はさみの世界・出張版

三国志(蜀漢中心)の創作小説のブログです。
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臥龍的陣 太陽の章 その110 友の再出発

2023年04月12日 10時12分40秒 | 英華伝 臥龍的陣 太陽の章



夏侯蘭は、趙雲が再三、引き留めたにもかかわらず、けっきょく首を縦に振らずに北へ去っていった。
「妻の墓に良い報告をしたいのだ。
それに、おれを助けてくれたやつに、報告をせねばならぬからな」
夏侯蘭の目には、新野で再会した時のようなすさんだ光は、もうない。
その代わりに、夏侯蘭は、穏やかな顔をしている一方で、どこか虚脱したような、疲れた雰囲気もただよわせていた。


背には、塩漬けになった劉琮の首がある。
襄陽城にいまも存命である劉表や蔡瑁への取引材料になるであろう劉琮の首を、夏侯蘭に持たせてもよいのか、趙雲は孔明にたしかめたが、孔明はあっさりとこう言った。
「たとえわれらが首を示して、劉琮は『狗屠』として討ち取られたと言っても、向こうはすでに影武者を用意して、われらの主張をはねのけることだろう。
劉表は人事不省の状態だから、首があろうとなかろうと、このさき、あまり影響はないはずだ」


そうだろうかと趙雲は心配になった。
おそらく、孔明は夏侯蘭の身の上に同情しているのだ。
こいつの優しさが、あとで問題を呼ばないとよいが、と思ってからすぐに、
『そうなったときは、俺が一緒に解決してやればよいか』
と思い直した。


「孔明どの、いろいろ世話になった、礼を言う。
それから、貴殿のことば、わが胸にも沁みた。
おれもこれから、変わっていかねばなるまい」
夏侯蘭は短くそう言って、ていねいに拱手をすると、樊城から許都へ戻っていった。
憎悪と悲しみに押されて越えてきた道を、こんどは逆にたどっていくのだ。
その胸に去来するものはなにか、趙雲にはわからない。
ただ、夏侯蘭のこれからの人生が、すこしでも太陽に照らされるものであればよいなと、趙雲は願う。


つづく

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さて、今日は短めとなりましたが、お許しくださいませ。
明後日か明々後日に、臥龍的陣は一区切りとなります。
その先…うーーーん、まだ迷っています。
いろいろおかしなことが起こっておりましてねえ…いや、対外的には平和なんですが、自分の内側のことで。
どーしたものかしら。近日中に答えを出さねばなあ…

というわけで、今日もまた、よい一日をお過ごしくださいませ('ω')ノ


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