(写真=提訴後に厚生労働省で記者会見を行った多摩ミルク支部組合員と弁護団ら)
(株)エイチ・ビー・エスは長時間労働と残業代未払いを是正しなさい!
6/5 東部労組多摩ミルク支部が「固定残業代」の無効を求めて提訴!
東京都葛飾区の運送会社で働くドライバーらでつくる全国一般東京東部労組多摩ミルク支部(斉藤達男執行委員長)の組合員3人が、6月5日、雇用主で多摩ミルクグループの株式会社エイチ・ビー・エス(小島抄智代代表取締役)を相手取って、固定残業代制度の無効を主張したうえで未払い残業代など約4000万円(付加金含む)を請求する裁判を東京地裁に起こしました。提訴後、原告である組合員3人、同支部組合員、弁護団らは厚生労働省で記者会見を開き、会社の違法不当を訴えました。
原告は、同支部組合員で、同社の正社員として雇用されている佐々木義幸さんら3人。飲料などをトラックで配送しているドライバーです。3人は過労死レベル(月80時間の残業)をはるかに超える長時間労働を恒常的に強いられてきました。佐々木さんはひどい月では残業時間だけで206時間という殺人的な長時間労働を記録しています。
その背景には、多い人では賃金の半分を占める「固定時間外手当」の存在があります。佐々木さんの場合、月給30万円のうち基本給15万円、固定時間外手当15万円になっています。あらかじめ残業代を含めた賃金を支払う固定残業代制度は、これまでの裁判例でその手当が何時間分の残業代に相当するのかが明確に区分されていなければならず、かつ手当の超過分があった場合には上乗せで支払っている実態が必要とされています。
ところが、同社の手当は、何時間分にあたるかが明記されておらず、深夜労働手当が含まれているのかや所定労働時間を何時間で計算しているのかもまったく明らかではありません。手当を上回る長時間労働を行った場合も超過分はまったく支払われていません。このように同社では、労働者が法定の残業代が支払われているのかどうかを検証するすべがありません。また、同社の求人募集案内などには単に「給与30万円」などとしか記載せず、賃金を大きく見せかけていました。
そもそも過労死レベルをゆうに上回る月100時間以上の残業代をあらかじめ設定すること自体が不当と言わざるを得ません。逆に、固定時間外手当を除いた残りの基本給だけでみると、東京都の最低賃金を下回るほどの超低賃金になっています。労働基準法37条違反(残業代不払い)に該当するのは明らかです。
現在、同社だけではなく、前もって残業代を賃金に含んだり、さまざまな名目の手当を「残業代として支払う」などと就業規則や雇用契約書で定めたりする固定残業代制度を導入する企業が増えています。その結果、残業代がごまかされるケースや何時間働いても定額の手当以上は残業代が支払われないケースが労働相談でも多く持ち込まれています。「残業代を払わないでも済む方法」などと指南する悪徳弁護士や悪徳社労士も後を絶ちません。事実上、残業代を払わずに長時間労働を強いる制度として悪用されています。
東部労組と多摩ミルク支部は、このような労働実態を是正させ、長時間労働とサービス残業をなくすために裁判の提訴を決意しました。皆さんのよってたかってのご支援をお願い申し上げます。