テントの朝は早い。
白々と明ける頃、鳥のさえずりが始まった。
その光と音に誘われて私はベッドを離れ大きく両手を挙げて伸びをした。
テントの外を少しだけ開けて外を眺めた。
狭霧が景色を神秘の世界に変えていた。
ベッドでは彼女の寝息が静かに波打っている。
私はその音にそっと微笑んで着替えをし、外に立った。
4月の空はまだ冷え込んでいたが、私の心には熱い芯が突き通っていた。
霧の向こうに人影が見える。
その人影も景色に溶け込んでいた。
私は昨日の焚き火に熾きを見つけ、薪のささくれを解して乗せてみた。
白い煙が立ち上り、ぼっと点った。
「おお、点いた。」
私は嬉しくなり,慎重に薪を組んだ。
赤々とした火が音を立てたのを確認してテントに戻った。
寝息は続いていたが、私は彼女の裸の肩にそっと手を添え声を掛けた。
「朝が君のように美しいよ。」