蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

梅蘭芳 「支那劇」 帝国劇場 (1924.10)

2020年03月29日 | 梅蘭芳 来日公演、絵葉書他
     

  大正十三年十月 改築記念興行 毎夕四時開場 四時半御挨拶 五時開演
   
 ▼ ‥‥ 観客各位に謹謝す ‥‥ ▲

 當劇場は昨秋の大震災に際し不幸類燒の厄に遭遇しさしもの大伽藍も僅に外廓を殘し餘は盡く灰燼に歸してしまひましたけれど直ちに改築に着手し鋭意工事を督勵致しました結果十有三ヶ月の今日漸 ようや く竣成再び各位にまみゆる事を得ました是れ一重に各位平素の御愛顧の賜と當劇場の感謝措 お く能はざる所であります。吾曹 われら は是れに酬ゆる爲め此機會に經營興行兩方面共從來と面目を一新し我國劇壇の爲め一層健鬪を續ける覚悟で居ります。願くば震災以前と同樣御後援御同情を賜らん事を茲に切願する次第で御座います。
  帝國劇場    

  帝劇の改造 

 耐震耐火を以つて誇つて居りましたが我が帝国劇場も、大正十二年九月の劫火には遂に其紅舌 ぐぜつ の舐めるところとなりました、顧みて聊 いさゝ か其高言に愧ぢる次第でもありますが、火災に対しては数段に防御の手段が講じてありましたが、その最も多く依頼して居つた消火栓が効を為さなかつたのですから、あの様な全都市を破壊する災害に対しては、先づ人力の抗し難きものとして、御寛容を願ふより外はないと存じます。尤も此点も大 おほい に鑑みる所あり、萬一水道破損等の場合にも防火上毫も差支へないやうに、今回は構内数ヶ所に窄井 さくせい し、現に清冽玉の如き清水が滾滾 こんゝ として湧出でて居りますから、今後は最早やこの災害を復 ふたゝ びすることはありますまい。たゞし地震の破壊力に対しては、完全に其建造物を保持し得たのは、窃 ひそか に我徒の満足を禁じ得ないところであります。
 要するに、その受けました災禍は、内部の可燃性物体にのみ止まつたのでありますから、従つてその復興も斯 か く之を速 すみや かにすることを得た譯であります。しかも今回の我が帝国劇場の復興たるや、単に旧状態の復活と云ふに止まらず、全然新時代に適応した新劇場として新たに復興したのであります。
 帝国劇場が創建されましたのは、明治の末年で、当時時勢の趨向を察し、時代の要求よりも既に数歩先に出てゐたのでありますが、其後欧洲に大戦を見、我邦 くに の国情にも大なる変化を来し、世態の怱忙たる推移の為めには、未だ決して全然時勢後 おく れに堕してはゐませんでしたが、しかも早晩改造の必要あることは我徒の疾 とく に自覚してゐた所であつたのです。それが測 はか らず、この大震災を奇縁として、改造の機会を早からしめたのは、大に大方の御満足を購ふに足る所以と信じ、創建の時には渝 かは らず、今後も尚ほ最も進歩した劇場として、幾久しく御眷顧 けんこ を受くるに適するものと深く期待いたすのであります。

     幸田露伴博士加筆、平山晋吉新作、鳥居清忠舞臺装置
 第一 史劇 神風 三幕

 第二 浄瑠璃 源氏十二段 一幕
     (此浄瑠璃は大倉男爵米壽賀讌の時のみ上演す)

 第二 浄瑠璃 紅葉宴衛士白張 一幕
     (本興行にのみ上演)
         常磐津連中 
     
     林和作 鳥居清忠舞臺装置
 第三 世話劇 おつま 八郎兵衞 兩國巷談 三幕

     井上弘範舞臺装置
 第四 梅蘭芳支那劇一幕 
         外題毎夜変更

 藝員
  梅蘭芳(青衣)
  姜妙香(小生)
  姚玉芙(青衣)
  陳喜星(老生)
  朱湘泉(武生)
  朱桂芳(武旦)
  李春林(老生)
  札金奎(老生) 
  陳少之(老生)
  喬玉林(崑曲老生)
  孫輔庭(老旦)
  張蕊香(花旦)
  羅文奎(丑)
  霍仲三(浄)
  韓金福(小生)
  賈多才(丑)
  孫少山(老生)
  朱斌仙(旦)
  董玉林(旦)
   他數名
 樂員
  徐蘭元
  何斌奎
  孫惠亭
   (以上次第不同)

  第四 梅蘭芳  支那劇 一幕

 梅蘭芳支那劇は毎夜外題を戀更し、本筋書には一々夫を掲載する餘白無之候に付其詳細に亘りては、別冊にて發行し、女子案内人の携帯販賣致し居候『支那劇解説及筋書』につき御了解願上候

