【北京=三塚聖平】中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相は12日にシンガポールのアジア安全保障会議で行った演説で、バイデン米政権に対して台湾問題に干渉しないよう改めて警告すると同時に、米中関係の緊張は望まないというメッセージも送った。今秋の共産党大会で習近平総書記(国家主席)の3期目続投が掛かる中、内外情勢の不安定化を避けたいという習指導部の本音がうかがわれる。
「誰かが台湾を中国から分裂させようとするならば、われわれは代価を惜しまずに徹底的に戦う」
魏氏は12日の「地域秩序に対する中国の願い」と題した演説で、台湾問題に関して力を込めた。中国国防相がアジア安保会議に出席するのは3回目だ。
魏氏は、米国を念頭に「ある国は『一つの中国』という原則と約束に背き、『台湾独立』分裂勢力を支持している」と反発した。
同時に「(米中)両軍は戦略的な相互信頼を高めて誤った判断や誤解を避け、リスクをコントロールして摩擦と衝突を防ぐべきだ」と米側に呼び掛けた。
10日のオースティン米国防長官との会談でも、魏氏は、台湾問題で米側を強く牽制(けんせい)するとともに、「両軍は衝突や対抗を回避すべきだ」と訴えている。
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)は10日の社説で、米中国防相会談で中国側が「台湾問題でレッドライン(越えてはならない一線)を引き、再びはっきりとした態度と意志を見せた。これは米国と関係国が危険な誤った判断を行うことを避けるのに役立つ」という意図を強調した。
中国側としては党大会が迫る中、国内向けには強気な態度を崩すことはできないが、米国との緊張がさらにエスカレートする事態も避けたいのが本音だ。習指導部の威信にかかわる台湾問題では一切譲歩しないが、米側との衝突も望まないと伝えることを、魏氏のアジア安保会議への出席を通じて狙ったとみられる。
ただ、中国側には対立回避の思惑があるとはいえ、台湾問題に関する米国などの懸念を「内政干渉」と切り捨てていることに変わりはない。中国軍の戦闘機が台湾の防空識別圏(ADIZ)への進入を繰り返すなど、軍事的な緊張が高まるリスクはくすぶり続けている。
以上、産経新聞
中国は、言っていることとやっていることが違う。
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