32年前、事件が起きた。
衝撃ではあったが、当時まだ中国は私の視界に無かった。
その10年後、始めて中国に行った。
海外出張に当たっては必ずその国の歴史を学んでから行っていた。
もちろん近代史以降だから、まず日中事変だった。
その出張では中国・ベトナムと、始めて共産圏の国訪問だった。
どう振る舞えば良いのか、少し怯えていた。
しかし、中国は思いの外自由な国だった。
それから7年間、中国との往来が始まった。
1年の半分以上を中国で暮らした年もあった。
通訳を通してであるが、中国人と政治についても話した。
中華人民共和国で誰が一番優れたリーダーだろうと議論もした。
中国のからくりを中国人の平民が私に語ってもくれた。
敢えて平民と言ったのは共産党員で無いからだ。
中華人民共和国の『人民』とは中国人のことでは無い。
共産党員のことを指す言葉だ。
共産党員以外は国民のようで国民とは見做されていない。
統治されているだけの人だから『平民』という言葉が適当かも知れない。
共産党員とも話したことはあるが、木で鼻をくくるような話ばかり。
歓待はしてくれたがいつも上から目線だった。
平民は思いの外自由で驚いた。
この国は化ける、その時はそう思った。
しかし、習近平体制になりその様子はがらりと変化した。
強権体制をあからさまにし、独裁制に近づいている。
20年前の自由な中国からは明らかに遠のいている。
1億に満たない人民が14億人を統治している。
恐怖政治で。
天安門事件を語る平民が、居なくなった。