水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -65- 一日違い

2025年01月25日 00時00分00秒 | #小説

 一日違いで物事は良くも悪くもなる。私達が生きる銀河系星雲・太陽系惑星の三次元地球では昨日(きのう)に戻ることは不可能なのである。タイム・マシーンはないから、どうしようもない訳だ。^^
 春まだ浅い三月初旬の朝、梅崎は膨らみかけた桃の蕾を見ながら、ふと溜息を吐(つ)いた。外は小雨が降っている。明日の朝しよう…と思っていた樹木の消毒は当然、この気候では出来ない。昨日、やっておけばよかった…と、後悔してもあとの祭りだった。
「まあ、仕方がない…」
 梅崎は自己弁護のひと言をつぶやくと朝食にした。いつものように家庭菜園で育てたダイコンの温野菜、食パン一枚、そして温かいコップ一杯のミルクである。慎ましやかながら、ここ最近の増えた体重を思えば梅崎としては十分過ぎるほどだった。テレビのリモコンを押すと、能登半島地震のニュースが流れていた。梅崎はダイコンの温野菜を食べながら、訳が分からないことを、ふと思った。
『雨冠じゃなく曲冠でよかった…』
 今年の辰年+曲冠=農で、辰年+雨冠=は震だと思ったのだ。梅崎はダイコンを育ててよかった…と感じた。一日違いどころか、生活の大きな違いだった。
 美味しい温野菜のダイコンに平和な家庭・・これが一番です、梅崎さんっ!^^

                   完


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