[18日 ロイター] - 米大統領選に向けフィラデルフィアで7月開かれる民主党全国大会では、引き続き候補指名をめぐる激しい争いが繰り広げられ、党が何を支持するかについての大きな議論が展開するだろう。
17日の西武オレゴン州の予備選では、バーニー・サンダース上院議員がヒラリー・クリントン前国務長官に勝利した一方、南部ケンタッキー州はクリントン氏が僅差で勝った。10日に行われた南部ウェストバージニア州の予備選でも、サンダース氏ほぼ16ポイントの差をつけて勝利したにもかかわらず、クリントン氏の支持者は彼に身を引くよう求めている。
クリントン陣営は、党大会を筋書き通りに運ぶことで同氏を支える党の団結を誇示し、共和党の指名獲得が確実視される不動産王ドナルド・トランプ氏に対する攻撃に集中したいと考えている。
ただサンダース氏の早期撤退はあり得ない。同氏は選挙戦によって党を変貌させ、国の行方を変えたいと思っており、幾度となくこうした議論を党大会でも行うと語っている。
多くの世論調査では、クリントン氏より、サンダース氏を民主党の大統領候補にする方が、トランプ氏に対して大差で勝ちやすいという結果が出ている。サンダース氏はこのデータを材料にして、クリントン氏に対し「自分の政策理念をもっと採用すれば大統領選本選では不利になるどころかむしろ有利になる」と迫ることができよう。
選挙運動のスタート時点から、サンダース氏は、自分が政策課題として掲げるテーマは、民主党が擁護すべき核心部分に触れるものだ、と主張してきた。
サンダース氏は、連邦最低賃金時給15ドルの支援、組合結成権の保障、環太平洋連携協定(TPP)への反対を含む通商政策の変更、国民皆保険制度の実現、巨大銀行の分割、公立大学の無料化、水圧破砕法(フラッキング)による資源探査の禁止と炭素税導入を含む強力な気候変動対策などを、民主党の政策綱領に盛り込むことを要求している。
またサンダース氏は、インフラ公共投資に向けた累進課税の強化、大量収監の停止、包括的な選挙制度改革、巨額の政治資金の制限などを掲げている。
サンダース氏は民主党の党規に関しても、選挙運動中の議論における「スーパー代議員」の役割と人数、また開放的・閉鎖的予備選と「スーパー代議員」の整合性について疑問を投げかけようとしている。
問題は、これに対してクリントン氏とその陣営がどう答えるか、という点だ。選択肢の一つは、サンダース氏を支持する若者のエネルギーを称賛し、同氏の特徴的な改革案のいくつかを支持することによって、自身のリーダーシップに対する自信を示すことだ。
そうすれば、彼女が繰り返し口にするとおり、「われわれには、分裂するよりも団結すべき理由がたくさんある」と示すことになろう。
サンダース氏の挑戦をうまく取り込むことができれば、クリントン氏は「継続性」を象徴する候補から「変化」をもたらす候補へと変貌を遂げやすくなる。
オバマ大統領の支持率は上昇しつつあるが、調査では相変わらず、オバマ政権下とは異なる方向に米国が進むことを望む有権者が60%もいる。オバマ大統領の政策が継続されることを望む者は全体の3分の1しかいない。サンダース氏を取り込むことで、クリントン氏は自分が先頭に立って推進する変革を強調できる。
あるいは、大統領選本選を三角形に近い構図へとシフトさせる一環として、サンダース氏による挑戦をどれも却下するという判断もあり得る。
しかしこの場合、党大会は大荒れになり、サンダース氏支持者の怒りを買う可能性が高い。
サンダース氏がフィラデルフィアで行われる党大会の場で、自らの主張を取り込むかどうかの選択を迫る可能性は高いようだ。
サンダース陣営は、クリントン陣営を相手に、党大会の規定や党の政策綱領について交渉する構えを見せている。
彼は委員会会合や、党大会の会場でもこの問題を論じる用意を進めている。複数の予備選で勝利を重ねているため、サンダース氏が党大会で演説を行う順番はテレビのプライムタイム枠の時間帯になると予想され、全米に向けて語りかける舞台が与えられることになる。
またサンダース氏は、より大きな脅威であるトランプ氏への抵抗に向けて、自らの支持者の動員を続けていく可能性が高い。
一方、クリントン氏はサンダース氏に対し、自分がオバマ氏を支持したように「無条件で」自分を支持してもらいたいと考えている(実際には、クリントン氏が選挙運動で背負った約2200万ドルの負債を返済するのに協力するとオバマ氏が約束した後で、ようやくオバマ氏支持を表明したのだが)。
