「核心号外」とあり、奥付には、「昭和十一年 〔一九三六年〕二月三日発行 直心道場内 発行所 核心社」などともある。両面刷り1枚、23センチ。発禁処分:二月二日。
全国民・全軍将士刮目して見よ!!
相沢事件公判劈頭 満井中佐の重大提言
皇軍未曾有の不祥事と陸軍当局より宣伝せられ全国民、全軍の注視の的たりし、永田軍務局長斬殺事件被告相澤三郎中佐の第一回公判は、去る一月二十八日午前十時より、東京赤坂第一師団軍法会議法廷に於いて開始された。新聞紙所報の如く、開廷劈頭、特別弁護人満井中佐より重大なる提言を致します。
第一 本件予審調書並公訴状を見るに本事件の被告が果して何人なるや極めて曖昧不明瞭である。抑々皇軍の本質上将校がその公人たるの資格に於て為したる行為と、私的個人としての為せる行為とは厳然として之を区別して取扱はれるべきものである。
〔以下省略〕
第二 本事件の原因動機たるや、元老重臣、財閥、政党、官僚等軍部以外の不純なる支配勢力によりて皇軍本然の統帥が撹乱左右せられ、遂に統帥権の干犯をも惹起するに至りたるため、皇軍を此の危機より救出擁護すべく已むを得ざるに出でたるものである。
〔以下省略〕
第三 本件の公訴に於ては被告のなしたる行為に関し誠に重大なる疑惑を有する。
〔以下省略〕
(以上)
誠に重大至極の提言である。然るに判士杉原法務官は、そのまゝ公判を続行すべきことを判士長に内申したるものの如く、判士長佐藤少将は、直ちに公判の続行を宣し、検察官島田法務官をして公訴事実の説明を開始せしめたのである。依つて満井中佐は再度起立し、『極めて重大なる事柄なるにより更に判士各位一同にて慎重審議せらるべき』旨を提言した。判士長は漸く『検察官の公訴事実の説明後、休憩中に審議すべき』を告げて検察官をして公訴事実の説明を続行せしめた。二十分の休憩後意外にも判士長は『公判を続行する』と宣したのであつた。
〔以下省略〕
教育総監更迭に際する統帥権干犯嫌疑の要点
一、「省部関係業務担任規定」は統帥権の確立保全のために、大正二年八月勅定を経たるものであり、明に軍令がある。
註。軍令ニ関スル件(明治四十年九月十二日軍令第一号)
第一條 陸海軍ノ統帥ニ関シ勅定ヲ経タル規定ハ之ヲ軍令トス
〔以下省略〕
雑誌『核心』
○ 第二巻 第十一号 昭和十年 〔一九三五年〕 十一月一日発行。22.1センチ、68頁。発禁:十一月五日。
下は、内容の一部である。
・国体明徴と粛軍徹底への要望‥‥高山益人
・物心両面の一大整理‥‥東山達〔歩五末松太平〕
・対支政策と北支問題‥‥杉田省吾〔独守六後藤四郎〕
・一青年将校の言‥‥木村晃〔歩二五片岡俊郎〕
※上の〔〕内の人名は、「陸軍一部将校ノ動静概況」其十三(『二・二六事件研究資料Ⅲ』所収)のある情報による。村中孝次が投稿者に迷惑をかけないことを条件として投稿させたものであるという。
○ 第三巻 第一号 一二月合併号 昭和十一年 〔一九三六年〕 二月一日発行。22.1センチ、68頁。発禁:同日。
顧問には、頭山満・内田良平等4人、核心社同人には、大森一声・渋川善助・杉山省吾等18人の名が見える。
下は、「巻頭言」の一部。
皇国の運命の懸れる年と言はれたる昭和十一年は、外は海軍々縮会議の決裂、対支問題、内は議会の解散、相沢中佐の公判を以てその幕を切って落とされ、新春早くも前途に孕まれたる危機の容易ならざるものを予想せしめる
下は、その内容の一部。
・維新決定への妙機‥‥大森一声
・内外情勢と相沢中佐公判の維新的意義‥‥武内一鷹
・時局寸観‥‥竜落子
・相沢中佐の片影‥‥翠谷山人 〔33-41頁まで9頁〕
一.辱知一後輩の所感
二.後輩令弟の手紙
三.後輩令兄の手紙
四.辱知一青年の手紙
五.今泉看護婦の手紙
六.在福山一老人の手紙
雑誌『皇魂』
○ 第二巻第九号(通巻十六号)(臨時増刊) 昭和十年 〔一九三五年〕 八月五日発行 70頁。
一、一体『むすび』への契機‥‥巻頭
二、創刊一周年に際し維新運動に於ける本誌の新たなる使命を宣明す
三、後藤内閣の具備すべき資質
四、皇国政治の原理に関する一考察、
五、天皇親政の体様と維新原則綱領問題
六、『国体明徴』問題の発展と軍部の動向、
七、山崎慶大教授の「天皇機関説の憲法学的批判」を読む
八、所謂『七・一六異変』教育総監更迭と三長官制
九、国体明徴、
十、神国。神軍。神将。神兵。
十一、対ソ連問題管見
十二、共匪と対ソ問題
十三、維新先覚者の心構、
十四、皇魂現役二将校の免官と林陸相の所謂軍の統制
附録の「軍首脳部一般の政治的態度と皇魂軍人の任務」は、中村義明が昭和九年六月に特志の方に贈呈した非売小冊子『軍首脳部の政治的態度と中堅少壮軍人の任務』に若干の補訂を加えたものであるという。
○ 第二巻第十五号(通巻二十二号) 昭和十年〔一九三五年〕十二月二十日発行 40頁。
一、唯。寸断
二、問題の北守南攻論
三、みこと、いともかしこし。-将校の本務
四、皇国精神の十全徹底発揮に直進せよ!
五、所謂「国防」の真意義
六、御統帥のXXX相沢三郎中佐
七、故梅鉢藤田両君を偲
八、時事短評
上の「御統帥のXXX相沢三郎中佐」は、「北満第一線に在る皇軍将校有志の署名になる一文を転載せるもの」である。
○ 第三巻第二号(通巻二十三号)【臨時増刊】 昭和十一年〔一九三六年〕一月二十三日発行 発禁:二十五日 20頁。
一、人の和‥‥巻頭
二、相沢中佐の最も憂慮せる事
三、相沢中佐を打診するもの
四、相沢中佐の公判と注意すべき政治的策動
五、相沢中佐の公判は斯く指導するを要す
六、後藤内相に呈す、七、一木ー岡田ー若槻三氏の対議会観
また、裏表紙の裏にある「相沢中佐の減刑運動に対する新日本国民同盟の態度の本質」には、「ロボット山科敏の名を以て刊行せる某々氏等の筆に成る「軍門派閥の抗争」をデマつた「皇軍一体論」並びにその続編「怪文書清算論」なる怪書のそれと同一のものであり、」などとある。