2013年はこの“景気のいい”ニュースで始まった。1月5日、東京・築地の中央卸売市場で行なわれたマグロの初競りで、寿司チェーン「すしざんまい」の喜代村が1本222キロの大間産クロマグロを1億5540万円で落札。2012年の最高値5649万円の3倍近い過去最高額となった。
この伸び方だと、2014年の初競り(1月5日)ではまさかの「2億円」台も──こんな期待をぶつけるべく、同社の木村清社長に取材を申し込んだが、長期の海外出張中のためあえなく断念。
一方、2008年から2011年まで4年連続で最高値で落札し、2012年、2013年とすしざんまいとの競りに敗れた「板前寿司ジャパン」の中村桂社長に意気込みを聞くと、意外な答えが返ってきた。
「初競りには参加しますが、今年は最高値競争をやるつもりはありません。マグロ1本に1億円を超える額はやはり異常ですし、こういう事態を収束させる責任も私たちにはあると思うので。当社が参加しないことで、222キロのマグロだと、450万~550万円くらいの値段に戻るのではないでしょうか」
テレビや新聞への大露出で、広告効果が40億円とも報じられたすしざんまいのマグロ初競り戦略。ライバルの“不参戦”を一番嘆いているのは名物社長かもしれない?
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去年の記事は・・・
1月5日の東京・築地市場の初競りで、222kgの青森・大間産マグロが、史上最高額となる1億5540万円の値をつけた。落札したのは寿司チェーン店「すしざんまい」。
この日の早朝4時すぎ。「すしざんまい」を運営する喜代村の木村清社長(60才)は、まだ暗い寒空の下、中央卸売市場へと向かった。競りが始まる前に、狙いを定める“大物”を自らの目でも確かめるためだ。5時から始まる初競りを託されたのは、喜代村商品本部の綱島克之さん(41才)。木村社長は「頑張れ」とだけ声をかけ、初競りの様子を見守った。
ライバルと目されたのは、2008年以降、すしざんまいと初競りを競ってきた「板前寿司」。国内に5店舗、香港を中心にアジアで56店舗をチェーン展開している。築地の仲卸「やま幸」の山口幸隆社長が板前寿司の依頼を受けて、競りに参加した。
1kg当たり2万円から始まった競りは、1万円刻み、2万円刻みでどんどん値が上がり、開始からわずか50秒で20万円を超えた。周囲が固唾をのんですしざんまいと板前寿司の一騎討ちを見守る中、楽々と45万円、つまり総額1億円を突破。
その後も上がり続け、山口さんが「68万円」と告げ、綱島さんがすかさず「70万円」と返すと、ついに山口さんは首を横に大きく振った。場内からは大きなどよめきが起きた。すしざんまいが1kg70万円、1億5540万円で落札して決着がついた瞬間だった。
板前寿司は2008年から2011年まで立て続けに初競りでマグロを高値で落札。オーナーが中国人であることも話題を呼んだ。板前寿司ジャパンの中村桂社長はこう語る。
「実は11月末までは初競りに参加するかどうか決めかねていて、いったんは不参加を表明したんです。でも、昨年、すしざんまいと競り合ったときに、私たちが勝つと中国にマグロを持って行かれるかのようにマスコミで報じられたことで、贔屓にしてくれているお客さんも、私たちスタッフも悲しい思いをしました。
本当は一昨年までも日本で提供していたんです。そこで今年こそ競り落として、初競りのマグロをもう一度、日本のお客さんに味わってもらいたくて、再び参戦したんです。結果的には残念でしたが。当初、1億2000万円までは出そうと考えていました。山口さんが少し意地になって1億5000万円まで競りを続けてくれましたが、あそこまで上がってしまうと…」