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帯とけの枕草子(拾遺十一)綾の紋は
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、この時代の人々と全く異なる言語感で読んでいたのは枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子(拾遺十一)あやのもんは
文の清げな姿
綾の紋は、葵、かたばみ、あられ地(小紋地)。
原文
あやのもんは、あふひ。かたばみ。あられぢ。
心におかしきところ
妖の門は、合う日、片ばみ、あられち。
言の戯れと言の心
「あや…綾…綾織物…彩り綺麗な文様…怪…妖…あやしい」「もん…紋…紋様…門…身の門…おんな」「あふひ…葵…逢う日…合う日…合う日に限って」「かたばみ…草花の名…片ばみ…不都合な状態になり」「片…不都合」「ばみ…ばむ…接尾語…の状態になる」「あられぢ…小紋地…荒られ路…あられ血」「あら…感嘆詞・詠嘆詞…新たな…荒ら」「ぢ…地…路…女…ち…血」。
言の戯れと言の心を心得たおとなの女には、清げな言葉に包んで何を言っているのかわかるでしょう。
「もん」が「門…おんな」と聞こえる人には、奥の暗いところの裏の意味が見える。
枕草子の文は、和歌の言葉や表現形式と同じ。和歌には、紀貫之が新撰和歌集序でいう「花実相兼」や「玄之又玄」なる意味がある。暗い奥にあるものとは何か。和歌を一首聞きましょう。
古今和歌集 巻第十七 雑歌上 題しらず よみ人しらず
わがうへにつゆぞをくなるあまの河 とわたる舟のかいのしづくか
「わが頭上に露ぞおくなる天の河 水門わたる彦星の乗る舟の櫂のしづくか」と聞けば、七夕の夜、彦星が年に一度織姫星に逢える喜びを思い、空を見上げていて、秋の夜露にぬれた情景。これは歌の花で「清げな姿」。
「玄之又玄」なる「心におかしきところ」は、「わたしの飢へに、白つゆ贈り置く成る女の川、門わたる夫根のかいのしずくか」。絶妙の艶がある歌となる。
「うへ…上…飢え…渇き」「つゆ…露…おとこ白つゆ」「あま…天…女」「川…女」「と…水門…門…女」「舟…ふ根…おとこ」「かい…櫂…掻きわけおし進む具」。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。