
岡田鯱彦で一番有名な作品「源氏物語殺人事件」、春陽文庫だとこんな表紙です。
源氏物語のキャラクターの属性を利用した殺人トリックが斬新かつ、
国文学ヲタクっぽいですね(著者の本職は国文学の教授)。
三つの事件を紫式部と清少納言が謎解き合戦をするという趣向ですが、
紫式部から見た清少納言は、「太い一本眉毛で太った二重顎」です。
しかも取り巻きの女房たちを引き連れて登場。いかにも敵役です。

角川ソフィア文庫のビギナーズクラシックは受験用にしておくのはもったいないくらい、
大人用にこなれています。
「源氏物語」では、光源氏以下男性キャラクターはヴァリエーションに乏しい感じがするのに対して、
女性キャラクターは少女から熟女に姥桜(失礼)、恋愛至上主義者の貴女から上昇志向丸出しの田舎女、
薄倖の女に不細工な女など、女性の幅が広いところはさすが紫式部。
なにかで読んだのですが、「源氏物語」は当時の宮廷をモデルにしたキャラクター小説だというハナシです。
いまで言えば女性自身+レディスコミックみたいな感じ?
有名人の恋愛結婚話の行く末や不仲な家族との確執などは、
平安時代も今も格好のゴシップの材料になることは変わらないというところですか。
源氏との仲が冷めきっている正妻の紫の上に、源氏の年上の愛人六条御息所の生霊がとりつくところは、
生霊にとりつかれた紫の上に(顔姿は紫の上なのに、話し方や身のこなしは六条御息所)
文字通りムラっとくる自分に気づき、正妻の紫の上に足りないのは御息所の艶麗さ、
と分析するオトコの性にアッパレと思うところです。
政治上のライバルである左大臣の本妻の妹と源氏がフリンする現場に、
当の左大臣が踏み込んできてフリンの証拠を握られてしまうと、
源氏は宮廷での風当たりから逃げるために須磨明石へ否応なく隠棲するのですが、
そこにいる都落ち貴族の娘とデキてしまう源氏。
その娘は宮廷に出入りする公卿の嫁になってみせるわ!と野望丸出し、
でもそのパワーを左遷された源氏にもう一度都へ戻らせるモチーフに変換させるところは、
設定と展開の巧さに脱帽です。
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