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帯とけの枕草子(拾遺三)きゝにくき物
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、この時代の人々と全く異なる言語感覚で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子(拾遺三)きゝにくき物
文の清げな姿
聞きづらいもの、声の良くない人が、もの言って笑ったり、うちとけている気配。居眠りして陀羅尼読んでいる。お歯黒つけながらもの言う声。殊にどうという事の無い人は、もの食いながらもの言うのよね。ひちりき習っている間。
原文
きゝにくき物。こゑにくげなる人の物いひわらひなど、うちとけたるけはひ。ねぶりてだらによみたる。はぐろめつけて物いふこゑ。ことなることなき人は、物くひつゝもいふぞかし。ひちりきならふほど。
心におかしきところ
利きにくきもの、小枝憎げな男が情けを交わし笑ったりしてうちとけている様子・聞きにくい。寝言で陀羅尼読んでいる・御利益なし。お歯黒つけて情けを交わす小枝の男。異なることのない(一義な物言い)の人は、物食いながら物言うのよねえ・聞きづらい。ひちりき倣うさわがしい火門・小枝効いていない。
言の戯れと言の心
「きゝにくき…聞きにくい…利きにくい…効きにくい」「こゑ…声…小枝…小身の枝…おとこ」「こ…小…接頭語…小さい」「ものいふ…もの言う…言葉を交わす…情を交わす」「わらひなど…笑いなど…つぼみが開く…花が咲く…おとこ花咲く」「など…他にも意味のある言を示している」「ことなることなき人…殊なる事のない人…異なる言のない人(一義な物言いの人)…事成ることのない男」「ひちりきならふ…篳篥習う…ひちりき倣う…ひちりき似…やかましい…さわがしい」「ひちりき…管楽器の一種…やかましくて下手に吹くと不快な音のする楽器」「ならひ…習い…倣い…模倣…似」「ほど…間…程度…ほと…陰…火門…思火の門」「と…門…女」。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。