水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -76- 一日

2025年02月05日 00時00分00秒 | #小説

 何が起こるか分からない今の世相の中を、のんびりと生きられる幸せを忘れてはならない…とは思うのだが、どういう訳か一日がスゥ~っと流れてしまうのは有り難いのか有り難くないのか? と考えてしまう私ですが、皆さんは如何でしょうか?^^ お勤めの現役世代の方々は、そんな悠長なことを言ってられないとお思いだとは存じますが…。^^
 とある中堅都市の中で暮らす猫崎は、どこにでもいそうなサラリーマンである。今朝も、妻が作ってくれた愛妻弁当を片手に通勤列車に揺られていた。
『次は、犬伏です。鹿尾線は方面は乗り換えとなります…』
 籠った声で流暢(りゅうちょう)にアナウンスする駅員の声を聞きながら、猫崎は、相変わらず上手いなぁ~…と思いながら座席を立った。猫崎が勤務する馬毛市役所は鹿尾線に乗り換えて二番目の駅近くだった。犬伏駅に到着した列車を降りた猫崎は通路を通って鹿尾線ホームへと向かった。こうした一日が日々、繰り返されているからか、自分の意思とは関係なく、身体が自然と動いていた。何かを考えていても間違いなく動いていく自分の身体に、猫崎は思わず、俺はパブロフの犬ならぬパブロフの猫崎だな…とニンマリした。よくよく考えれば、戦争もなく平和に暮らせる今の自分は幸せなんだ…と思いながら、ベンチに捨てられた新聞を拾って読み始めた。新聞代が浮いた…という長閑な気分が猫崎に浮かんだ。
 少しづつ暮らしが低調になっている我が国の世相ですが、世界的には、まだまだいい国ですよ、猫崎さん。一日一日を大事に暮らしましょう。^^

                   完


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