帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子(拾遺四)文字にかきてあるやうあらめど

2012-02-11 00:08:44 | 古典

  



                                帯とけの枕草子(拾遺四)
文字にかきてあるやうあらめど



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、この時代の人々と全く異なる言語感覚で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子(拾遺四)
文字にかきてあるやうあらめど心えぬ物、


 文の清げな姿

 文字(漢字)に書いてその通りでしょうけれど納得できないもの、炒塩(いためしを)。袙(あこめ・内着)。帷(かたびら・単の衣服)。屐子(けいし・高げた)。泔(ゆする・米のとぎ汁)。桶(をけ)、舟(ふね)。


 原文

 もじにかきてあるやうあらめど心えぬ物、いためしを。あこめ。かたびら。けいし。ゆする。おけ。ふね。


 心におかしきところ

 文字に書いてそのとおりでしょうけれど、得心できないもの、傷めしお、吾こめ片平ら、軽子、白汁、お毛、夫根。


 言の戯れと言の心

 「心えぬ…納得できない…得心できない…満足できない」「いため…炒め…傷め…負傷…折れゆき」「しを…塩…士を…おとこ」「あ…吾…わたし」「め…女…おんな」「かたびら…帷…片平ら…不満足な平の」「平…山ば無し」「けいし…屐子…軽士…軽子…軽いおとこ」「ゆする…泔…白汁…おとこ白つゆ」「おけ…桶…置け…露などおりよ…贈り置け」「け…毛」「ふね…舟…夫根…おとこ」。



 「枕草子」は、女たちが「をかし」と笑えれば、それでよい。

 清少納言は、うたて(普通ではない)だけである、えん()になってしまった人は、あのように、あだなるさま(一時的で気まぐれな有様)になるのでしょう。その行き着く果て、いかでかは良く侍らん(どうして良いでありましょうか)などと、紫式部がその日記に指摘した通りの文芸である。

 「枕草子」は、紫式部の批判が納得できる読み方をしましょう。「清げな姿」だけを見ていては、紫式部の批判がよくわからないはず、つぎは、紫式部日記の文を曲解することになる。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。