バンボが家に来てから、私は台所に立ち入らなくなりました
彼に任せるとの意思表示でもありました
彼は時間にも厳格で、遅れたりすることは一度もありません
料理の品数の少なさと、英国かぶれの味付けにはまいりましたが・・・
私がパンも好きなことを知って、パンを焼くと言い出しました
パンがあれば好きな時に腹を満たすことができます
願ってもないことです
朝食はパンにすることとしました
そこそこおいしい食パンを作ってくれました
ある朝、いつものようにパンを食べていると黒いものが
何だろうとパンを割ってみると、
そこには何やら見慣れた生き物の形が
ゴキブリです
私は驚いて、バンボを呼びました
私の異様な声に、バンボは慌てて食堂に入ってきました
「これは何だ?!!」
大声の私に異常を感じ取ったバンボは、皿の上のパンを見て
「ホーホー」
落ち着いた感じで「ノープロブレム」と言うと
ゴキブリの周りのパンをむしり取って、平然と引き揚げました
そして、もう一切れのパンを持ってきました
仕方なく私は、現場の品質管理状況を確認しました
久しぶりに入った台所はずいぶん豊かになっていました
薪はたっぷりあるし、貯蔵庫には野菜や果物や穀類が置いてある
私が食べたことのないようなものもいろいろありました
聞くと、これは彼の食べ物のようです
「パンはどうやって作るのだ?」と訊くと
パン粉の貯蔵場所と、練る台を示しました
土で作った竈の横の黒い台です
そこには、小型のゴキブリがうようよ
バンボに、「あなたはゴキブリを食べるか」と尋ねると
ニコッと笑って「ノー」と言う
「私もゴキブリは食べたくない」
清潔に保つように言いつけて、休みの日、私は練り台を求めにリロンゲに向かいました