大正二年九月狂言
佛國、シボー、デユリユー合作
二宮行雄抄譯 ローシー指導
第一 喜歌劇 マスコット 三場
山崎紫紅作
第二 史劇 三七信孝 三幕
右田寅彦脚色
第三 祖父は山へ柴苅に 楠昔噺 二幕
祖母は川へ洗濯に
第四 浄瑠璃 一樹蔭雨合綠 一幕
第一
第一場 ある田舎の農場
第二場 ピオムピノー宮殿
第三場 森林中の露營
一 コッコー 柏木敏
一 百姓男 服部曙光
一 同 原田潤
一 同 大勢
一 百姓女 大勢
一 ピッボー 牧羊者 淸水金太郎
一 ベッチーナ 河合磯代
田舎娘所謂マスコット
一 アンゼロ 小姓 小島洋々
一 ローレント十七世 南部邦彦
ピオムピーノ公爵
一 皇女フィアメッタ 大和田園子
一 ピザの皇太子 菅雪郎
フリッテリニ
一 廷臣 大勢
一 貴婦人 中山歌子
一 同 湯川照子
一 同 石神たか子
一 同 大勢
一 ボヘミヤ人ビアンカ 澤美千代
一 宿屋の主人マテオ 石井林郎
一 アントニオ中尉 松山芳野里
一 男女兵士 大勢
帝國劇場管絃樂部員
竹内平吉指揮
佛國、シボー、デユリユー合作
二宮行雄抄譯 ローシー指導
第一 喜歌劇 マスコット 三場
『第一場、さる田舎の農場』幕開くと舞臺は都 すべ て葡萄収穫祭の折にして、ロッコーと云へる農夫は、打續いたる災難に弱り果て、救 すくひ を兄に求むると、兄なる人は、七面鳥の世話をする女のベッチーナと云ふものを送り、此女こそ運勢を引付ける、世にも不思議の魔力のある福の神乃ちマスコットなれば、自然に幸福なる身分になる事が出來ると告げ、追々其效驗 しるし が現はれ來る、茲へ此ピオムビノーの領主ローレント十七世と云ふ、運の甚だ宜しからざる王様が、狩場の歸途 かへりみち 皇女フィアメッタ、皇婿フィリッテリニを從へて通り懸り、ロッコーがマスコットを有 も てるを見、權威を以て、ロッコー諸供 もろとも 我が宮廷 やしき に連れ行けば、ベッチーナの愛人牧羊者 ひつじかひ のピッポーは之を奪ひ還さんと思ひ、竊 ひそか に宮中に入込む。
『第二場、ピオムビノー宮殿』歸館後ローレントはベッチーナを伯爵夫人、ロッコーを侍從長となして世の人口を防ぐ、マスコットの魔力は、傳説によれば、思ふ男と結婚する時は忽ち消え失すると云ふ、故にローレントとロッコーは、極力ピッポーをベッチーナより遠ざけんと謀る、ピッポー巧にサルタレロ一座の俳優に變装して、ベッチーネナに近づきしも、事露顯 あらは る、ローレントはマスコットのベッチーナがピッポーと結婚して、其效力を失ふ可きを恐れ、皇女フィアメッタが同じくピッポーを慕へるを見、ピッポーを公爵となして娘との結婚を許し、ベッチーナとの仲を割く、フリッティリニは、ローレントが恣 ほしいまゝ に約束を破棄せしを怒って、戰 たたかひ を宣し、兩國茲に戰端を開く。
『第三場、森林中の露營』ピッポーは巧にベッチーナを盗み出し、携 たづさ へてフィリッテリ方に投じ、ローレント方負戰 まけいくさ となる、ローレント、フィアメッタ、ロッコーと、田舎廻りの音樂師に變装し、兩人の行方 ゆくへ を尋ね、フィリッテリニの陣中に來り、捕虜となる、されどフィリッテリニはフィアメッタに悔悛の狀現はれたるを見、罪を許して妻となし、和議を結び、ベッチーナはピッポーと結婚して、新 あらた なるマスコットを生む事となり四方目出度く局を結ぶ。
帝國劇場洋樂部員
第一 ヴアイオリン 山崎榮三郎
同 小松三樹三
同 荻田十八三
第二 ヴアイオリン 吉田盛孝
同 佐藏忠恕
同 吉野俊夫
ヴイオラ 蛯子正純
同 紣川藤喜知
セロ 小林武彦
同 内藤常吉
同 村上彦三
ダブルベース 荒木茂次郎
同 内藤彦太郎
フリユート 横山國太郎
オーボエ 八尾五郎
クラリネツト 横須賀薫三
トロンペット 小田越男
同 吉田民雄
トロンボーン 木村仙吉
チンバニー 渡邊金治