省の小声を聞くと、ご機嫌斜めのまま妻は寝室へと消えた。
「あいつは未(いま)だに使い熟せん…」
 妻が消えたあと、ボソッ! と漏らした主人のひと言である。
 物が使い熟せないと、助かる快適な生活が危ぶまれる・・という助からないお話である。^^

                                


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