3/26(火)、『翔んで埼玉』を観て来ました。
予告編はこんな感じです。
『翔んで埼玉』、かなりの話題作なわけですが、今更観に行って来ました。
個人的に、2014年の『テルマエ・ロマエ』がイマイチだったので、武内英樹のコメディにはあまり期待していなかったので観るのが遅れたというのもあるのですが…実際に観たらとても面白かったです!
突然ですが、強烈なバイオレンス映画とかが時として人間の本質を浮き彫りにしちゃうことがあると思うんですけど、『翔んで埼玉』は、それをコメディでやっちゃった映画なんじゃないか、と僕は思うのです。
関東の地域格差という、地味だけどそこに暮らす人々にとってはわりと深刻(?)な題材に、ここまで(無駄な)情熱と予算を注ぎ込んで全力で遊び倒してしまったこの映画、実は日本の本質をうっかり突いた名作になっちゃってませんか。
一流の俳優を揃え、ただでさえカリカチュアされた漫画のキャラクターをさらにカリカチュアさせたような強烈なキャラクターを演じさせ、豪華絢爛な衣装と舞台美術に、あれだけ大人数のエキストラを集めて都庁周辺を封鎖して大規模なロケを行う…
考えれば考えるほど、ここ最近の日本映画の中でもかなり予算がかかっていると思うんですよ。
しかもそれが、例えば社会派サスペンスとか、アクション映画とかじゃなくて、まさかのコメディ映画。
まさに予告編でも言っている通り、日本映画最大の「茶番劇」…日本のコメディがここまで出来るのか!という感動がありました。
そういう意味で僕が思い出したのは「帝一の國」でした。
「帝一の國」は、そもそも原作漫画の時点で権力闘争のバカバカしさを学園ドラマに置き換えて皮肉った完成度の高いコメディでした。
その二次元である原作を無理矢理実写化することで、実写化に付きまとう痛々しさを逆に武器にしてバカバカしさがさらに際立つという、昨今の漫画実写化作品の中でも群を抜いた成功例でした。何よりちゃんと面白かったしヒットもした、特に若い人達に支持されたわけです。
ああいう映画が作られることは日本映画全体が活気づくことに繋がっているし、「翔んで埼玉」も間違いなく、そういういい流れに乗っかった作品だと思います。
さて、「翔んで埼玉」、一部で、埼玉ディスというテーマは差別的な内容なのではないか?という議論もあったそうです。
差別発言が問題視されがちな高須クリニックの院長とのコラボも、かなり波紋を呼んだ印象もあります。
僕は、映画を観ないうちに高須クリニック問題が発生してしまったので、迷っていたのですが、実際に観てみたら、寧ろ差別とは真逆の映画だと思いました。
地域格差という現実に存在する社会問題を笑いのネタにすることは、寧ろその現実に全力で向き合うこと、そのことで現実を浮き彫りすることであり、すごく挑戦的な映画だと思ったんです。
タブー視されている問題もコメディにすることでネタに出来るのは、映画の持つ強い力だと思います。
モンティ・パイソンや落語みたいにタブー視されてる問題を皮肉って笑い飛ばせる力が笑いにはあると思うのですが、でも最近そういう笑いが少なかった日本で、一切手を抜かずに全力で表現してヒットもした「翔んで埼玉」、日本のコメディの最前線だと思います。
一言では片付けられない微妙な問題を、映画というフィクションだから表現できることって絶対あると思います。
しかも、それを笑いながらやってしまうという、「茶番劇」だから表現できる世界もあると思うんですよ。
埼玉ディスって言う意見もあるけど、少なくとも僕は埼玉愛しか感じなかったし、だからこそ感動もしました。
そして、最後まで見ると果たしてこの物語のラストだけが正解なのか?っていう視点もちゃんと入れてきていて、ただのお気楽なハッピーエンドにはしないぞってあたりも、抜かりがないと思いました。
だから、本当に完成度の高いコメディだと思うんですよね。
時代を越えて語られて欲しい映画です。
個人的に、最近とあるニュースで新潟ディスられてないか?ということが話題になり、自分なりに色々考えていたタイミングだったので、地域格差をネタにした「翔んで埼玉」にここまで感動しちゃったって部分はあるかも知れません。
もちろん埼玉県民はゲラゲラ笑ったんだろうな(羨ましい!)と思いますが、新潟県民の自分でも何だかんだ感動できたので、もしかしたら普遍的な映画なのかも知れません。
そんな訳で、「翔んで埼玉」は差別思想とは無縁どころか真逆の良質なコメディだと思います。
だからこそ、繰り返しになりますが、差別発言がよく問題になる高須氏とのコラボはどうなんだ?って思っていましたが、映画の面白さとは別の問題だと思うので、映画は映画でちゃんと評価したいなと僕は思います。
最後に、そういう高須氏とのコラボという理由で僕は観に行くか迷っていた部分もちょっとあったんですけど、cdbさんのこの記事を読んで観に行きたいと思ったんですよね。
いい文章なのでみんな読んでください!(長々感想を書いてきて最後は人の文章に頼って締めるスタイル!)
「「な、な、なにこのコラボ……」心地よい自虐作『翔んで埼玉』が翔べなくなった日」
「『翔んで埼玉』のコラボ問題について文春オンラインに書いたことの追記と、ブルーハーツの青空についての話」
追記で、この映画を観たあとで、魔夜峰央の原作漫画「翔んで埼玉」を読んでみたのですが、漫画は埼玉ディスっていうネタで遊ぶという発想以外は、極めてシンプルな内容だったなと思いました。
そこを映画化するにあたり、ご当地ネタ、地域格差ネタ、時事ネタなどをふんだんに盛り込み、さらに無駄に壮大なオリジナルストーリーに仕上げたこの映画、やっぱり凄いと思いました。