 十月廿日【麻姑獻壽】(西皮、二黄、崑曲)
   麻姑 (仙女)      梅蘭芳
   王母 (天界の支配者)  姚玉芙
 同廿一日【廉錦楓】 (西皮、二黄)
   廉錦楓(君子國の孝行娘) 梅蘭芳
   林之洋(嶺南の商人)   李春林
   多九公(林の親友)    札金奎
   唐以亭(林の妹婿)    姜妙香
   良氏 (錦楓の母)    孫輔庭
 同廿二日【紅線傳】 (西皮、二黄)
   薛嵩 (節度使)     未定
   紅線 (薛の小間使)   梅蘭芳
   田承嗣(他の節度使)   霍仲三
   趙通 (承嗣の部下)   未定
   李固 (同前)      未定
 同廿三日【醉楊妃】 (平調)
   楊貴妃(玄宗の寵妃)   梅蘭芳
   裴力士(同  寵臣)   姜妙香
   高力士(同   前)   羅文奎
 同廿五日【麻姑獻壽】(西皮、二黄、崑曲)
   麻姑           梅蘭芳
   王母           姚玉芙
 同廿六日【奇雙會】 (吹腔)
   李桂枝(李奇の娘)    梅蘭芳
   李奇 (馬商人)     喬玉林
   趙冲 (褒城縣令)    未定
   保童 (巡按使李奇の子) 姚玉芙
 同廿七日【審頭刺湯】(二黄)
   雪雁 (莫懐古の愛妾)  梅蘭芳
   陸炳 (近衛の武官)   未定
   湯勤 (懐古の門下生)  羅文奎
   威繼光(薊州總兵)    札金奎
 同廿八日【醉楊妃】 (平調)
   楊貴妃(玄宗の寵妃)   梅蘭芳
   裴力士(同  愛臣)   姜妙香
   高力士(同    )   羅文奎
 同廿九日【虹霓關】
   辛文禮(虹霓關を守る隋の將)霍仲三
   東方氏(辛の夫人)    梅蘭芳
   玉伯黨(賊將の一人)一人 姜妙香
   侍女 (東方氏の腰元)  姚玉芙
   秦瓊 (賊徒の首領)   札金奎
   家將           羅文奎
 同三十日【紅線傳】
   廿二日と同じ
 同卅一日【廉錦楓】 (西皮、二黄)
   廿一日と同じ
 十一月一日【審頭刺湯】(二黄)
   廿七日と同じ
 同二日 【御碑亭】 (西皮)
   王有道(浙江の讀書人)  未定
   孟月華(有道の妻)    梅蘭芳
   王淑英(有道の妹)    姚玉芙
   柳生春(浙江の讀書人)  姜妙香
   孟徳祿(ボーイ)     羅文奎
   孟父 (月華の父)    札金奎
   孟母 (月華の母)    孫輔庭
   申嵩 (試験官)     陳少五
 同三日 【虹霓關】
   廿九日と同じ
 同四日 【黛玉葬花】
   賈寶玉(賈家の若様)   姜妙香
   林黛玉(寶玉の從妹)   梅蘭芳
   茗煙 (ボーイ)     羅文奎
   襲人 (腰元)      姚玉芙

 以下、関連写真である。

          

 ・上左から1番目の写真: 梅蘭芳氏の『麻姑献寿』〔『国際写真情報』十二月号 第三巻 第十四号 より〕

  梅蘭芳氏の『麻姑献寿』
  中華民国当代の第一人者梅蘭芳氏は帝国劇場の復興劇大倉男米寿の賀莚に出演の為来朝して十月二十日帝劇に其妙技を揮つたが、写真は得意の『麻姑献寿』と云ふ御目出度い芝居で、仙人「麻姑」が延命の露を集めて西王母に献ずると云ふ筋、左方が梅蘭芳氏の麻姑である。
  MEI-LANG-FANG IN “MAKO-KENJU”
  Mr. Mei-Lan-Fang the famous Chinese actor, appeared on the stage of the reconstraucted Imperial Theater on October 20th, and played his most favorite “Mako-Kenju”. Mako, the nymph(Mei-Lan-Fang, seen at the left) seeking for the exixir of life, and offers it to Sei-O-Bo.

 ・同2番目の写真: 梅蘭芳の舞台面  MEI-LAN FANG ON THE STAGE 〔『写真通信』 大正十三年 十二月号 第百三十号 より〕
 ・同3番目の写真: 「梅蘭芳の廉錦楓 -帝劇にて- 」 〔『アサヒグラフ』(三巻二十号:十一月十二日)の表紙〕 
 ・同4番目の写真: 梅蘭芳の『貴妃酔酒』 帝劇記念興行 〔『映画と演芸』 第一巻第四号 十二月 より〕

 なお、支那劇所感には、「支那劇つまらん、こんなものか。」という観客の書き込みがある。


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