写真=ワタミ過労死裁判の和解成立を受けて記者会見する遺族、弁護団、東部労組役員ら
東部労組 ワタミ過労死裁判勝利解決についての声明
全国一般東京東部労組はワタミ過労死裁判の和解成立を受けて、以下の声明を発表しました。
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ワタミ過労死裁判勝利解決についての声明
2015年12月8日
全国一般東京東部労働組合執行委員会
居酒屋チェーン大手のワタミで正社員だった森美菜さん(当時26歳)が入社2カ月後に過労死した問題で、東部労組に加入した遺族がワタミと当時社長だった渡辺美樹・自民党参院議員ら役員を相手取り損害賠償を請求した裁判は本日、東京地裁で和解が成立した。
遺族が和解した最大の理由は、ワタミなどの会社と渡辺氏ら役員個人が森さんの過労死についての法的責任を認めて謝罪したことである。2008年6月12日に森さんが亡くなってから、2012年2月に国が労災と認定した後もワタミ側は遺族と真摯(しんし)に向き合わず、面談や謝罪を拒み続けた。カネなら払うという態度だった。2013年12月に遺族が提訴した裁判で、渡辺氏は法廷に現れ「道義的責任について謝罪する」と言う一方で「法的責任の見解相違については司法の判断を仰ぐ」と争う姿勢を示していた。すなわち森さんの死から7年半の月日を経て、ようやく責任を認めて謝罪するに至ったのである。
また、和解内容には、ホームページに謝罪を掲載すること、日本の司法では認められていない「懲罰的慰謝料」を事実上支払うこと、すでに時効済みの森さんの未払い賃金を支払うこと、森さん以外の従業員にも未払い賃金を支払うこと、労働基準監督署から是正勧告が今後出た場合には全従業員に周知すること、基本給に深夜手当を含めた額を記載する社員募集表示を見直すことなど、判決では得られない内容を認めさせたことも遺族が和解を選んだ理由である。
ワタミと渡辺氏らは全面的に非を認めた。ここにワタミ過労死闘争は勝利解決を果たしたと宣言する。
この勝利をもたらした要因は何か。まずもって森さんのご両親が娘の無念を晴らすために勇気をふるって闘いに立ち上がったことである。渡辺氏の参院選立候補に反対し、2013年6月に自民党本部前で抗議行動を行った際、不誠実な対応の自民党職員に対し、森さんの父親は鬼気迫る表情で「毎日毎日泣いているんだよ、俺たちは!」「なんでワタミを候補にするんだよ!」とつかみかかった。この場面は報道やインターネットを通して多くの人の魂を震わせた。
遺族の闘いであると同時に、今回の闘いは「みんな」の闘いだった。ワタミ理念集の「365日24時間死ぬまで働け」という言葉は、森さんと同じように過酷な労働に苦しむ人たちの怒りを呼び起こした。自民党本部前抗議には東部労組組合員だけではなく全国から市民が集まった。裁判でワタミ側が管理職や社員らを動員し傍聴席を占拠した際には多くの支援者が本気で抗議した。インターネットは渡辺氏が不誠実かつ偽善的な言動を行うたびに反論コメントなどで「炎上」した。多くのジャーナリストが動き、ワタミの非道ぶりが連日のように報道された。弁護団は法的側面からワタミや渡辺氏らの責任を追及した。「みんな」の闘いで、「みんな」が勝ち取った解決である。
ワタミは「ブラック企業」の象徴となり、渡辺氏は働く者にとって怨嗟の的(えんさのまと)となった。ワタミは昨年と今年2期連続の最終赤字に陥り、介護部門を売却した。飛ぶ鳥を落とす勢いだったワタミがいまや経営危機と報じられている。労働者を1人でも過労死に追いやると企業自体の存立すら危うくなる。すべての経営者諸君はこれを教訓としていただきたい。自らの職場でただちに長時間労働・過重労働を撲滅すべきである。
いま、自民党・安倍政権は労働時間の規制緩和として「残業代ゼロ制度」を導入し、8時間労働制を解体しようと狙っている。まさに「365日24時間死ぬまで働け」と労働者を追い立てる制度である。過労死を促進する立法をやめよ。すべての働く仲間は反対の声をあげよう。
最後に、ワタミで働いている皆さんに心からこう呼びかけたい。「ワタミの職場でぜひ労働組合をつくりましょう!」
過労死した森さんは、わずか2カ月でしたが、皆さんの同僚でした。今回の解決がどれだけ高い水準であったとしても、森さんの命は戻りません。遺族が本当に望んでいるのはワタミで過労死を二度と出さないことです。裁判での和解協議でワタミ側がほとんど唯一、遺族の求めを断った事項がありました。それは将来にわたり残業時間の上限を定めることです。ワタミ側の対応に私たちは不満に思いましたが、同時に、今後の課題はやはりワタミで働く皆さん自身が主体となって行動し決めていくべきだと考えました。ワタミの労働者の生活と権利そして命が守られるためにはまともな労働組合が必要です。東部労組は最大限の支援を惜しみません。ともに立ち上がりましょう!
以 上