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帯とけの枕草子(拾遺十七)櫛の箱は
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで、この時代の人々と全く異なる言語感で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子(拾遺十七)くしのはこは
文の清げな姿
櫛の箱は、蛮絵(鳥獣や草花の丸い絵柄)がとっても良い。
原文
くしのはこは、ばんゑいとよし。
心におかしきところ
具しの端こは、晩枝、とっても好い。
言の戯れと言の心
「くし…櫛…ぐし…具し…具士…愚子…おとこ」「ぐ…具…身に伴うもの…愚…おろかもの」「はこ…箱…端こ…身の端のもの」「ばんゑ…蛮絵…盤絵…円形にまとめられた絵…晩ゑ…晩成の枝…早生ではない身の枝」。
この文には、おとなの女たちに「をかし」と思わせる「心におかしきところ」がある。深い心はないけれども、清げな姿を兼ねそなえている。
今では、「くし」には「櫛」以外の意味など無いかのように、「櫛の箱は、蛮(盤)絵いとよし」と一義に読まれて、合理的な読みなので、疑問をもつ人などいないでしょう。 ただ、なぜ「ばんゑ」が「よし」なのか、また、調度品についての嗜好を書き記す動機も、誰の為に書いているのかも見えない。その読みは文の清げな姿にすぎないからである。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。