この書は、松本亀次郎の日本語学習書の集大成といえるもの。内表紙には、「松本亀次郎著 訳解 日語肯綮大全 東京 有隣書屋蔵版」とある。奥付には、「昭和十三年 〔一九三八年〕 六月十五日七版発行 新四六美装本 金壹圓八拾錢 著作兼発行者 松本亀次郎 発行所 有隣書屋」などとある。
緒言と本文は、ページ上段を日本語、下段を中国語訳としている。18.5センチ、題歌・題辞3頁、緒言15頁、目次9頁、本文422頁、附図2表、松本の著作広告5頁、発売所等一覧1頁 〔総頁四百七十六頁〕。
題辞・題歌
北平大学文科学院々長 胡適博士題辞
帝室博物館総長 杉榮三郎題歌
東亜高等予備学校学監
大阪外国語学校 井上翠教授題辞
緒言
一、書名ノ由来 〔下は、その一部〕
顧ミルニ予ハ中華留学生諸子ニ、日本語ヲ教授スルコト、已ニ三十年余リ、親シク教授シタ学生ノ数モ、大方幾万ヲ以テ算ヘルデアラウ。其ノ上教科書、言文対照漢訳日本文典、漢訳日本口語文法教科書、改訂日本語教科書、漢訳日本語会話教科書、其ノ他数篇ヲ著ハシ、之ヲ以テ、終生ノ天職トシ、之ヲ以テ無上ノ至楽トシ、功名栄達ヲ顧ミズ、日夕兀々〔コツコツ〕トシテ、老ノ将ニ至ラントスルヲ忘レ、今日ニ及ンダノデアルカラ、駑鈍ノ才、敢テ庖丁ノ神技ヲ得タトハ言ハヌガ、日語教授ノ真諦ト、学生ノ日語ヲ学ブニ何ガ進歩ヲ妨ゲル覆蓋ト成ツテ居ルカト云フコトハ、詳悉シテ遺サヌ積リデアル。其処デ老後ノ思出ニ、此ノ書ヲ著シテ敢テ世ニ問フコトニシタ。サウ云フ訳デアルカラ、此ノ書ハ、即チ日本語ノ肯綮ニ中ル者全部ヲ網羅シ、其ノ上、仮名漢訳ヲ附シテ、学習ニ便シ、語法ニハ詳細ニ説明ヲ加ヘテ、覆蓋ヲ発ク職分ヲ尽シ、読者ノ容易ク其ノ大全ヲ窺フコトノ出来ル様ニ努力シタ。是ガ即チ本書ノ著アル所以デアル。
予授中華学生日語、已三十余年於茲。学生之総数、蓋以万計。関於教授之課本、曾著有 言文対照漢訳日本文典、漢訳日本口語文法教科書、改訂日本語教科書、漢訳日本語会話教科書等数篇。自問対於中華学生之教育、視為無上之至楽、終身之天職、功名富貴、淡如浮雲、兀々窮年、以迄今日、而不知老之将至矣。顧庸碌如予、雖未若庖丁之神技、然対於日語教授之真諦、與夫阻碍学生進歩之所以然、則自謂洞悉無遺。可以質諸高明者也。故特網羅的中日語肯綮之全部、並附以仮名、漢訳及詳細之説明、俾得尽窺全豹。此本書之所由来也。
二、本書ノ内容ハ、左ノ五篇ニ分レテ居ル。
第一篇 仮名ト音韻
第二篇 語法応用会話
第三篇 口語文法大綱
第四篇 文語用例一班
第五篇 外来ノ新語ト時事文
附図二表
第一 口語活用言及ビ助詞全図
第二 文語活用言及ビ助詞全図
三、本書ノ華訳
四、本書ノ題歌及ビ題辞
昭和九年四月三十日 鶴峯 松本亀次郎識
本文
第一篇 仮名ト音韻
第二篇 語法応用会話
第三篇 日本口語文法大綱
第四篇 文語用例一斑
第五篇 外来ノ新語ト時事文
附図二表
口語活用言及ビ助詞全図
文語活用言及ビ助詞全図
なお、『訳解 日語肯綮大全』をもう1冊入手した。
昭和十五年 〔一九四〇年〕 五月十五日発行の十一版で、菊版特装本である。改装されているのか(?)、題辞・題歌はない。広告は6頁で、近刊予告として松本亀次郎新著『華訳 日本語会話教典』があり、また松本亀次郎刪修『改訂 日本語教科書』などの広告がある。