蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「夢幻的バレー」 帝国劇場 (1915.2)

2020年03月30日 | 帝国劇場 総合、和、洋

   

 大正四年二月

      久々にてお目見得
   女優劇の進み方
    =從來 これまで の女優と三期卒業生=新作物を並べて技倆を試めす
      帝国劇場にて 伊坂梅雪氏談

    出し物の數々
    いろは草子
    悲劇の燈臺守
    三越玩具部
 といふ帝劇一流の西洋舞踊で指導役のローシー氏が自ら作り自ら指導して專属女優と專属洋劇部員の男女が揃つて車輪に勤める夢幻的のバレーで美しく飾りたてられた西洋や日本の人形が魂入つてオーケストラにつれて面白可笑しく踊り出すといふ新しい趣向で成つたもので賑はしい打ち出しになるのでございます
    何れも趣きを變へ
    御承知の通りに

     右田寅彦新作
 第一 小山田庄左衛門 直助權兵衛 いろは双紙 四幕 六場

     八幡大名作
 第二 喜劇 婦人同志會 一幕
     佐藤紅綠作

 第三 悲劇 燈臺守 一幕

  第四  三越呉服店玩具部

  -現実の場-

 三越人形部主任  清水金太郎
 同 店員     柏木敏
 外国人の御客   原 信
 人形製造人    岸田辰彌
 通運会社配達人  松山芳野里
 田舎者      ローシー

 -夢の場-

 妖精         ローシー夫人
 酒保         高木徳子
 日本娘人形      藤間房子
 西洋赤兒人形     澤モリノ
 スイスランド人形   花園百合子
 スパニツシユ人形   河合磯代
 支那人形       高田春夫
 日本武士人形     櫛木梨花
 番兵人形       南部邦彦
 道化人形       菅雪郎
 同          高田春夫
 
 西洋赤子人形     湯川照子
 同          天野喜久代
 同          澤モリノ
 同          花房しづ子
 アレキシス      石井林郎
 同          柏木敏
 同          葉須淳
 同          石井行康

 スイスランド人形   山根すみ子
 同          井上ますの
 同          原せい子
 同          花園百合子

 兎人形        岸田辰彌
 同          櫛木梨花
 同          服部曙光
 同          小島洋々

 スパニツシユ人形   河合磯代
 同          石神たかね
 同          中山歌子
 同          宮崎年枝

 佛国十八世紀時代人形 松本銀杏
 同          澤村宗彌
 同          松本錦一
 同          松本玉子

 婦人客        香川玉枝
 同          村田美穪子
 同          櫻井八重子
 同          静香八千代
 同          四條京子
    帝國劇場附属管絃樂部員

 帝國劇場洋樂部員   樂長 竹内平吉

 第一ヴァイオリン 荻田十八三
 同        吉田盛孝
 同        山崎榮二郎 
 第二ヴァイオリン 佐藤忠恕
 同        渡邊吉之助
 同        小松三樹三 
 ヴイオラ     蛯子正純  
 同        紣川藤喜知 
 セロ       内藤常吉  
 同        村上彦三 
 フリユート    横山國太郎 
 オーボエ     八尾五郎 
 クラリネツト   横須賀薫三 
 同        大野忠三 
 ホルン      吉田民雄 
 同        篠原慶心 
 トロンペツト   古田竹二 
 同        加福一雄 
 トロンボン    加順 
 ドラム      渡邊金治

     ローシー作並に指導 背景製作 北蓮藏 大道具製作 長谷川勘兵衛 電気主任 秀文一
 第四 夢幻的バレー 一場

 『三越呉服店玩具部』こゝは東洋一の大デパアトメントストーア東京三越呉服店第一階の光景、折しも文具売出しの季節 シーヅン とて店内到る処玩具人形等を陳列されさながら昔噺の王国 フアリーランド に入 い るの心地がされまする。かくて劉喨 りゅうりょう たる音楽聲裡に幕が上 あが りますと、此店の支配人入来り店員をして店内の掃除をさせまする、その間に入つて来たのは赤毛布 あかケツト の田舎客咥 くは へ煙管 きせる で店内をまごつくのを店員に注意されるのが手初めに、侍の人形を活きた人と間違へて敬礼する。螺旋 ぜんまい 仕掛の赤兒 あかんぼ の人形を引 ひき くりかへして閉口する。真正 ほんとう の外国婦人を人形と間違へて失礼な事をする。種々な滑稽の裡に大勢のお客が入つて来て陳列の玩具に驚嘆し一部の客は支配人をして仕舞ひ置ける人形を出さしめる。侍人形の踊、瑞西 スイツル 人形の踊、赤坊人形の踊、支那人形の踊、西班牙 スペイン 人形の踊、日本美人人形の踊、西洋毛人形の踊などで種々滑稽な振事 ふりごと あり、其中「独逸製」と記されたる人形の箱を持出し来れば、人形はバラバラに毀 こは れて居る。かゝる間に閉店の時間来り手お客はおのがじし立去りますと支配人も人形の飾箱 シヨーケース 其他に幕をおろして退場します。
 やがて神韻縹渺たる曲となりて窓よりさし入る月光は夢の如く淡くなります。時計十二時を報ずると、正面階段下の飾窓 ショーウインドウ の帷 とばり は左右に開かれて、現じ出す一箇のフエアリーランドの美しき風景の裡 うち に寝 い ね居たる妖精は徐 しづか に立つて飾窓の幕を指 ゆびさ せば幕は自然に披 ひら かれて前 さき に面前に現はれたる種々 いろいろ なる人形と兎、アレキシス、アンビール時代人形など幾十となく現はれ総踊となります、此間に酒保女の姿したる一少女の人形は巧妙なる足指踊 トーダンス を演じます之は足の爪先だけで踊るので日本人の間では空前の事でございますやがて中央の天井より二十四條の紅白のリボン降来 をりきた りあらゆる人形はそれを手にして、踊り狂ふ間に日本騎兵の人形四箇現はれ之に加はりて又踊る、踊りゝて尚踊る間に夜は開放 あけはな れんとして幕。

    

 ・上左の写真:「(帝国劇場夢幻的バレー)酒保(高木徳子)妖精(ミセスローシー)」  とある絵葉書のもの。
 ・上中の写真:「帝国劇場 (大正四年二月興行)(夢幻的バレー)三越呉服店玩具部の場」とある絵葉書のもの。
 ・上右の写真は、「帝国劇場二月狂言 第四≪夢幻的バレー≫」とある演芸雑誌の口絵にあるもの。
   藤間房子の日本娘人形〔中央奥左〕 
   ローシー夫人の妖精 〔中央奥〕 
   高木徳子の酒保   〔中央奥右〕 
   原信子の外国人のお客〔左上の枠〕 
   高木徳子の酒保   〔右上の枠〕 
   清水金太郎の三越人形部主任〔右下お辞儀の人物〕 
   ローシーの田舎者  〔左下のお辞儀の人物〕



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