水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -83- 混乱

2025年02月12日 00時00分00秒 | #小説

 アタフタと心を混乱させないためには、長年の心の鍛錬が必要となる。最近の心を惑わせることが多い世相だと、とくに鍛錬が必要だろう。その成果は目には見えず、一朝一夕にはいかないから、極めるのは実に難しいと言わざるを得ない。年老いた私でも、まだまだ混乱することがあるのだから、まあ鍛錬の完成を知るのは神様か仏様になってからだろう。いくら出来がよくても人は人なのである。私なんか、出来が悪いから尚更(なおさら)混乱している。^^
 とある町に住む豚丘は、混乱し、困り果てていた。今日、外出する服が決まらないのである。昨日の夕方には、アレにしよう…と決めていたのだが、朝になると気分が変わり、コレだな…と、思わなくてもいいのに思い始めたのである。^^ 予約の切符をすでに入手しており、出発予定の時刻は決まっていたから、豚丘の混乱は一層、深まりを見せていった。
『やっぱりアレか…』
 豚丘はコレを身に着け始め、また脱ぎだした。腕を見れば、切符の時刻にはギリギリだった。豚丘は混乱し、慌てて適当な服を場当たり的に身に着け家を飛び出した。なんとか列車には間に合ったが、豚丘は肝心の鞄(かばん)を家に置き忘れていた。それでも、財布だけは服のポケットに入れていたから、そのまま旅を続けることにした。
 まあ、引き返さずに済んだだけ運がよかったんですよ、豚丘さん。それにしても、慌ただしく混乱する世相は困りものです。^^

                   完


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