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帯とけの枕草子(拾遺六)女のうはぎはうすいろ
言の戯れを知らず「言の心」を心得ずに、この時代の人々と全く異なる言語感で読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子(拾遺六)女のうはぎはうすいろ
文の清げな姿
女の表着は薄色。葡萄染、萌黄色、桜色、紅梅色、総べて薄色の類(が好ましいようで)。
原文
女のうはぎはうすいろ。ゑびぞめ、もゑぎ、さくら、こうばい、すべてうす色のるい。
心にをおかしきところ
女のうわべの色情は薄色。酔ひ初め、萌え気、さくら色、好配(好き妻)、すべて(術で)薄色の類。
言の戯れと言の心
「うはぎ…表着…上衣…表の気色」「衣…心身を包むもの…心身…心」「薄色…薄い気色…少しの色気」「色…色彩…色情」「ゑびぞめ…葡萄染…ぶどう色…ゑひ初め…酔い初め」「もゑぎ…萌黄…うすみどり…萌え気…燃え気」「さくら…桜色…ほんのり桃色」「こう…紅…好」「ばい…梅…貝…女…はい…配…配偶者…つれあい」「すべて…総べて…術て…術で」。
衣の言の心は、心身であると心得ると、「恋しきときはむばたまの夜の衣を返してぞきる・古今集」「さむしろに衣片敷き独りかも寝む・新古今集」などという、秀句の味わいが今ひとしお増すでしょう。
ついでながら「きる…着る…切る…断つ」「さむしろ…狭筵…寒む白…心寒く白々しい」「片…不満足…満たされぬ」などと、戯れている。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。