私はまだ封の切られていない外用薬を見つけた
ちょうど11年前にどこかの病院で手に入れたものらしい
『痛いところとその周りに塗ってください』
経皮吸収型鎮痛消毒剤とある
面白い、塗ってみるか・・・私は髪にスポンジを押し当てた
筋肉痛のための物だろうが、見事偏頭痛の痛みを顕にする
偏頭痛が対抗したのだろうか、激痛が走った
髪はグシャグシャでもう訳が分からない
痛みの輪郭は鮮明である
私は偏頭痛の痛みの中心部と端部を突きとめた
エタノールとトリエタノールアミンが頭皮を通過する
大半は頭皮の手前で既に討ち死にしているが
数少ない精鋭たちは遂に頭蓋骨縫合まで到達した
果敢にも突き進んだ精の鋭たちだったが
脳膜にぶち当たり全員戦死した
私は考えている
この使用期限は10年も前だぞ
精鋭といえどももはや老兵であったか
そうだ、新兵を送り込めば
そうすれば、脳膜を突破できるかも知れない
でも、待てよと再考する
エタノールもトリエタノールアミンもそんなに変質はしない
私はスポンジを押して臭いを嗅ぐ
新鮮な匂いだ、まだ大丈夫
しかし、この兵力では偏頭痛には勝てない
はっきりそう悟った
旧日本陸軍参謀のように、ここで無理をしてはならぬ
私は冷静にスポンジの蓋を閉めた
君たちにもきっと活躍の場を見つけるからな
それまで静かに待っていてくれ