「そういうこった。無傷で帰らにゃ、今後の出世に関わるだろうしな…」
「そうですよね。公安次第、ってとこですか…」
「署長としてはスンナリ手を引いて欲しいところだろうが…」
「無傷でお帰りの条件は、そうなりますか…」
「ああ…」
二人の四方山話は続いていった。
その頃、公安ではミイラが埋葬されたという地図に記載がされていない無い地点を探すべく、必死の捜索を続けていた。なんといっても放置できないのは、伝染性のあるウイルスがミイラから発見された・・というこの一点だった。ミイラが霊安室から消えた・・という捜索は、余りにもSF的空想としか思えないという理由から捜査断念の結論に至ったのである。警察庁、公安調査庁、厚生労働省公安局の合同捜査班MET[ミステリー・エクスプローラー・チーム]、通称メットが編成されたのはこの頃であった。
「少しヤバいですね…」
「そうでごぜぇ~ましゅだ…」
鳩村署長と祈祷師の老婆は、どこからメットの情報を得たのか、密かな話し合いをしていた。そしてこの直後、二人の意識は同時に遠退いた。Й3番星人が危険を未然に察知し、二人の身体から離脱したのだった。
「あの…どちら様でごぜぇ~ましゅだ?」
「いや、お婆さんこそ?」
「いやぁ~、私はこれだけの者でごぜぇ~ましゅだ?」
老婆は自分が身に纏った弥生時代の装束を不思議そうに見ながらそう返した。
「はあ…。では、これで…」
鳩村もそう返すのがやっとだった。なぜ、弥生時代の装束を身に纏った老婆が警察の霊安室にいるのか? が分からなかった。鳩村と老婆の記憶は、ある部分が完全に寸断され、消滅していた。すべてはЙ3番星人が書いた筋書きだったのである。かくして、今現在も地図上に無い地点は省庁を跨(また)いでの警察庁、公安調査庁、厚生労働省公安局の合同捜査班メットによって捜査され、次期公安部長を目指す鳩村をクック、クックと悩ませ続けている。^^
THE END