近未来の2245年、アメリカでは科学が進み、クーロン技術で人造人間に成功したと報じられていた。一方、歴史学者のOS(41才)は過去に海に沈んだと言われているアトランティス大陸に非常に興味があった。なぜなら1年前に夢の中で威厳のある王様のような人物が出てきて、「このままではアメリカ大陸はアトランティス大陸のように海の中に沈む」と告げられたからだ。
それから、アトランティス大陸について研究に没頭した。調べるとアトランティス大陸文明はアメリカとたいへん、良く似ているころが多々あった。
OSはアトランティス大陸がなぜ沈んだのか、その原因をすごく知りたくなった。いろいろ調べてみたが、諸説があって、真実はよくわからなかった。
ある日、OSは広告でS社の「タイムトラベルツァーであなたの好きな時代に行ける」を見て、胸がおどった。タイムトラベルで好きな時代を旅行して、必ず戻ってこられる。戻れない場合は必ず連れ戻してくれるというものだった。かなり高額だったが、OSは思い切って申し込んだ。
やがてその日が来た。OSはS社のタイムマシーンに乗り込む。そして時空を超える。すごい衝撃と振動だったが耐えた。
静かになったので、扉を開けると、まさにそこはアトランティス大陸だった。多くの民衆がぞろぞろと大きな広場に向かって行くのでOSもその後をついていった。
広場は石畳で数万人が集まっていた。やがて壇上に一人の男が立ち、説法を始めた。OSにはそれが誰かが分かった。アガシャー大王だった。夢の中にでてきた王様とそっくりだった。
アガシャー大王は救世主だった。
民衆は静まりかえり、大王の言葉を真剣に聞いていた。この時代にもマイクがあるのか、後ろにいたOSにも良く聞こえた。
アガシャー大王の説法は威厳に満ち、素晴らしいものだった。内容は主に愛についてだった、また、1日に1回は、一人で静かに祈り、自分の守護・指導霊と話しなさいということだった。
しかし、OSは知らぬ間に兵達に囲まれていた。着ている洋服がおかしいので異民族と思われたようだった。OSは連行され、若い男の前につき出された。
OSは「自分は未来から来た人間だ」と主張した。若い男はOSの頭に自分の手の平をかざして霊能力でリーディングしてOSの言っていることが本当かどうか確認した。
若い男は驚いた。OSの言っていることが本当だとわかったからだ。
若い男はOSどうやって未来からやってきたのか質問し、自分の名は「アモン2世」だと言った。こんどはOSが驚いた。アモンと言えばアガシャー大王の息子だった。
アモン2世は興味深々で矢継ぎばやに質問してきた。OSは丁寧に答えていった。そうしているうちに二人は仲良くなった。
次の日にアモン2世はOSに首都・ポンティスを案内した。
外敵から攻撃を避けるために、迷路にような水路が張りめぐらせた、大きな要塞都市、防衛都市のようになっていた。
またピラミッドや飛行船、潜水艦などを見せた。
ピラミッドはエジプトのとは違い、銀色に輝いていた。
一辺の長さが30メートルぐらいの大きなピラミッドでアモン2世の説明によると、
太陽エネルギーを吸収、増幅して動力源であり、また、宗教家が瞑想修行をするところでもあるということだった。
飛行船は直径4メートルぐらいのクジラ型で長さは30メートルぐらいで上半分には浮力用ガスがつめられ、下半分に人間が乗るようになっていた。
背中の部分には背ビレのように銀色の小さいピラミッドが3個ついていて、これで太陽エネルギーを変換して後尾部に送り、プロペラを回していた。
アモン2世によるとアトランティス大陸は今のバミューダ海域にあり、1万年以上前に存在していた。
また、「500年ほど前に、大陸の東の3分の1が海中に没し、さらに200年前に西の3分の1が沈み、現在は真ん中の3分の1になってしまった。これは神の警告」だとアモン2世が言った。
アトランティスはもともと科学が進んだ文明で、科学信仰が強く、「科学が全てを支配する」という考え方が一般的になっていた。つまり、人々が神の教えや霊界の存在、霊的世界を求めなくなり、科学万能信仰、唯物主義になった時に、暗い悪想念がアトランティス大陸をおおっていた。
また、クローン技術で人造人間を作り奴隷にしたり、当時グリーンランドの栄えていた文明を特殊爆弾で滅ぼしたり悪行を重ねていた。
神の警告は、まずは、地震やハリケーンや津波などの自然災害よってされるが、その次に来るものは、大陸レベルの移動だった。
また、アガシャー大王に反対する人達がいた。聖クザーヌスが説いた理神論を奉ずる一派で政治の実権を握り、軍の指導権があった。この人々は、アガシャー大王を敵視し、その命をねらうようになっていた。
聖クザーヌスは、神は理性的なものであると説き、科学的、合理的なものを重視していたのに対し、アガシャーは、愛とか、守護、指導霊とか非科学的な教えを説いていたので、対立していた。
