帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子(拾遺六)女のうはぎはうすいろ

2012-02-14 00:09:49 | 古典

  



                                  帯とけの枕草子(拾遺六)女のうはぎはうすいろ



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ずに、この時代の人々と全く異なる言語感で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子(拾遺六)女のうはぎはうすいろ


 文の清げな姿

 女の表着は薄色。葡萄染、萌黄色、桜色、紅梅色、総べて薄色の類(が好ましいようで)。


 原文

 女のうはぎはうすいろ。ゑびぞめ、もゑぎ、さくら、こうばい、すべてうす色のるい。


 心にをおかしきところ

 女のうわべの色情は薄色。酔ひ初め、萌え気、さくら色、好配(好き妻)、すべて(術で)薄色の類。

 
 言の戯れと言の心

 「うはぎ…表着…上衣…表の気色」「衣…心身を包むもの…心身…心」「薄色…薄い気色…少しの色気」「色…色彩…色情」「ゑびぞめ…葡萄染…ぶどう色…ゑひ初め…酔い初め」「もゑぎ…萌黄…うすみどり…萌え気…燃え気」「さくら…桜色…ほんのり桃色」「こう…紅…好」「ばい…梅…貝…女…はい…配…配偶者…つれあい」「すべて…総べて…術て…術で」。



 衣の言の心は、心身であると心得ると、「恋しきときはむばたまの夜の衣を返してぞきる・古今集」「さむしろに衣片敷き独りかも寝む・新古今集」などという、秀句の味わいが今ひとしお増すでしょう。

ついでながら「きる…着る…切る…断つ」「さむしろ…狭筵…寒む白…心寒く白々しい」「片…不満足…満たされぬ」などと、戯れている。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。