銀行のATMでお金を引き出そうと入った
見たことのあるような後ろ姿
私の視線を感じたのか、こちらを見た
「おっ、こんにちは」
小学校、高等学校の同級生だ
市内で何店舗か持ち、小売り業の社長をしている
私が引き下ろしをしているときに電話が掛かってきたようだ
なにやら話して、慌てて出て行ってしまった
引き下ろして銀行を出ようとすると
女性が私に声をかけてきた
「これ、あなたの物ではありませんか?」
現金を入れる銀行の封筒が少し厚い
「はぁ」と中を見ると、私の物と似ていて1000円札と万札
「一万円が2枚なら私のですが・・・」
3枚あったので、これは同級生のだ、と直感した
彼女も困るし、私も困るので銀行員を呼んで説明
彼女にお礼を言い、銀行員と相談
私が同級生に電話することにしたが、銀行員もすぐ近くだからと走って行った
電話で話すと
「預けておいて」
と、悠長なことを言う
「まだいるから、取りに来いよ」
そうこうしないうちに、銀行員と二人でやって来た
銀行員から『中を確認して』と促されて
「3万9000円、確かに」
「大丈夫か?」
「駄目かもしれない」
と、帰って行った
忘れたことも気づいていなかったようだ
二つのことを同時に出来ない
高齢者の特徴かもしれない
現金引き出しの時を見計らって電話すれば、現金を忘れる
『大丈夫かなぁ』
そう思いながらも、自分もおかしいことに気づいた
左手には現金が入った封筒を握っている
だから、声をかけられた瞬間『私のでは無い』と分かるはずなのだ
ところが、一瞬忘れたのかと思ってしまった
どっちもどっちか