指名獲得は確実とされるクリントン氏は、もちろん党大会の主導権を握るだろう。盟友である民主党全国委員会の委員長を務めるデビー・ワッサーマン・シュルツ氏は、クリントン支持者とともに綱領・党規委員会を繰り返しており、当然ながらサンダース氏から公然たる非難を受けている。
だが、サンダース氏を締め出すことは愚の骨頂である。党大会に臨むサンダース氏が獲得した票、勝利した予備選、そして党大会に連れてくる代議員の数は、民主党内におけるここ数十年の反主流派候補の誰よりも多いのだ。
1980年にジミー・カーター大統領(当時)に抵抗したエドワード・M・ケネディ上院議員、1984年にウォルター・モンデール元副大統領と指名を争ったゲイリー・ハート上院議員も、サンダース氏には及ばない。いわゆる「ミレニアル」世代や無党派層など無視できない有権者ブロックが、サンダース氏を圧倒的に支持しているのである。
こうした支持者たちは、サンダース氏とその理念が、フィラデルフィアでの党大会でどのように扱われるかという点に特に強い関心を注いでいる。
サンダース氏が全体として狙っているのは、自分の掲げた政策課題が民主党の政策綱領に反映されることである。実際には、候補者が党の政策綱領を無視することも多いが、それでもやはり、党の優先課題と価値観の目安にはなる。
サンダース氏にとって、最初の一歩はクリントン氏自身との直接交渉になるだろう。彼女がサンダース氏の政策課題のうち、どれを採用するのか探ってみるためだ。たとえば、政府調達契約においては、従業員に生活可能な賃金と十分な給付を与えている企業との契約を優先するような大統領命令を出すこと、あるいはヘッジファンドを経営する大富豪が自分の秘書よりも低い税率で納税できるような税制上の欠陥をなくすことなどについて、サンダース氏はクリントン氏からの確約を求めることになろう。
通商問題に関しては、サンダース氏の影響により、すでにクリントン氏は左寄りの姿勢に傾いている。彼女は、オバマ大統領が進めるTPP法案に反対するに至った。また、査定賃金を時給15ドルに引き上げる法案に署名することも約束し、金融界の混乱が実体経済を動揺させることを二度と許さないとも発言している。水圧破砕法についても、実質的に不可能になるくらい厳しく規制すると口にしている。
政治資金改革についての政策は、実質的にサンダース氏と同様である。
だがサンダース氏は、過去にクリントン氏が一笑に付した公立大学の無料化を支持するよう、さらに圧力をかけている。
この路線に沿って広範なプログラムを採用すれば、これまで圧倒的な差でクリントン氏よりサンダース氏に投票してきたミレニアル世代を取り込みやすくなるだろう。
党大会のルール次第ではあるが、サンダース氏は、自身の特徴的な提案を党大会の全体会議に持ち出すうえで十分な数の代議員数を確保する可能性が高い。たとえば国民皆保険制度、炭素税、民主党予備選におけるスーパーPAC(政治活動特別委員会)の禁止、巨大銀行の分割などである。クリントン派代議員の多くは、こうした提案の1つないし複数を支持している。
共和党内での議論は、トランプ氏の政策よりもその人格が焦点になっている。フィラデルフィアでの民主党大会では、実質的な議論が行われるだろう。つまり、党の政策と優先課題、そしてこの国が進む方向である。
こうした対比一つを取っても、大統領選本選に向かう民主党候補者にとって追い風になる可能性が高い。
以上、ロイターコラム
>サンダース氏は、連邦最低賃金時給15ドルの支援、組合結成権の保障、環太平洋連携協定(TPP)への反対を含む通商政策の変更、国民皆保険制度の実現、巨大銀行の分割、公立大学の無料化、水圧破砕法(フラッキング)による資源探査の禁止と炭素税導入を含む強力な気候変動対策などを、民主党の政策綱領に盛り込むことを要求している。
>通商問題に関しては、サンダース氏の影響により、すでにクリントン氏は左寄りの姿勢に傾いている。彼女は、オバマ大統領が進めるTPP法案に反対するに至った。また、査定賃金を時給15ドルに引き上げる法案に署名することも約束し、金融界の混乱が実体経済を動揺させることを二度と許さないとも発言している。水圧破砕法についても、実質的に不可能になるくらい厳しく規制すると口にしている。政治資金改革についての政策は、実質的にサンダース氏と同様である。
サンダースは、クリントンに自分の政策をやるように圧力をかけているようだ。
日本の国民皆保険制度の実現も入っている。
私が期待しているのは、TPPへの反対をクリントンも口先だけでなく、TPPをやらない動きをしてほしいことである。
サンダースの要求をクリントンが受け入れないとサンダース支持者がトランプに流れるから無視できない.