聖クザーヌス派の人達はアガシャーの教えは、人心をまどわし、アトランティスの古きよき伝統をなくし、アトランティスを滅ぼすもので、このような王族はなくした方がいいと考えていた。
OSはアガシャー王の宮殿でアモン2世から、夕食を食べながら質問に答えていた時に急に大きな声が聞こえてきた。
近衛兵の声だった。すぐに大騒ぎとなり、近衛兵の隊長らしき人物がアモン2世のそばに来て「敵が来ました。すぐに、お逃げください」と言った。
「敵とは誰だ?」アモン2世が質問すると、「クザーヌス派です」と隊長が答えた。
アモン2世はOSに「すぐに逃げよう!」と言い、OSをうながした。
宮殿では、大勢のクザーヌス派が攻め込んできていた。近衛兵は必至に応戦し、剣で戦っていた。だが、次第に数の少ない近衛兵が後退する。
やがて近衛兵の一人が殺され、また一人と倒されていった。形成はクザーヌス派が圧倒的になり近衛兵のほとんどが殺されてしまう。宮殿は取り囲まれ逃げ出せない状態となった。
宮殿にいた王族はほとんど全員がとらえられてしまう。アガシャーも必死に抵抗するが、捕まってしまう。
しかし、アモン2世とOSは必至で逃げ、秘密の通路を通り飛行船のあるところまでたどりつく。アモン2世は急いで飛び立つ準備をする。OSも手伝うがなかなか飛び立てない。
やがて、クザーヌス派の数人が飛行船の異変に気ずき、やってくる。間一髪のところで、飛行船が飛び立つ。王族で逃げることができたのはアモン2世だけだった。
つかまったアガシャーを含める王族達はアガシャーが説法している広場に集められ無残にも生き埋めにされ、全員が殺されてしまう。救世主だったアガシャー大王をキリストと同じように殺害してしまったのだ。
勝利したクザーヌス派達は喜び、宮殿で宴会を始める。しかし、外は嵐となり、雷が落ち始める異常な天気となる。
クザーヌス派達の宴会はおかまいなしに盛り上がっていた。口々にアガシャーをバカにし、「何が守護霊だ!霊界などあるわけがない」とさげすんだ。やがて飲み疲れて寝てしまう。
救世主を殺害したクザーヌス派達がつくりだした暗い想念のくもりがアトランティスおおったため、地球意識に反作用が起こり始める。
深夜に大きな地震があり、建物が崩れ始める。
やがて地鳴りが起こり、大陸が沈め始める。気持ち良く寝ていたクザーヌス派達は驚き、飛び起きる。
地震と地鳴りが続き宮殿が崩れはじめ、クザーヌス派達は一斉に宮殿から逃げる。
クザーヌス派達は立っていることができずにしゃがむ。何が起こっているのか全くわからなかった。一方、民衆たちも同じだった。町中の建物が振動により崩れはじめていた。それほど強い振動だった。
やがて海の水がヒタヒタとクザーヌス派達の足元に流れてくる。誰かが「津波だ!」と叫ぶ。
一斉に高いところを目指して逃げる。海水は急にどんどんと流れてくる。民衆の中で飛行船に乗って逃げ出す者がいた。
やがて海水が深さを増し、クザーヌス派達の全員は海の中に飲み込まれてしまう。民衆のほとんどが同じだった。
つぎの朝は大陸の姿はなく。見えるのは海面のみだった。
アモン2世とOSは飛行船から全ての出来事を見てから、他の地をめざして飛んだ。
アモン2世は憔悴していた。自分の両親が死んだことにショックを受けていた。OSにはあまりの悲惨さにアモン2世にかける言葉がみつからなかった。
しばらくしてから、OSはこれからどこへ行くのか尋ねた。アモン2世は地図を広げて指さした。
それは、今でいうエジプトだった。肥沃な土地で農業が盛んだという。1日後エジプトの上空に着く飛行船。
濃厚と牧畜を主としていたエジプトの住民は飛行船を見て驚く。口々に「神だ」という。やがて飛行船が降りてきて、アモン2世とOSが飛行船が出てくる。
住民達はアモン2世とOSにひれ伏す。やがて住民達の長がひれ伏しながら、アモン2世と言葉を交わす。
アモン2世は地面に指でピラミッドを書き。作るようにお願いする。長はアモン2世に作り方をいろいろと質問した。
そこへS社の社員2人が物陰からOSの名を呼んだ。OSはすぐに社員のところへ行った。
社員は「十分にタイムトラベルは楽しんだでしょう。帰りましょう」と言った。OSは「わかった。アモン2世に別れを行ってくる」と言った。
OSはアモン2世「そろそろ帰えらなくてはいけないらしい。貴重な体験をしました。アメリカが海に沈まないように国民に真実を告げて、アトランティスのならないようにします」と言った。
アモン2世はOSに「そうです。絶対に神を葬ってはならない。反作用が必ず起きる」と言った。「わかりました」とOSが答えた。
OSは社員のところへ行き、タイムマシンに乗り込んだ。OSは戻ったら、今の体験を発表する決心をしていた。アメリカも信仰がなくなり、人間が神のように人造人間を作り始めている。このままでは、大きな反作用があるかもしれない。これを止めなくてはならないと強く心に思っていた。