帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子(拾遺十七)櫛の箱は

2012-02-27 00:06:41 | 古典

  



                                 帯とけの枕草子(拾遺十七)櫛の箱は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、この時代の人々と全く異なる言語感で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子(拾遺十七)くしのはこは


 文の清げな姿

 櫛の箱は、蛮絵(鳥獣や草花の丸い絵柄)がとっても良い。


 原文

 くしのはこは、ばんゑいとよし。


 心におかしきところ

 具しの端こは、晩枝、とっても好い。


 言の戯れと言の心

 「くし…櫛…ぐし…具し…具士…愚子…おとこ」「ぐ…具…身に伴うもの…愚…おろかもの」「はこ…箱…端こ…身の端のもの」「ばんゑ…蛮絵…盤絵…円形にまとめられた絵…晩ゑ…晩成の枝…早生ではない身の枝」。



 この文には、おとなの女たちに「をかし」と思わせる「心におかしきところ」がある。深い心はないけれども、清げな姿を兼ねそなえている。
 
 
今では、「くし」には「櫛」以外の意味など無いかのように、「櫛の箱は、蛮(盤)絵いとよし」と一義に読まれて、合理的な読みなので、疑問をもつ人などいないでしょう。 ただ、なぜ「ばんゑ」が「よし」なのか、また、調度品についての嗜好を書き記す動機も、誰の為に書いているのかも見えない。その読みは文の清げな姿にすぎないからである。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。